2013 Fiscal Year Research-status Report
老化T細胞の再活性化に注目した新たな高齢者敗血症治療戦略
Project/Area Number |
25861735
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
井上 茂亮 東海大学, 創造科学技術研究機構, 講師 (30582209)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 敗血症 / 老化 / 免疫 / T細胞 / IL-15 |
Research Abstract |
高齢者の敗血症は重症化しやすくその予後は極めて不良である。申請者は高齢者敗血症では亜急性期の免疫抑制状態が死亡要因となっていることを報告し、免疫賦活効果のある薬剤が治療薬の有力な候補となると考えている。申請者はCD8+Tやナチュラルキラー細胞(NK細胞)の成長因子であるインターロイキン-15(IL-15)がマウス敗血症モデルの生命予後を改善し、高齢者由来T細胞を活性化することを発見した。これらの研究成果をもとに本研究では1)IL-15による老化T細胞の活性化のメカニズムを解析し、2)そのシグナル伝達系に関与する新たな治療標的分子を探索することで、今後先進国で爆発的に増加する高齢者敗血症の新規治療薬の開発を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では高齢敗血症におけるIL-15の治療薬としての可能性と新規標的分子を明らかにするため、本研究計画では以下の研究項目を予定している。 研究1 高齢者由来T細胞に対するIL-15の活性化および増殖効果判定(平成25年度)研究2 高齢マウス/高齢IL-15ノックアウト(KO)マウス敗血症モデルにおけるIL-15の効果判定(平成25年度)研究3 高齢者由来T細胞非活性化の原因遺伝子の探索(平成26年度)研究4 原因遺伝子の高齢者由来T細胞における制御とその機能解析(平成26年度) この4つの研究計画のうち、研究1,研究2はほぼ終了している。研究1では組み換えタンパクIL-15の老化T細胞の再活性化とインターフェロンγ(IFN-γ)産生能を確認した。また組換えタンパクIL-2、IL-7、抗programed death 1(PD-1)抗体、抗cytotoxic T lymphocyte antigen 4 (CTLA-4)抗体など、IL-15以外にT細胞を活性化する分子の効果も判定。その結果、高齢者由来CD8+ T細胞の再活性化効果はIL-15が最も強いことが明らかになった。研究2では、高齢マウス敗血症モデルにおいてIL-15はT細胞の敗血症誘導性アポトーシスを抑制し、腹腔内および血清のIFN-γ濃度を上昇し、腹腔内のバクテリアクリアランスを改善し、7日後生存率をコントロー群と比較して有意に改善した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究3 高齢者由来T細胞非活性化の原因遺伝子の探索 IL-15による高齢者由来T細胞活性化シグナル伝達系の詳細は不明であり、これを探索することで新たな新規治療標的分子の発見につながる可能性がある。研究1の1と同様に1)高齢者由来リンパ球、2)若年者由来リンパ球、3)高齢者由来リンパ球+IL-15の3群で各24時間培養後CD4+ およびCD8+T細胞を単離し、mRNAを抽出。次世代シーケンサーを用いて、mRNAの発現状況を網羅的に解析する。上記3群で比較検討し、高齢者由来リンパ球+IL-15投与群で高齢者由来リンパ球群と比較し有意に上昇し、その発現が若年者由来リンパ球と同程度である核内転写因子を「ヒト高齢者由来T細胞非活性化の原因遺伝子」と同定する。また高齢(生後2歳)および若年(生後6週)のマウス脾細胞を用いて同様の研究を行い、高齢者由来T細胞非活性化の核内転写因子を探索し、ヒトとマウスの相同性を確認する。 研究4 原因遺伝子の高齢者由来T細胞における過剰発現/ノックダウンとその機能解析 1. 研究3で同定した原因遺伝子をエレクトロポレーション法にて高齢者由来T細胞に遺伝子導入する。その後リンパ球増殖因子刺激下で24時間培養後に遺伝子導入後のT細胞を回収し、活性化/増殖の変化を細胞イメージアナライザーにて定量解析し、原因遺伝子の過剰発現による影響を評価する。また原因遺伝子のsiRNAを作成し高齢者由来T細胞でノックダウンすることで、活性化/増殖の変化を評価する。2. 研究3で同定した原因遺伝子がT細胞膜受容体関連遺伝子であればそのアゴニスト/アンタゴニストの添加実験をin vitroで行う。末梢血単核球を分離し、リンパ球増殖因子(抗CD3/28抗体)刺激下で24時間培養後に回収し、活性化/増殖の変化を細胞イメージアナライザーにて定量解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度は研究計画が順調で、大きな再実験を必要とせず、試薬や消耗品の支出を抑えることができたため。 当該年度はマイクロアレイやフローサイトメトリーを用いた細胞単離を行うため、マイクロアレイやフローサイトメトリー関連の消耗品を購入する予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Reduction of immunocompetent T cells followed by prolonged lymphopenia in severe sepsis in the elderly2013
Author(s)
Inoue S, Suzuki-Utsunomiya K, Okada Y, Iida Y, Taira T, Miura N, Tsuji T, Yamagiwa T, Morita S, Chiba T, Sato T, Inokuchi S.
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Journal Title
Critical Care Medicine
Volume: 41
Pages: 810-9
DOI
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