2013 Fiscal Year Research-status Report
新規分子が制御する血液凝固、血管修復メカニズムの解明研究
Project/Area Number |
25861756
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
浅野 智志 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (30570535)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 細胞移動 / イノシトールリン脂質 / 血小板増殖因子 |
Research Abstract |
創傷の治癒過程をコントロールする事が出来れば、患者の通院期間の短縮や感染リスクの低減など患者のQuality of Life (QOL)の向上につながる。組織が傷害されると、線維芽細胞は葉状仮足を形成し、創傷部位へ移動する。この仮足形成にイノシトールリン脂質のPI(4,5)P2からPI(3,4,5)P3への代謝が関与している。本研究において我々は、新規のイノシトールリン脂質結合性タンパク質として同定されたPhospholipase C (PLC) related catalytically inactive protein (PRIP)の細胞移動における関与を確認するため、PRIPノックアウト(KO)マウス胎仔由来線維芽細胞(MEF)の運動能を2D-chemotaxis assayによって調べた。PRIP-KO MEFでは、血小板由来増殖因子(PDGF)誘導性の細胞移動が著しく促進され、葉状仮足の形成も亢進した。この葉状仮足形成の亢進は、PRIP-DKO MEFにPRIP1を戻し発現させることで、wild typeで観察された表現型へと回復させることができた。さらに、PI(4,5)P2の局在をEGFP-PLCδ1-PH [PI(4,5)P2の特異的プローブ]を細胞に発現させ、確認したところ、PRIP-KO MEFで、細胞膜におけるPI(4,5)P2量が恒常的に減少していることが明らかとなった。その一方で、PDGF受容体の発現や、PDGF刺激誘導性の自己リン酸化、細胞内シグナリング(ERKやAktのリン酸化)の程度は変化しなかった。これらの結果は、PRIPが細胞膜におけるPI(4,5)P2代謝を抑制することで、仮足形成、細胞移動を負に制御している可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規のイノシトールリン脂質結合性タンパク質PRIPが、PDGF誘導性の線維芽細胞移動に深く関わることを見出した。さらに、細胞膜のイノシトールリン脂質量の解析やPDGF下流のシグナルの解析によって、細胞移動におけるPRIP分子の直接のターゲットが明らかになりつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討により、PRIP分子がイノシトールリン脂質代謝を調節することで、線維芽細胞の細胞移動を制御している可能性が示され、血管修復、創傷治癒におけるPRIPの作用メカニズムが明らかにされつつある。今後は、PRIPの標的分子の解明とPRIPの責任領域を明らかにする。更に、PRIPノックアウトマウスを用いた生体レベルでの創傷治癒実験を行い、治療応用に向けての知見を集積する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
血管修復におけるPRIPの役割に関する実験として、PRIPが血小板からのPDGFの分泌に関与しているかどうかを解析する予定であったが、それ以前に、PRIPがPDGF誘導性の線維芽細胞の移動性に関与していることが明らかになり、計画を変更し線維芽細胞の遊走におけるPRIPの機能解析を優先したため、未使用額が生じた。 未使用額はPRIPノックアウトマウスを用いた生体レベルでの創傷治癒実験のためのマウスの飼育費と試薬購入に充てることとしたい。
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