2013 Fiscal Year Research-status Report
TGF-beta/Smadシグナルを標的とした口腔扁平上皮癌転移メカニズムの解析
Project/Area Number |
25861934
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
米川 敦子 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70600914)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮癌 / リンパ節転移 / 運動能 / EMT |
Research Abstract |
口腔扁平上皮癌の頸部リンパ節転移のメカニズムを解明するために口腔扁平上皮癌頸部リンパ節高転移株であるSAS-LM8の運動能を中心とした細胞生物学的特性を解析した. SAS-LM8とその親株であり頸部リンパ節への高転移能を有さないSAS-GFPの細胞形態, 増殖能, 遊走能, 浸潤能, EMT関連遺伝子の発現について解析した. SAS-LM8の細胞形態は, SAS-GFPと比べて紡錘形を呈し, 細胞周囲への突起の伸展が観察された. 増殖能については, 両細胞間に差は認められなかった. 遊走能については, wound healing assayとmigration assayで検討を行ったところ, SAS-LM8の遊走能はSAS-GFPに比して亢進していた. さらに浸潤能について, invasion assayで検討すると, SAS-LM8の浸潤能が増強していた. 細胞形態の変化や遊走能及び浸潤能の亢進にはEMTが関与していることが予想されたので, EMT関連遺伝子の発現について, RT-PCRで検討した. EMTは上皮系遺伝子の発現減少と間葉系遺伝子の発現増強を特徴とするが, 上皮系遺伝子の代表であるE-cadherinの発現に両細胞間で差は認められなかった. 間葉系遺伝子であるN-cadherin, Vimentinの発現はSAS-LM8で増強を認めた. またE-cadherinの転写抑制遺伝子であるSnail, Slug, Twistについては, 両細胞間で発現量に差を認めなかった. 細胞運動能には細胞骨格の再構成が寄与しているので, アクチン細胞骨格について, 蛍光免疫染色で検討したところ, SAS-LM8ではSAS-GFPに比べて細胞周囲の仮足様突起が大きく進展しているのが観察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H25年度は,SAS-LM8の細胞生物学的特性の解析を中心に検討を行ってきた. 使用する細胞の調整に大幅に時間を有したために, 当初の計画通り実験が進まなかった. 細胞形態, 増殖能, 遊走能, 浸潤能については検討ができたが, EMT関連遺伝子について, 検討ができていない遺伝子がある. また遊走能や浸潤能の亢進に関連するMMPの発現についても解析ができていないのでやや遅れていると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
EMTを強力に誘導する因子であるTGF-betaは発癌初期では強力な細胞増殖抑制作用によって癌抑制的に働くが, 癌の伸展とともに後期では逆に癌促進的に働き, 癌の浸潤・転移に関与することが知られている. H25年度は口腔扁平上皮癌頸部リンパ節高転移株の細胞生物学的特性の解析を行ったが, H26年度はその細胞を使用し, 転移を司るEMTおよび細胞運動能に対するTGF-betaの影響をTGF-beta / Smadシグナルを中心に検討を行う. SAS-LM8とSAS-GFPにTGF-beta刺激を行い, 細胞形態, 増殖能, 遊走能, 浸潤能, EMT関連遺伝子の発現, TGF-beta受容体の発現およびSmadのリン酸化について検討を行う. またSAS-LM8およびSAS-GFPにTGF-beta抗体やTGF-beta受容体の阻害剤を作用させて同様の検討を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度は本実験で使用する細胞の調整に実験時間を大幅に費やし, 当初の計画通りに実験が進まなかったため, 当初使用を予定していた物品購入を行えなかったことと, H26年度に当初, 実験計画にはなかった口腔扁平上皮癌頸部リンパ節高転移株であるSAS-LM8と親株SAS-GFPの浸潤・転移に関連する遺伝子発現の差を網羅的に解析するRNAマイクロアレイを実施する計画のための資金分を残したので次年度使用額が生じた. H26年度は, H25年度に購入を予定していた抗体やH26年度の実験に必要な物品, 動物実験に使用するヌードマウスを購入予定としている. またSAS-LM8とSAS-GFPの浸潤・転移に関連する遺伝子の発現の差を網羅的に解析するRNAマイクロアレイを行う計画を立てている.
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