2013 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫シグナルが唾液腺による抗菌性因子産生に寄与する機序の解明
Project/Area Number |
25861782
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
猪俣 恵 朝日大学, 歯学部, 助教 (40553798)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 口腔細菌 / Porphyromonas gingivalis / 抗菌性因子 |
Research Abstract |
唾液腺は口腔細菌の直接的暴露を受けないにも関わらず抗菌性因子を産生するが、その産生メカニズムは理解されていない。本研究では、口腔細菌(ポリフィロモナス属、口腔レンサ球菌群等)の存在、すなわち口腔細菌の宿主細胞への付着・侵入、さらには宿主による細菌の認識とそれに伴う下流の自然免疫シグナルが、唾液腺による抗菌性因子の産生に何らかの影響を及ぼすのかを調べることを目的としている。 初年度では、口腔細菌の宿主細胞への付着・侵入が、唾液腺による抗菌性因子の産生に影響を及ぼすのかを解析することを目的とし、口腔細菌にはポリフィロモナス属に属するPorphyromonas gingivalis、宿主細胞にはヒト臍帯静脈血管内皮細胞を実験に供試した。血管内皮細胞に着目した理由として、血管内皮細胞を介して細菌の口腔から唾液腺への移行が起こりうると考えたためである。P. gingivalis は血管内皮細胞に付着・侵入したため、P. gingivalisがどのような菌体成分を介して細胞に付着・侵入するのかを調べた。P. gingivalisの主要外膜蛋白質であるOmpA様蛋白質に着目し、OmpA様蛋白質を欠失させた変異株を用いて細胞への付着・侵入能を野生株と比較した。その結果、変異株では明らかに細胞への付着・侵入能が減少した。次いで、野生株と変異株において付着・侵入後に生じる細胞への影響を比較したところ、野生株では変異株と比べて、数種のケモカインの発現誘導を抑制した。さらに、野生株では変異株と比較して、細胞増殖を抑制し、細胞死を誘導した。これらの研究結果を学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口腔細菌、中でもP. gingivalisがOmpA様蛋白質依存的に宿主細胞へ付着・侵入することを明らかにした。加えて、P. gingivalisはOmpA様蛋白質を介して特定のケモカインの発現誘導を調整することで、宿主の免疫応答を調節する可能性、あるいは免疫応答から回避することを明らかにした。さらに、宿主の免疫応答から逃れたP. gingivalisは、細胞増殖を抑制し、細胞死を誘導することを示した。 現在までに、P. gingivalisの主要外膜蛋白質であるOmpA様蛋白質の宿主へ及ぼす影響は理解されていなかった。初年度の研究の遂行により、幾つかの興味深い研究結果が得られた。次年度では、OmpA様蛋白質の認識に関与する分子や認識後に生じる下流のシグナルについて、また、口腔細菌の付着・侵入が、唾液腺による抗菌性因子の産生に影響を及ぼすのかどうかを検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、初年度に得られた結果をもとに、OmpA様蛋白質の認識に関与する宿主分子とその下流シグナルの分子メカニズムを調べる。次いで、付着・侵入に関与する宿主分子の発現をRNA干渉にて抑制した唾液腺において、抗菌性因子の産生に差があるのか否かについて調べる予定である。また、付着・侵入に関与する宿主分子を欠損させたノックアウトマウスを入手し、野生株とノックアウトマウス間において、唾液腺による抗菌性因子の産生に差があるのか否かについて調べる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1年の研究期間で確実に成果を挙げるため、各解析ステップを設定し、徹底して実験・解析を行った。加えて、得られた結果をもとに、次の実験計画を立て、極力同じような失敗をしないように留意したこと、試薬等の消耗品を購入する際に常に価格等を考慮して購入したことが、次年度使用額を生じさせることに繋がったと考える。 次年度の研究費は、主に試薬等の消耗品に充てる予定である。また研究成果の発表や論文の校閲等にも使用することも考えている。
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