2013 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞を用いた敗血症の病態解明および新規治療法の創出
Project/Area Number |
25861727
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
粕田 承吾 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70434941)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 敗血症 / Sphingosine-1-phosphate |
Research Abstract |
マウス未分化iPS細胞を中胚葉系(血球および血管内皮細胞)のEmbrioid bodies (EBs)に分化誘導することに成功した(hematopoietic-like EBs)。Flk-1およびGata-1の中胚葉系のマーカー遺伝子が発現していることを確認している。さらに、hematopoietic-like EBsの遺伝子プロファイルをreal-time RT PCRにて検討し、Sphingosine-1-phosphate (S1P)の主たる受容体である、S1P1とS1P3が未分化iPS細胞と比較して強く発現していることを見出した。また、S1Pの合成にかかわる酵素であるSphingosine Kinase (SphK)の発現を検討したところ、2種のアイソザイムのうち、てSphK1の発現は未分化iPS細胞とあまり差はなかったが、SphK2は強く発現していることが判明した。さらに、eNOSおよびiNOSといったNO合成酵素がhematopoietic-like EBsでは強く発現していることを確認した。 臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)をtranswell上に培養し、LPS刺激によるpermeability assayを行った結果、hematopoietic-like EBsはLPSによる血管透過性の亢進を有意に抑制した。 C57/BL6マウスを用いて、Cecal Ligation and Puncture (CLP) 法により敗血症モデルを作製した。CLP術後に、hematopoietic-like EBsを頸静脈から投与したところ(10e6個)、コントロールマウスと比較して、有意差をもって、生存率が上昇した。 新しい敗血症治療の柱となる重要な発見となったと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
iPS細胞をhematopoietic-like EBsに分化誘導することに成功し、当初予定していたS1P合成酵素の発現のみならず、NO合成酵素の発現までも確認することができた。 当初は平成26年度に実施予定であった、EBsの血管内皮細胞に対する影響の検討(permeability assay: in vitro実験)および敗血症モデルマウスに対する効果の検討 (in vivo実験)を実施することができ、EBsが炎症反応に対して防御的に作用することが実証できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、EBsによる抗炎症作用の詳細なメカニズムの検討に着手する。SphK2の発現が上昇していることから、Hematooietic-like EBsがS1Pを産生していることが予想される。 in vitroの検討では、EBsの培養上清を用いて、EIA法によりS1Pの産生を確認する。さらに、EBsをLPSなどで刺激することにより、SphKの発現が上昇するかどうかをrear-time RT PCRにより測定する予定である。 in vivoでの検討では、CLP後の肺を用いたpermeability assayや肺胞洗浄液(BALF)中の細胞数を測定することにより、EBsにより肺の血管内皮細胞のバリア機能が保持されているかどうかを検討する予定である。CLP後のマウスより採血し、血中の炎症性サイトカイン濃度の測定、DICマーカーの測定、S1P濃度の測定を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
培養用プラスチック製品を節約して使用したため、当初予定より購入額がすくなくったことが大きい。また、当初予定していた、EBsの培養上清中のS1P濃度の測定を次年度に回したため、S1PのEIAキットの購入を控えたことにより出費が低額に抑えられる結果となった。 in vivo の実験を優先して行ったため、使い捨ての消耗品費が当初予定よりも少なくなったのも一因である。 次年度はS1Pの濃度測定に取り掛かるため、S1PのEIAキットの購入が必要となる。1キット20万円相当のものであり、本研究のもっとも重要なデータとなりうるため、最低2キットの購入は必要であると予想される。 また、in vivoの実験と平行してin vitroの実験も進めていく予定であり、大量の使い捨ての消耗品が必要になると予想されるため、これらの購入に費用を当てる予定である。
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