2013 Fiscal Year Research-status Report
敗血症性心機能障害に対する亜硝酸塩の心保護作用とその分子機序の解明
Project/Area Number |
25861724
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
川口 亮一 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (30609003)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 敗血症性心機能障害 / ミトコンドリア機能障害 / 亜硝酸塩 / 一酸化窒素 / 心保護作用 |
Research Abstract |
近年、虚血再灌流傷害における亜硝酸塩の心保護作用が報告されている。一方、敗血症における亜硝酸塩の作用については未解明である。我々は敗血症心筋においても亜硝酸塩が保護作用を示すとの仮説を立て、本研究を開始した。まずラットを用いて盲腸結紮穿孔処置(CLP)による敗血症モデルを作成し、8時間後の早期敗血症の時期に心臓を摘出しLangendorff潅流法を用いて心機能測定を行った。健常コントロール群と比較して心収縮能は有意に低下し、敗血症性心機能障害が生じることを確認した。介入実験として、CLP処置の後に生理食塩水と共に異なる濃度の亜硝酸塩を投与して、同様の実験を行った。その結果、亜硝酸塩1㎎/kgを投与した群において、有意な心収縮能改善が認められた。次いでこの心臓を破砕し遠心分離処置を行い心筋ミトコンドリアを単離し、ミトコンドリアの酸化的リン酸化の指標とされる、Respiratory Control Ratio(RCR)を測定した。その結果、生理食塩水単独を投与したCLP群と比較し、亜硝酸塩1㎎/kgを投与したCLP群では、RCRが健常コントロール群と同水準に保たれた。以上より、ラットCLP敗血症モデルに対する亜硝酸塩1㎎/kg投与は、ミトコンドリア機能を保護することによって8時間後の敗血症性心機能障害を改善させることを解明した。一方、亜硝酸塩は一酸化窒素(NO)に変換されて血圧低下やメトヘモグロビン血症の原因となる可能性も指摘されている。そこで我々は敗血症ラットに対する亜硝酸塩の全身作用を解明するため、亜硝酸塩投与後の観血的血行動態測定および採血によるメトヘモグロビン測定を行った。亜硝酸塩1㎎/kg投与群と生理食塩水投与群の比較において、4時間後と8時間後の血行動態およびメトヘモグロビンに有意差を認めなかった。以上より、亜硝酸塩1mg/kg投与の安全性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
敗血症ラットに対する亜硝酸塩の臓器(心臓)レベルでの保護作用、および細胞レベル(心筋ミトコンドリア)での保護作用を確認した。また安全性についても検討を行い、問題ないことを確認している。今後の課題としては分子学的機序の解明を残すのみとなっている。
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Strategy for Future Research Activity |
敗血症ラットに対する亜硝酸塩の心保護作用の分子学的機序について詳細な検討を行う。敗血症性臓器傷害の機序としては、サイトカインなどの過剰な炎症反応と、過剰な活性酸素種による酸化ストレスの相乗作用が挙げられている。そこで、亜硝酸塩を投与した敗血症ラットの血液や心筋組織を用いて、炎症性サイトカインや酸化ストレスマーカーの測定、および炎症や酸化ストレスに関連する転写因子(NF-κBやNrf-2など)についてWestern Blottingの手法を用いた検討を行う予定である。
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Research Products
(3 results)