2014 Fiscal Year Research-status Report
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25861867
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
磯部 明夫 昭和大学, 歯学部, 助教 (30635082)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 義歯支持粘膜 / 疼痛閾値 / 粘膜性状 / 有床義歯補綴 / リリーフ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は有歯顎者と無歯顎者の粘膜性状と疼痛閾値の相違を明らかにし,より疼痛の少ない有床義歯の製作を行う指標の確立を行うことを目的とした. 被験者は,インフォームドコンセントが得られた口腔粘膜に異常を認めない,高齢無歯顎者17名(男性: 8名, 女性: 9名 平均年齢: 78.4歳)とした.測定部位は上顎口蓋正中部,左側中間部,左側側方部の 3カ所とした.測定部位を規定するための熱可塑性レジンシートでシーネを製作した.各部位は 3回ずつ測定した.超音波厚さ計の探触子で各部位を加圧(1 N/sec)し,被験者が主観的に疼痛を感知した時点で信号発生器のスイッチ押下を指示した.その時の信号および超音波厚さ計の波形を記録し,ひずみゲージで求めた荷重量の推移と同時に記録した.これらから,粘膜性状のパラメータである荷重前の義歯支持粘膜の「厚さ」と硬さを示す「弾性率」,疼痛閾値のパラメータである疼痛を生じた時点での粘膜の「沈下量」,それまでの「圧力」,および「圧縮率」を算出した. 粘膜性状のパラメータでは,全ての部位で高齢無歯顎者は若年有歯顎者より,粘膜が厚く,弾性率は有意に小さな値を示した(p<0.05).疼痛閾値のパラメータでは,沈下量は中間部のみで有意に小さな値を示し(p<0.05),正中部,側方部では同程度の傾向を示した.圧力と圧縮率は全ての部位で高齢無歯顎者が若年有歯顎者より小さな値を示した.これらのことから,粘膜性状および疼痛閾値は部位により異なり,また高齢無歯顎者の粘膜は,若年有歯顎者に比べ,負担能力が低い可能性が示唆された. 以上のことを踏まえ,本年度は平成27年度は若年有歯顎者を対象に最も沈下量の少ない正中部にリリーフを施した義歯床に超音波厚さ計とロードセルを組み込み,適切なリリーフ量および面積の効果を評価する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は当講座で開発した粘膜の厚さと荷重量の同時測定システムを応用し,若年有歯顎者における粘膜性状と疼痛閾値を同時測定する手法を確立した.その結果,若年有歯顎者における粘膜性状のパラメータ(厚さ・弾性率・粘弾性)と疼痛閾値のパラメータ(圧力・沈下量・圧縮率)の計測結果が得られ,また,無歯顎者においてもシーネを用いることで測定が可能であることが確認されたことから,高齢無歯顎者における測定を行った. 平成26年度はこれまでの計測で得られた若年有歯顎者と高齢無歯顎者における各測定部位(口蓋正中部・左側中間部・左側側方部)の粘膜性状と疼痛閾値の違いおよびそれぞれの関係を評価した.この内容については平成26年5月に行われた日本補綴歯科学会第123回大会で発表し,現在,学術誌である老年歯科医学に投稿中である.これらで得られた知見から,良質な有床義歯を設計するためには代表的な義歯床下粘膜への適切な荷重分配の手法であるリリーフの適切な量および面積を決定する事が重要であると考えられた. そのため,平成27年度は平成25年度で計測した若年有歯顎者を対象に最も沈下量の少ない正中部にリリーフを施した義歯床に超音波厚さ計とロードセルを組み込み,適切なリリーフ量および面積の効果を評価する予定である.この結果を踏まえた上で将来的にはFEAモデルを用いた応力解析を行いたいと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では粘膜性状から疼痛閾値が推定可能であるという仮説をたて,疼痛の少ない良質な有床義歯補綴治療を行う上での指標を確立することを目的としてきた.これまでの結果から高齢無歯顎者の粘膜は厚く,沈下量が同程度のため,若年有歯顎者より疼痛を生じやすい可能性が示唆された.これまでも有歯顎者と無歯顎者の粘膜性状の違いは加齢変化や義歯装着に伴う粘膜性状の変化については十分に比較した文献は見当たらない.また,一口に義歯床下粘膜といっても正中部や中間部で粘膜性状や疼痛閾値は大きく異なるため,疼痛の少ない良質な有床義歯補綴治療を行うためには義歯床下粘膜に対する適切な荷重分配(義歯床のリリーフ)が重要である. そのため,平成27年度は平成25年度で計測した若年有歯顎者を対象に最も沈下量の少ない正中部にリリーフを施した義歯床に超音波厚さ計とロードセルを組み込み,適切なリリーフ量および面積の効果を評価する予定である.この結果を踏まえた上で将来的にはFEAモデルを用いた応力解析を行い,デジタル上で義歯床のリリーフ量や面積を決定できるような義歯設計システムを開発したいと考えている.
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Causes of Carryover |
これまでは同時測定システムを用いることで若年有歯顎者および高齢無歯顎者の粘膜性状のパラメータと疼痛閾値の関係を評価してきた.この装置はハンディタイプの探触子を用い,各測定部位(口蓋正中部・左側中間部・左側側方部)を測定してきた.しかし,一口に義歯床下粘膜といっても各測定部位で粘膜性状と疼痛閾値は大きく異なるため,義歯床下粘膜に対する適切な荷重分配(リリーフ量・面積)を評価することが必要であると考えられた.そのため,義歯床に超音波厚さ計やロードセルを組み込み,リリーフ量・面積を評価する方法を開発し,若年有歯顎者で測定を行うこととした.また,この結果を用いて義歯床から粘膜に加わる応力を解析することも重要であると考えられるため,FEAモデルを用いた応力解析を検討している.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
FEAのシュミレーションソフト(メカニカルファインダー)の費用や義歯床に測定装置を組み込んだ装置を製作するための印象材等の費用での使用を計画している.また,これまでの研究結果を発表するための旅費や論文の英文校正費用なども必要である.
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Research Products
(3 results)
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[Presentation] Relationship between oral mucosa and pressure-pain threshold in edentulous patients.2014
Author(s)
Kotani, Y., Sato, Y., Kitagawa, N., Shimodaira, O., Takeuchi, S., Isobe, A. and Takamatsu,N.
Organizer
92nd General Session & Exhibition of the International Association for Dental Research
Place of Presentation
Cape Town, South Africa
Year and Date
2014-06-25 – 2014-06-28
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