2014 Fiscal Year Research-status Report
DKK-3をターゲットとした頭頸部扁平上皮癌の転移抑制
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25861742
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
片瀬 直樹 川崎医科大学, 医学部, 助教 (30566071)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 頭頸部扁平上皮癌 / 口腔扁平上皮癌 / DKK3 / Wnt signaling / 機能解析 / 細胞増殖 / 浸潤 / 転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に引き続き、口腔扁平上皮癌(OSCC)由来細胞株にDKK3遺伝子を強制発現、またはshRNAによってDKK3遺伝子をノックダウンする系の構築を行い、それぞれの系について腫瘍細胞の増殖、浸潤性、遊走性に及ぼす影響を検討した。また、DKK3遺伝子に関連するシグナルの同定を目的として実験を行い、in vitroでの実験系はほぼ完了した。 DKK3強制発現系は発現プラスミドのトランスフェクションによる一過性(transient)の発現とした。前年度の実験では、この強制発現系ではDKK3発現はタンパクレベルでは上昇しないという結果であったが、再検証の結果タンパク発現も上昇することが明らかとなった。DKK3ノックダウン系では、HSC3細胞にDKK3に対するshRNAをLentivirusによって導入することで、安定的(stable)にDKK3をノックダウンした細胞株の樹立に成功した。これらの細胞を用い、細胞増殖、浸潤性、遊走能を検討したところ、DKK3遺伝子の強制発現では細胞の増殖への影響は明らかではなかったが、細胞の浸潤性と遊走性が増加する傾向が示された。一方、DKK3をノックダウンした細胞では細胞の増殖は有意に低下し、浸潤性と遊走能も有意に抑制された。この現象の背景にあるシグナルの変化の検討では、DKK3の発現変化がWnt canonical pathway (Wnt/β-catenin signal)に影響を与えるかどうかを検討したが、DKK3を強制発現させてもノックダウンしてもβ-cateninの局在に変化は認められなかった。また、DKK3のWnt canonical pathwayへの影響は明らかではなかった。以上の結果から、OSCCにおけるDKK3遺伝子の発現変化によって腫瘍細胞の振る舞いに違いが生じることが明らかとなり、その背景にはWnt canonical pathway以外のシグナル経路が関連する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度から継続して、DKK3遺伝子強制発現系とノックダウン系を構築する実験を行ってきた。強制発現系は当初はadenovirusを用いたstableな発現系を計画していたが、口腔癌細胞にはadenovirusに対するレセプターである、CAR(coxsackievirus adenovirus receptor)受容体の発現が極めて低いことから、遺伝子導入が起こらないという問題が生じた。そこで、発現プラスミドのトランスフェクションによる方法に切り替えたが、この方法によってでも腫瘍細胞の表現型を変化させるには十分であったため、今後のin vivoの実験においてもこの強制発現系を用いて行う予定である。ただし、並行してRetrovirusによるstableな強制発現系の構築も計画しており、既に川崎医科大学 組換えDNA実験安全委員会の承認を得て実験を継続している。Stableな強制発現系でもtransientな発現系と同等かそれ以上の効果が見られるようであれば、こちらの系に差し替えてin vivo実験を行う。ノックダウン系の樹立は滞りなく達成できている。 全体としては、前述の如く強制発現系、ノックダウン系の樹立とその表現型の解析が完了し、さらにその現象の背景にあるシグナルの解析もほぼ予定通りに達成できており、計画は順調に進捗しているといえる。残るin vivoでの解析についても、既に川崎医科大学 動物実験委員会に計画書を提出し、実験を実施できる体勢が整っている。当初予定していた蛍光イメージングについては、研究代表者が研究機関を異動したために実施が困難となっているが、従来の組織学的解析でも十分に目的を達成できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の最終年度である平成27年度はヌードマウスへの腫瘍細胞移植実験を中心にin vivoでの解析を行うとともに、in vitroでの解析を追加する。in vivoの実験では、ヌードマウスの皮下にHSC3細胞、DKK3を強制発現させたHSC3細胞、DKK3をノックダウンしたHSC3細胞を移植して、それぞれの腫瘍形成能、増大の速さを観察する。またマウスが死亡した場合には組織学的解析を行うとともに転移の検索、生存解析を行う。皮下移植モデル以外にも、マウス舌ヘの同所性移植モデルや尾静脈への注入による転移モデルについても解析を行うことを検討している。 in vitroの実験では、抗体アレイやmicroarrayを追加することによりWnt signal以外のシグナルネットワークの関与を明らかにする。
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Research Products
(14 results)