2013 Fiscal Year Research-status Report
スマートフォンの動画・音声伝送システムを用いた一般市民による救急通報に関する研究
Project/Area Number |
25861737
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
本村 友一 日本医科大学, 医学部, 助教 (20464406)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 救急通報 / スマートフォン / 動画伝送 / トリアージ / 口頭指示 / 消防指令 |
Research Abstract |
2013年度は「スマートフォンによる動画伝送システム」を使用した救急車要請(119番通報)を、従来の電話(音声通話のみ)と比較し有用性を検討するため、模擬通報実験の物品購入および実験体制の準備、並びに1回のトライアル実験と3回の模擬実験を行った。 模擬通報者として「日常的に医療に従事していない、スマートフォンを普段より使用し扱いに慣れている一般市民」に協力を依頼した。模擬症例は3例準備した。症例1は70歳男性、胸痛後、心肺停止に陥り「死戦期呼吸」を呈し一次救命処置を要す。症例2は60歳男性の脳出血で、自宅の居間で嘔吐を繰り返し、口頭指示により気道確保と回復体位を要す。症例3は30歳男性の交通外傷で活動性出血を認め、圧迫止血を要する。 模擬指令室役は、ちば共同指令センターの現役の指令員に協力依頼し、従来の音声通信と動画伝送システム通信の比較を行った。実験トライアルおよび会議を経て、一般市民による模擬通報実験を、3回(2014年1月8日、2月6日、2月27日)行った。各症例で、トリアージ判定、意識確認・呼吸確認、一次救命処置・気道確保・回復体位・圧迫止血などの口頭指示に対する活動時間の測定と通報者の活動の質の評価、動画伝送の有用性についてのアンケートを行った。これまでの3回(通報者合計6人)の実験では、56%でトリアージまでの時間短縮、89%で口頭指示対応までの時間が短縮し、89%で口頭指示に対する活動の質の向上を認めた。アンケートではほぼ全員が、位置情報の伝達、患者病態の伝達、トリアージの質、口頭指示活動の質の向上などのために本システムが有用であると回答した。一方で、カメラアングルの問題、口頭指示活動に片手が使えない、容易に本システムを起動させるための工夫の必要性などの課題も明らかとなってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2013年度は通報実験に必要なスマートフォンと動画伝送システムの準備を行い、模擬実験の体制を整備した。実験体制については、使用する模擬症例および模擬患者の準備を行い、模擬通報者および指令員に協力を依頼し、実験での評価項目および評価基準を決定した。 トライアル1回と本実験3回を行った。3回の実験結果から、実験数は少ないが上記の如く時間短縮効果や口頭指示活動の質の向上などの効果が認められた。 本システムをスマートフォンの標準機能にすることを視野に入れ、通信会社と専用アプリケーションの開発に着手した。さらに、消防指令室での動画受信体制の整備のために、消防指令室職員へのヒアリングと通信会社と定期的な会議を行っている。さらに本システムを実際の緊急通報の際に活用するために、総務省で行われている緊急通報のトリアージに関する検討ワーキンググループに話題提供を行っている。 模擬通報者、模擬患者、模擬指令員、評価者など、1回の実験に関わる人数が約10人に及ぶ。日程調整が困難で2013年度は実験回数を充分確保できなかったが、スタッフの業務把握が進み、2014年度はより高頻度で実験が開催できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
模擬通報実験を、男女別、年齢層別に施行し本システムの有用性を検証している。当初、小学生から80歳代までの使用者に対して実験を施行する予定であったが、中学生以下および50歳代以上ではスマートフォンの比率が4割以下になることから、これらの年代を除外し高校生から40歳代までの年齢層の実験を集中的に行う予定である。 本システムを救急通報に応用するために、通信会社と専用アプリケーションの開発に着手している。現在のスマートフォンにおける「緊急電話」システム同様に、使用者によりロックのかかった状態からであっても、緊急時にはスマートフォンを手にした人が専用アプリケーションを立ち上げ、消防指令室に動画とともに情報を送信できるシステムを目指している。この際に、音声通信は電話回線を使用することとし、電波状況の悪い環境であっても少なくとも従来の音声通信の通信レベルを下回らないようなシステムを目指している。さらにスマートフォンのGPS機能を使い、救急現場の位置情報も救急隊へ送信することとする。この際、本研究内の実験にて生じた問題点や課題を実用化に活用する。 2014年度は、さらなる実験回数の確保、実験結果の分析、スマートフォン標準アプリケーションへの導入化の働き掛け、消防指令室での動画受信体制整備および総務省の緊急通報トリアージシステムへの働き掛けを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
通報実験に必要なスマートフォンと動画伝送システムの準備を行い、模擬実験の体制を整備したが、日程調整が困難で2013年度は実験回数を充分確保できなかったことにより繰越額が生じた。 2014年度研究計画に大きな変更はないが、2013年度に実施できなかった通報実験(模擬実験)に充てる予定である。
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