2014 Fiscal Year Research-status Report
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25861709
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
畑山 直之 東京医科大学, 医学部, 助教 (80534792)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 臓器保存 / ガス保存法 / キセノン / 笑気ガス / ラット / ブタ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、25年度に検討したキセノン(Xe)、亜酸化窒素=笑気ガス(N2O)によるガス保存法の条件を用いて保存したラット後肢について、より詳細な解析・評価を行った。移植臓器において最も重要とされる①虚血再灌流障害の軽減について組織学的・分子学的に検討した。また、試験的ではあるが②大動物(ブタ)切断肢の保存を試みた。 具体的内容;①ラット後肢を切断し、XeとN2Oによるガス保存後、移植を行った。虚血再灌流障害が最も激しいとされる再灌流から90分後に移植肢をサンプリングし、各種評価を行った。HE染色による組織学的な形態においては、Control (切断後すぐに移植したもの)と同様に筋、血管、神経の形態が保たれていた。さらに細胞死を検出するTUNEL染色においては、現在臨床で用いられる単純冷却保存と比較し、ガス保存群では明らかにTUNEL陽性細胞数が少なかった。また、再灌流後の移植肢から抽出したmRNAにおいて、Real-Time RT-PCRを用い、発現を比較検討した。それぞれの保存において、一部の炎症性サイトカイン・アポトーシス関連遺伝子の発現が、単純冷却保存と比較して減少していることがわかった。②ブタ前腕を切断し、24時間ガス保存後、電気刺激を行ったところ、僅かな収縮を確認することができた。 意義・重要性; ①Xe 、N2Oによるガス保存法は、ラット後肢において虚血再灌流障害を軽減することがわかった。この結果は、臨床における切断から移植までの時間的余裕を作ることや、移植後の生着・予後の改善へと繋がっていくものと考えられる。②試験的な結果ではあるが、保存後のブタ前腕にて収縮を確認できたことは、保存対象がより大きな部位であっても保存が可能であることを示唆している。ヒトでは切断“指”など小さい部位よりも手・前腕など大きな部位の切断“肢”は、再接着後の生着率・予後が悪い。ブタ前腕を用いたこの結果は、これらの改善に繋がっていくものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ラット後肢を用いたXeとN2Oのガス保存法による解析・評価については、順調である。25年度にこの保存法による移植肢の生着が確認できたので、さらに解析評価を進め、生着した要因を調べた。とくに移植臓器の生着や予後を左右する虚血再灌流障害、この軽減にXeとN2Oのガス保存法が寄与しているかどうか組織学的・分子学的に評価することができた。筋は虚血に弱く、その障害が顕著であるため、この結果が移植肢の生着・viabilityの向上に深く寄与していることが分かった。大動物の実験においては、実験環境を整えるのに時間を要してしまい、予定よりもやや遅れている。今回は保存後の電気刺激による筋収縮を確認するに留まったが、来年度、より詳細な解析・評価を実施する上で期待感のもてる結果であったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、Xe、N2Oで保存したラットの移植肢の機能的な評価を行う。Control(切断後保存せずに移植した後肢)と比較し、歩行検査、電気生理学的検査を行い、移植肢がどの程度機能しているかを検討する。一方で、ブタの切断前腕は、より詳細な組織学的・分子学的評価を行うことを計画している。切断からXe、N2Oによるガス保存を行ったのち、移植し血流再開させ、保存肢のviability、形態、障害の程度を明らかにしたい。前臨床実験として、大動物の四肢にてガス保存の詳細な評価・解析を行うことで、臨床応用に向けての基盤を形成していきたい。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、501,713円の翌年度繰越額を計上した。ブタの切断肢を保存する実験に取り組む予定であったが、試験的な実験に留まり、詳細な評価・再現性・比較検討を行うまでには至らなかった。その理由として以下のことが挙げられる。大動物実験を行うための環境整備に時間を要してしまい、実際にブタの購入から本格的な実験にまで至らなかった。また当大学のカリキュラム編成に伴い教育へのエフォートが予想以上に比重を占めてしまい、時間を割けなかった状況がある。これらにより当初計画していた予定よりも実験の開始が遅れてしまい、未使用額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に引き続き、次年度も大動物切断肢の保存実験を行うため未使用額はその経費に当てることとしたい。
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Research Products
(1 results)