2013 Fiscal Year Research-status Report
ステロイドコアクチベーターMTI-IIを用いた炎症制御による骨組織再生療法の開発
Project/Area Number |
25861806
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
土屋 志津 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (60610053)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 炎症 / 骨形成 |
Research Abstract |
近年、発癌や動脈硬化症の発症に慢性炎症が関与することが注目されている。根尖歯周組織に生じた骨欠損の再生を確実にするためには、感染制御と再生療法技術に加え、慢性炎症制御が重要と言える。そこで炎症の主たるシグナル伝達経路であるNF-κBシグナルを抑制するステロイド受容体コアクチベーターのMacromolecular Translocation Inhibitor II(MTI-II)に着目し、骨芽細胞様細胞における炎症応答抑制効果について検討した。 今年度の研究においての研究実績としては、ヒト骨肉腫細胞MG-63にNF-κBルシフェラーゼ発現プラスミドを遺伝子導入し、MTI-IIの酸性アミノ酸領域を利用したペプチド(MTI-IIペプチド)で前処理した後、炎症性サイトカインTNFα(10 ng/ml)で刺激後にルシフェラーゼ活性を測定し、NF-κBの転写活性を分析した。MG-63細胞をTNFαで刺激すると、NF-κBの転写活性が著しく上昇した。しかし、MTI-IIによってNF-κBの転写活性の上昇が解除・抑制された。次に、MTI-IIペプチドとTNFαで刺激後、全RNAを調整し、NF-κB標的遺伝子としてMatrix metallopeptidase-2,9 (MMP-2,9)とInterleukin-6,8 (IL-6,8)のプライマーを用いてリアルタイムPCRを行い、発現を分析した。その結果、MTI-IIによってMMP-9やIL-6の発現が抑制されることがわかった。以上より、MTI-IIは抗炎症剤として有効であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の計画としては、in vitro実験系において、骨芽細胞分化・炎症応答へのMTI-IIの影響を検討することを予定していた。その結果、MTI-IIによる石灰化能への影響の検討を現在行っているところではあるが、抗炎症効果の確認をすることができた。そのため、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、MTI-IIによる石灰化能への影響の検討を行う予定である。具体的には、BMPとTNFα刺激で骨芽細胞の石灰化能と炎症応答も誘導し、MTI-II存在下・非存在下で一定時間培養後、位相差顕微鏡下で形態変化の観察を行う。また、細胞増殖能に及ぼす影響をWST-1 assayで、石灰化能へ及ぼす影響をアルカリフォスファターゼ(ALP)活性で検討する。さらに、骨芽細胞分化マーカーの発現をリアルタイムPCR法およびウエスタンブロット法で検討することを予定している。 また、骨芽細胞株へのMTI-IIの影響が明らかとなった後、あるいは同時進行で、in vivo実験系において生体へのMTI-IIの影響を検討する。具体的には、ラット下顎骨第一臼歯を抜歯後、抜歯窩に(1)コラーゲンスポンジ単独、(2)MTI-II含有コラーゲンスポンジを埋入する。数週間後に埋入部位をμCTで撮影し、MTI-IIの有無による骨形成量の違いを骨形態計測により分析する。その後、下顎骨を摘出し、組織切片を作製する。組織形態や細胞の同定は、H•E染色によるスポンジ埋入部位の組織形態の観察およびTRAP染色によって行い、MTI-IIの影響を分析する予定としている。
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