2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25861709
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
畑山 直之 東京医科大学, 医学部, 助教 (80534792)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 保存 / 高圧ガス保存法 / ラット切断肢 / キセノン / 笑気ガス |
Research Abstract |
平成25年度は、高圧ガス保存法を臨床に応用するために、ラット後肢を用い①安全性の高いガス{キセノン(Xe)、亜酸化窒素=笑気ガス(N2O)}を用いた保存法を検討した。安全性を考慮し、容器にかかる圧力を下げて保存を試みた。また、上記のガスを用いて②保存したラット後肢におけるmRNAの発現をReal-Time RT-PCRを用いて解析し、メカニズムの検討を行った。 具体的内容;①これまでの高圧ガス保存法は、7気圧という高い圧力で保存をしていたが、今回は1気圧(大気圧同様)のガスでも保存効果が得られるか検討した。また使用する保存ガスは、毒性の一切ないXe、N2Oを用い、それぞれ保存した。Xeガス保存は、予備実験でも成功していたが、今回1気圧という条件で改めて3日間保存後の移植・生着に成功した。また、N2Oガス保存においても3日間保存後の移植・生着に成功した。②それぞれの保存法で保存直後のラット後肢から、mRNAを抽出し、各種プライマー(炎症性サイトカイン・アポトーシス・抗酸化)を用いて、それらの発現を検証した。それぞれNormalと比較し、Xe保存では一部の炎症性サイトカインの発現が減少しており、N2O保存では、抗酸化反応を促進させる酵素の一種であるGSTやMn-SODの発現が有意に上昇していた。 意義・重要性;①これらの結果は、圧力をかけず且つ毒性のないガスを保存に用いたことで安全性が確保され、より臨床への応用に近づいたと思われる。②ガス保存法における保存効果の作用機序を解明し、学術的な基盤を作ることで臨床につながると考えられる。特に、N2Oは細胞保護を目的として使用された報告はなく、その効果は明らかにされていない。既に臨床で使用されているN2Oは、今回の結果からその細胞保護効果と機序を証明することができれば、より簡便に臨床現場で保存ガスとして使用が可能になるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高圧ガス保存法の研究は、臨床への応用に向けて、段階を経て順調に進んでいる。これまでの高圧ガス保存法では、高圧且つ毒性のあるガスを用いて臓器や切断肢を保存しており、臨床に応用するには安全面で不安があった。今回の結果により、圧力をかけず、毒性のないガスを用いても保存効果があることが証明された。このことは安全面において大きな成果であると考える。また、保存に用いたXeやN2Oが、ガス保存法において、どのようにその保護効果を示しているのかReal-Time RT-PCRによって、その一端を明らかにした。これを足がかりにして、さらに解析を進め、その機序を解明することで、臨床につながっていくと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、Xe、N2Oで保存したラット移植肢を画像診断的、組織学的、電気生理学的に評価していく。保存しないで離断後すぐに移植したControlと比較し、機能面において、どの程度保存できているかを検討する。一方で、今回明らかとなったそれぞれの保存におけるmRNAの発現を基にさらに解析を進めていく。それらの発現のパスウェイを調査し、関連のあるmRNAの発現増減を確認することで、メカニズムの一端を解明したい。そして、ラットで実績を積んだガス保存法を用いて、大動物の切断肢を保存する実験に取り組む。前臨床実験として、ヒトにより近い大動物でその保存効果を検討することで、臨床応用に繋げていきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度、392,272円の翌年度繰越額を計上した。その理由として以下のことが挙げられる。機序の解明のためにマイクロアレイを予定していたが、Real-Time RT-PCRを用いて実験したこと。保存に有用な作用機序は、抗炎症、抗アポトーシス、抗酸化などの細胞保護関連の効果がその主として挙げられる。現在まで細胞保護に関わるmRNAの発現は分かっているものが多く、マイクロアレイで網羅的に遺伝子発現の増減を検証するよりも、Real-Time RT-PCRの方が効果的にガス保護の作用するポイントを同定できると考えた。マイクロアレイでは1献体約10万円強、Real-Time RT-PCRは1献体約5000円と1/20の値段である。また上記は外注した場合の目安であり、Real-Time RT-PCRに関しては、当教室で設備が整っていて自ら実験するため、さらに使用金額が抑えられたことが理由に挙げられる。 次年度の計画として、予算の多くを大動物実験のために計上している。今年度の結果で明らかになった遺伝子発現の結果をさらに解析していくことを申請時の計画より加えたため、繰越額392,272円はそれに割当てることを予定している。申請時の消耗品費の予算計上では、実験用大動物150万円、手術消耗品(縫合糸、手術針等)15万円、 飼育消耗品10万円、 試薬(生化学検査、組織染色 抗体)40万円である。そこへ繰越額392,272円分{内訳:Pathway解析10万円弱、試薬(Primer設計、mRNA解析、Real-Time RT-PCR)30万円}を追加で予算計上したい。この予算計画で来年度の実験を進めていく予定である。
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Research Products
(2 results)