2013 Fiscal Year Research-status Report
ヒト爪組織の細胞学的特性の研究~ヒト爪再生を目指して~
Project/Area Number |
25861680
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
宇佐美 聡 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (10635577)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 爪培養 / ケラチノサイト / 細胞増殖曲線 / 硬ケラチン / サイトケラチン |
Research Abstract |
実験計画書を東京医科歯科大学医学部附属病院倫理審査委員会で審査後、多指(趾)症患者および家族の同意を得て試料検体として余剰爪組織を用いた。手術時に得た爪組織を用いて、keratinocyteの初代培養および継代培養に必要な機器・試薬の選定および実際の培養方法の確立を行った。爪母・爪床組織およびその周囲に存在する足底や足背の皮膚組織よりkeratinocyteを無血清培養法で単離・増殖させ、継代を続けた後、一部の細胞株を凍結保存した。現在までに確立中のプロトコールを示す。まずCoating Matrix Kit (Gibco R-011-K)でコーティングしたシャーレを用意し、培養液(KGM)はLonza B2060表皮角化細胞培地キット-Gold(無血清)(KGM-Gold BulletKit)を使用する。得た爪組織試料を12/1000inchほどに薄くスライスし、0.25%Trypsinで37℃、30~60min処理を行う。Trypsin処理後の試料を培養液中に浸し、真皮層より剥脱してきた表皮層を除去後に、真皮浅層に存在するkeratinocyteを物理的に擦って培養液中に単離させる。培養液を回収後に70-umのポアサイズのセルストレーナーで懸濁液を濾過、濾液を遠心(200×g 4℃ 5min)して細胞を回収し、培地(KGM)と共にコーティングしたディッシュに播種する。以後2~3日置きに培養液を交換し、keratinocyteを増殖させる。これまでの報告では自己調節された培地(KGM)を用いてkeratinocyteを培養する手法が報告されていたが、市販の培地では以上の試薬を用いることが、各条件で試した内で最もkeratinocyteの培養に適していた。現在、細胞の増殖曲線の作成を進め、増殖因子や至適条件を確立し、hard keratinや各種cytokeratinの発現を確認し、ヒト爪組織の細胞特性の解明に向けて実験を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1点目として過去の報告に用いられたような自己調整培地を用いず、市販の試薬を用いての培養法の確立を試みたため、培養条件の最適化を模索する必要があった。様々な因子が影響したが、細胞の処理方法、培養液・コーティング試薬の選定、Trypsin処理方法などの最適化に時間を要した。2点目としてkeratinocyteはfibrocyteと比較してデリケートな細胞であり、細胞の培養技術が未熟であった点が挙げられる。3点目として試料提供者である多指(趾)症患者の手術件数が当初見積もっていた件数よりも少なく、初代培養の機会が少なかったことも挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず初めにkeratinocyte培養のエントリー数を増やす必要がある。その為、爪組織だけでなく、通常皮膚のkeratinocyteの培養も併せて行っていく予定であり、三次元培養時の共培養の組み合わせにも用いる。爪組織に関しては、ある程度の細胞培養法が確立できたため、今後は細胞増殖に必要な至適条件・必要試薬の探求と併せて、各種cytokeratin markerの発現を調べる。具体的にはヒト爪母の組織片で発現の認められるK1/K10、硬ケラチン、爪床の組織片で認められるK6/K16などのマーカーが、ヒト爪組織培養細胞レベルで認められるかを確認する。細胞レベルで発現が確認できない場合は3次元培養後に各keratinocyte発現を確認する。更に、硬ケラチンの発現を、各種細胞の共培養にて確認する。すでに指腹表皮keratinocyteと爪母fibroblastの組み合わせで硬ケラチンの発現が確認されているが、爪母fibroblastとその他の部位(耳前部など)の表皮keratinocyteとの組み合わせでも硬ケラチンが発現されるか確認する。又、fibroblastとkeratinocyteの細胞比率により硬ケラチン産生にどう影響するかを調べる。最終的に爪母fibroblastが産生しているであろう硬ケラチン誘導因子を特定できれば、爪や毛髪に特異的に発現している硬ケラチンの大量産生にちながり、爪産生に寄与すると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
①実験のための備品として液体窒素凍結保存容器や超純水製造装置などを購入予定であったが、当初の見積もりよりも安く購入できたため。②実験が全体的に遅れており、keratin markerなどの高価な試薬購入を今年度する必要がなかったため。 今年度は経費を用いた実験試薬として、keratinocyte専用培地、コーティング試薬などの他、シャーレやピペットなどの消耗品が中心であった。しかし今後は細胞特性の解明に向けてcytoketatinなどの染色を進めていくため、比較的高価な試薬が必要となってくる。具体的には各種cytokine marker、3次元培養用培地・足場などである。更に当研究室には常備されていない蛍光染色用顕微鏡や電気泳動装置なども使用することが予想され、購入もしくはレンタルする必要が出てくる。よってこれらの使用経費に次年度使用額を当てていく予定である。
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