2014 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞由来樹状細胞と放射線治療を組み合わせた、新たながん治療の提案
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25861675
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Research Institution | National Research Institute for Child Health and Development |
Principal Investigator |
平野 啓 独立行政法人国立成育医療研究センター, その他部局等, 研究員 (00414334)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | がん / 樹状細胞 / 腫瘍免疫学 / iPS細胞 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ヒトiPS-DC分化誘導方法の検討を進める一方で、マウスiPS-DCを用いた本治療モデル実験のための腫瘍モデルマウス実験系の確立を目指し、検討を行った。 ヒトiPS-DCの分化誘導法については、当研究室で既に確立しているマウスiPS-DCの分化誘導法にならい、マウスストロマ細胞株であるOP9細胞との共培養法を用いることとした。千住らにより報告されている方法(Senju et al. Gene Therapy 2011; 18: 874)を参考として分化誘導のための諸条件を検討し、形態的な特徴および表面マーカー発現の面でDCと考えられる細胞を、 ヒトiPS細胞株(201B7)から作成することができた。しかし、現在の分化誘導条件ではDC誘導効率が安定していないため、SlukvinらによるES-DC分化誘導の報告(Choi et al. J. Clin. Invest. 2009; 119: 2818)をアレンジした方法も検討し、この方法でもDC様細胞を分化誘導させることが出来た。現在、これらの方法の検討から得られた結果を元に、ヒトiPS-DCを安定的に得られる方法の確立を目指している。 腫瘍モデルマウス実験系については、昨年度から検討を進めてきた、C57BL/6マウス/B16-F10-luc2によるモデル系の確立を進めた。昨年度は実験系として安定させるまで至らなかったため、手技・条件の双方にて系の安定化を図るとともに、本研究に適すると考えられる実験条件を検討した。今後は、昨年度までに確立したマウスiPS-DCを用いて、放射線局所照射との併用治療の有効性検討を進める。 また、昨年度の検討過程にて見出された特徴的なマウスiPS-DCについても検討を進めた。GM-CSFによる刺激のみで分化誘導が進み、旺盛な増殖能力を持つことが特徴的なこの細胞は、マウスiPS細胞株に含まれていた極一部の集団にのみ見られる性質であった。このような細胞がなぜ、どのようにiPS細胞から分化したのか、どのように維持されているのかは、今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ヒトiPS細胞を用いたDCへの分化誘導方法確立については、一定の成果を見ることができた。しかしながら、現在までに確立した方法では分化誘導効率が低いことも多々あり、安定した系を確立できたとは言えない状況にある。OP9との共培養に基づく方法をいくつか比較し、またヒト多能性幹細胞から血液細胞への分化誘導に関する先行研究等から考えられる改善点を検討するなどして、より安定した系としていく必要があると考えている。 iPS-DCによる免疫細胞治療と放射線局所照射治療との併用の有効性検証については、モデル実験に用いるための担癌モデルマウスを構築した。しかし、治療実験まで進めるには至っておらず、C57BL/6マウス由来iPS細胞から分化誘導したiPS-DCと放射線照射との併用治療がこのモデルマウスに有効であるかどうか、早期に検討を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
・今年度までに構築した担癌モデルマウス系/マウスiPS-DC分化誘導系を組み合わせることで、本研究の目的のひとつである、iPS-DCによる免疫細胞治療/放射線局所照射治療の併用によるがん治療への有効性の検証を進める。 ・これまでに検討を進めてきたヒトiPS-DC分化誘導系をより安定したものとするべく、諸条件の検討を進める。 ・構築したヒトiPS-DCによるがん治療への有効性検証については、重度免疫不全マウスであるNSGマウスを元に構築する免疫ヒト化マウスを用いて行うことを考えていた。しかし、NSGマウスにヒト造血幹細胞を移植して作成する免疫ヒト化マウスでは、樹状細胞によるがん抗原提示に基づく免疫細胞治療の検証は困難であることも予想される。その場合は、in vitroにおけるがん細胞・がん抗原取り込み能力の検証や、mixed lymphocyte reactionによるT細胞活性化能の検証などを介して、ヒトiPS-DCの有効性検証を進めたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、外部発表などを行う機会や論文投稿の機会を作ることが出来なかったため、旅費等を使用することがなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、これまでに作成してきた動物モデル実験系を用いた検討を進めていく予定であり、これまでの実験系の確立に要したものより検討の規模を大きくする必要がある。次年度使用額は次年度分請求額と合わせて、これらの検討に要する研究資材の購入に充当する予定である。
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