2013 Fiscal Year Research-status Report
エナメル芽細胞および中間層細胞の分化維持因子の新規探索
Project/Area Number |
25861741
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中富 満城 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10571771)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | エナメル芽細胞 / Msx2遺伝子 / エナメル質形成不全 / 細胞分化 |
Research Abstract |
将来的にES細胞やiPS細胞等の幹細胞から歯の再生を試みる上で、「歯の設計図」としての正常発生過程の正確な理解が不可欠となる。しかしこれまでに多くの知見が蓄積されている歯胚形態形成過程と比較して、より後期の細胞分化過程における詳細な分子メカニズムについては未解明な点が多く残されている。本研究においては転写因子のMsx2遺伝子に着目した。Msx2ホモ欠損マウス(以下変異型)においてはエナメル芽細胞が極性を喪失しエナメル質形成不全症を呈する事が知られていたが、その分子機構については不明であった。今年度の研究においてまず野生型と変異型の生後エナメル器を組織学的に比較検討した所、エナメル芽細胞の初期分化は比較的正常に進行し、細胞の極性化やAmelogenin、Ameloblastin、Enamelinのような各種分化マーカーの発現が認められた。また中間層細胞の分化マーカーであるNotch1やSox2の発現も比較的正常に認められた。一方外エナメル上皮は分化状態を失って角化重層扁平上皮化し、エナメル器内にHsp25やLoricrin等の角化マーカーの異所性発現と星状網の喪失が観察された。角質の蓄積に伴って中間層細胞マーカーの発現が消失し、次いでエナメル芽細胞の極性喪失とエナメル器内における歯原性角化嚢胞の形成が観察された。以上の結果よりMsx2遺伝子はエナメル芽細胞と中間層細胞の初期分化には必須の因子ではなく、外エナメル上皮の分化維持と星状網の維持を介して正常なエナメル質形成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は生後3日から20週齢に至る野生型と変異型マウスのサンプリングを行い、切歯と臼歯のエナメル器について免疫組織化学染色、section in situ hybridization、EPMA、micro-CT、RT-PCR等の手法により比較検討を行った。また生後9日目の下顎切歯より形成端付近の上皮を摘出してtotal RNAを抽出し、cDNAを合成してマイクロアレイ解析を行った。得られた研究成果については平成25年9月に岡山で開催された歯科基礎医学会学術大会にて口演発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は初年度の研究で得られたマイクロアレイ解析の結果を詳細に検討し、野生型と変異型の間で発現の変動の大きい標的遺伝子についての情報を得る。その遺伝子の組織上での具体的な発現パターンを免疫組織化学染色やin situ hybridization法にて解析する。また極性を喪失した後のエナメル芽細胞の嚢胞壁内における挙動について組織学的に検討する。最終的にはMsx2転写因子が関与する分子カスケードを明らかにし、正常なエナメル質形成過程に果たすMsx2の機能について結論を得たいと考えている。
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