2013 Fiscal Year Research-status Report
口腔扁平上皮癌の浸潤・転移における細胞間接着分子の役割
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25861923
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
北原 寛子 金沢大学, 大学病院, 医員 (70507053)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / E-cadherin / β-catenin / 上皮間葉移行 |
Research Abstract |
癌の浸潤を防ぐことが予後を左右すると思われる。浸潤の初期におこる癌細胞間の接着機能の低下に着目し、これまでの研究でE-cadherin抑制にて浸潤能、運動能の上昇が認められた。そこで、本年度はE-cadherin抑制後に生じる細胞内の変化について検討を行った。siRNAを細胞に導入することで山本、小浜分類浸潤様式3型細胞、4C型細胞のE-cadherinを発現抑制させ、抑制後のβ-cateninの発現を検討。RNA発現量には変化が認められなかった。そこでタンパク質の発現部位を細胞膜、細胞質、核と解析したところsiRNA導入後に核での発現上昇が認められた。 癌細胞は上皮間葉移行(EMT:Epithelial-Mesenchymal Transition)獲得によってE-cadherinは発現抑制されることが知られている。そこで、浸潤様式が悪性化したものはEMTを獲得しているのかを検討するため、浸潤様式3型、4C型、4D型を用いてEMTマーカーの発現について検討した。上皮系マーカーとして E-cadherin、間葉系マーカーとしてVimentin、N-cadherinを使用した。各細胞のタンパク質の発現はWestern blottingを用いて検討したところE-cadherinは4D型細胞で発現の低下が認められた。また、VimentinではE-cadherinとは逆に4D型細胞で発現が認められた。次にRNAの発現をrealtime RT-PCRを用いて検討した。3型、4C型と比較して、4D型細胞では間葉系の性質を示すものが多く、EMT獲得が示唆された。つづいてEMT誘導因子であるSnail、Twistの発現を検討した。SnailはE-cadherinの発現と逆相関を示し、関連が示唆されたが、Twistの発現は浸潤様式、E-cadherinとも関連を認めることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度はE-cadherinの発現の有無により生じる細胞内の変化を検討する予定であった。siRNA導入によりE-cadherinの発現を抑制することで生じる各細胞のβ-cateninのRNAの発現変化、また、タンパク質の発現部位(細胞膜、細胞質、核)の変化を検討した。 また、E-cadherinと関係の深い上皮間葉移行と癌浸潤様式との関係を検討する予定であった。浸潤様式の異なる細胞を用いて、それぞれのEMTマーカーの発現について検討した。タンパク質はWestern blottingを用い、RNAの発現はreal-time RT-PCRを用いて検討した。予定では口腔扁平上皮癌患者さんの組織標本を用いてEMT誘導と臨床症状についても比較検討する予定であった。間葉系マーカーとしてVimentinの免疫組織学的染色を行い検討する予定であったが、検討するまでにいたらなかった。 しかし、平成26年度に検討して行う予定であった、EMT誘導因子であるSnail、Twistの発現について前倒しして本年度に行うこととした。これらの検討をEMTマーカーと同時に行うことで、作業の効率化をはかることができたと思われる。 本年度は予定していた内容を達成できないところもあったが、その代わりに、次年度実験を前倒しすることで、2年間の実験計画からみると、効率化をはかることができおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究より癌細胞において浸潤様式とEMTとの関連が示唆されたため、平成26年度はさらにこれらの関係について深く調べていく予定である。EMTを調べるため、代表的な指標であるE-cadherinの転写抑制をすると考えられるSnail、Twistの発現を検討した。SnailはE-cadherinと逆相関を示す傾向があり、関連が考えられたが、Twistに関しては関連を認められなかった。そこで、EMT誘導をおこすと考えられているTGF-βについて追加実験を行うことを検討している。EMT誘導時にTGF-βが亢進するとの報告から、癌細胞の中でもこれまでの研究からEMTがあまり進行していないと思われる浸潤様式3型細胞であるOSC-20細胞を用いることとした。細胞を培養する際に、Recombinant TGF-βを培養液中に加えることで培養細胞にTGF-βをとりこませる。TGF-βを取り込んだ細胞にEMT亢進が起きているか調べるために培養後の細胞のRNAよりrealtimeRT-PCRを用いてEMTマーカーの発現を検討することを考えている。また、亢進していた際には、Recombinant TGF-βを取り込んだ細胞を用いてマウスに移植し、腫瘍の転移についても検討したいと考えている。 また、細胞質内のβ-cateninに作用するWnt シグナルにつても浸潤様式、EMTとの関係について検討したいと考えている。E-cadherin抑制下では細胞質内、核でのβ-cateninの発現が上昇していることが認められたため、EMT亢進がWntシグナルに関与することが考えられ、検討していきたいと思う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究結果より追加実験が必要と判断し、発表するにまでに至らなかったため今年度は海外での国際学会への参加をしなっかったため外国旅費を使用しなかった。また、効率的に予算を執行することができたため経費は繰り越すこととした。 平成25年度にreal-time PCR装置が故障したため、当初の研究計画を遂行するために急遽新しいreal-time RT-PCR装置をリース使用することとなった。平成25年度の未使用額はこのリース費用次年度分として使用することとした。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Loss of claudin-7 is a negative prognostic factor for invasion and metastasis in oral squamous cell carcinoma2013
Author(s)
Yoshizawa K, Nozaki S, Kato A, Hirai M, Yanase M, Yoshimoto T, Kimura I, Sugiura S, Okamune A, Kitahara H, Noguchi N, Kato K, Ueki K, Kawashiri S
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Journal Title
Oncology report
Volume: 29
Pages: 445-50
DOI
Peer Reviewed
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