2014 Fiscal Year Research-status Report
パルス磁場刺激による神経突起伸長誘導メカニズムおよび配向制御法の解析
Project/Area Number |
25861880
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
工藤 忠明 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50431606)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 励磁コイル / PC12細胞 / 神経細胞分化 / 温熱効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度研究では、初年度研究に続き、励磁コイルを用いた電磁気学的な細胞刺激が神経細胞分化を誘導するメカニズムをより深く理解するため、下記方法により、励磁コイルなどによる細胞外部環境からの温熱作用がPC12細胞の増殖や神経細胞分化に与える影響を重点的に検討し、以下の成果を得た。 [方法]初年度の励磁コイルを用いた研究成果に基づき、加熱プレートの表面温度を39.5℃(および比較対照として42℃)に設定し、培養プレート内の培地および細胞に1日最大18時間(3時間刺激を6回反復)のプログラム反復温度刺激(以下、TRTSと呼ぶ)を、神経成長因子などの分化誘導因子の添加なしに6日から14日間負荷した。その後、位相差顕微鏡により細胞増殖や神経突起伸長を、並びに生化学的神経分化指標としてアセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性を評価した。[成果]加熱プレートを用いたTRTS(39.5℃、18時間/日)では、増殖用培地にて培養したPC12細胞の増殖曲線には影響を及ぼさなかった。しかし比較対照のTRTS(42℃、18時間/日)では、細胞は刺激開始24時間後にはほぼ全て死滅することが確認された。次に分化用低血清培地にて培養すると、TRTS(39.5℃、3~18時間/日)により1日当たりのTRTS処理時間依存性に神経細胞分化(神経突起の伸長およびAChE活性の上昇にて評価)が誘導された。また、各種分子阻害剤を用いたERK経路やp38経路の抑制により、TRTS依存性神経細胞分化誘導は有意に阻害された。これらの結果は、励磁コイル刺激の際などに発生するTRTSのような反復的な精密温熱刺激が、パルス磁場そのものの成分とは別に、あるいはこれと協調的にPC12細胞の神経細胞分化誘導に貢献できること示唆している。この手法は、神経分化・再生誘導のための有用な基盤的技術の一つとなる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
超高齢社会を迎えた日本では、脳卒中の後遺症や脊髄損傷の四肢麻痺に苦しむ患者数は200万人を超え、脳や脊髄損傷後の運動機能回復治療への需要は大きくなるばかりである。近年、医療用励磁コイルを用いて脳を直接刺激する経頭蓋磁気刺激が、脳卒中片麻痺の治療手段として有望視されている。しかしながら、パルス磁場刺激依存性の神経細胞分化誘導機構は不明点が多く、その分子的基盤および神経突起の配向制御法を解明することは、励磁コイルを用いた神経回路再編・再生のためのシステムの開発に大きく寄与するものと考えられる。 本年度研究では、前年度研究に続きパルス磁場刺激時に生ずる励磁コイル由来の反復的温熱刺激がPC12細胞の神経細胞分化誘導を促進する基本的メカニズムを検討し、その解析を完了した。これを受け、今後はさらに予定している他の項目の検討を重点的に実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、平成25年度および平成26年度に実施した実験により得られた成果を踏まえ、以下の検討を実施する。 (1) パルス磁気刺激や励磁コイル由来のジュール熱によるMEK-ERK1経路の活性化機構を引き続き検討する。特にMEK-ERK1/2上流のシグナル伝達因子の特定には、低分子シグナル阻害剤やRNA干渉法を用いる。 (2) (1)の結果を踏まえ、SH-SY5Y細胞やNG108-15細胞において共通のメカニズムで神経細胞分化が誘導されるか否かを明らかにする。 (3) 平成26年度に引き続き、一方向性のパルス磁場刺激が神経突起の配向に与える影響の検討を行う。パルス磁場の磁束方向を、培養プレートの全細胞に一方向性かつ平行に作用させるよう開発した細胞刺激用励磁空芯コイルを用い、各種神経様細胞が神経突起の伸長方向について、磁場により制御できるか否かを検討する。また静磁場による神経突起配向制御についても引き続き並行して検討する。 こうした検討を積み重ねることにより、励磁コイルによる磁気刺激および温熱刺激依存的な神経突起形成誘導法の分子的基盤および配向制御法を明らかにし、もってこれら技術を活用した神経回路再編・再生システムの開発実現性の向上やその進展に寄与する。
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Causes of Carryover |
平成27年3月に参加した学会(神戸)への参加費用および学会参加費について、当該助成金からの支払額が確定した後の研究費残額を確認したところ、残額が少額でわずか337円となったことから、この残額については、次年度使用額として翌年度分助成金と合わせて効果的に活用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
翌年度分として請求した助成金の内、物品費として使用する分と合わせて、課題の推進に必要な実験用消耗品の購入に効果的に使用する予定である。
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[Journal Article] Induction of neurite outgrowth in PC12 cells treated with temperature-controlled repeated thermal stimulation.2015
Author(s)
Tada-aki Kudo, Hiroyasu Kanetaka, Kentaro Mochizuki, Kanako Tominami, Shoko Nunome, Genji Abe, Hiroyuki Kosukegawa, Toshihiko Abe, Hitoshi Mori, Kazumi Mori, Toshiyuki Takagi, Shin-ichi Izumi
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Journal Title
PLOS ONE
Volume: in press
Pages: in press
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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