2014 Fiscal Year Research-status Report
口腔顔面領域の神経障害性疼痛における神経栄養因子の神経再生と疼痛制御機構の解明
Project/Area Number |
25861936
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大山口 藍子 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70464237)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 神経障害性疼痛 / 疼痛関連行動 / c-Fos |
Outline of Annual Research Achievements |
神経系の発生、機能、再生に関わる重要な細胞外シグナルの神経栄養因子に着目し、神経障害性疼痛モデルラットにおいて疼痛制御への関わりを疼痛関連行動、脊髄シナプス伝達、神経軸索再生から明らかにし、神経障害性疼痛の治療戦略の足がかりをつかむことを目的とする。具体的には、1)実験動物はSD系ラット雄性、体重180~250gを使用する。ペントバルビタール麻酔下、眼窩下神経を露出させ、ポリグルコール酸糸で結紮し、神経障害性疼痛モデルとして眼窩下神経結紮モデルを作製する。モデル作成14日後(外科的侵襲の回復を待ち、神経損傷モデルが安定する期間)Von Frey test(機械刺激性痛覚過敏反応)、ホルマリンテスト(化学刺激性侵害受容反応)から疼痛関連行動を観察する。さらに神経栄養因子のGDNF familyの一つであるアルテミン1mg/kgを皮下投与し、侵害受容行動の変化を観察する。2)ホルマリンテストの後、パラホルムアルデヒドによりラットを還流固定し、下位脳幹の連続横断切片を作成する。免疫組織化学染色法により延髄後角尾側亜核での二次ニューロンの神経活動の指標としてc-Fos発現を定量し、その活動性を評価する。さらにアルテミンの投与によりc-Fos発現の変化から二次ニューロンの活動性を評価する。3)神経栄養因子のGDNF familyの1つであるアルテミンを投与し、感覚機能・シナプス機能回復、神経再生の促進をNF200、CGRP、P2X3免疫染色から観察する。以上から、神経栄養因子が神経ネットワークを修復する可能性を探り、最終的には得られた知見を難治性の神経障害性疼痛の治療や神経再生医療の応用を目指すことに意義がある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
眼窩下神経結紮モデルラットの作製に関して、実験動物はSD系ラット雄性、体重180~250gを使用した。ペントバルビタール麻酔下、眼窩下神経を露出させ、ポリグリコール酸糸で結紮し損傷モデルとした。結紮手術後の回復は良好であった。機械刺激性痛覚過敏反応の評価に関して、無麻酔下で合成樹脂でできたフィラメントをラットの顔面に垂直に押しやり、その回避応答までの重量閾値をデジタルVon Frey法により評価した。これまでの実験結果では小型細胞のP2X3陽性ニューロンを選択的に削除したラットは正常ラットに比べ、逃避応答閾値が低下したというデータを得ていた。今回の神経結紮モデルにおいても逃避応答閾値が低下する傾向であった。ホルマリンテストによる疼痛関連行動の定量に関して、これまで申請者らの研究グループではラットの顔面領域へのホルマリンテストを行っており、発痛物質(1~2%ホルマリン水溶液)を眼窩下神経領域(ラット上唇)に50μl注射し、顔面こすり運動を侵害受容反応として測定している。今回、眼窩下神経結紮モデルへのホルマリンテストを行った。顔面領域へのホルマリン皮下注射後に生じる疼痛行動は、脊髄系と同様の二相性を示した。ホルマリンテストの2時間後、パラホルムアルデヒドによりラットを還流固定し、免疫組織化学染色法にてVcにおけるc-Fos発現量を定量した。顕微鏡下で、c-Fos陽性細胞数をカウントした。これまでの実験結果では小型細胞のP2X3陽性ニューロンを選択的に削除したラットは正常ラットに比べ、Vc表層でのc-Fos陽性細胞数は増加していた。今回の眼窩神経結紮モデルにおいても同様にVc表層でのc-Fos陽性細胞数は増加傾向であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の方策として、神経栄養因子のアルテミンの全身投与に関して、神経損傷モデル作製後、アルテミンを14日以上全身投与すると、侵害受容行動や感覚運動機能を完全に機能回復させたという報告から、今後は眼窩下神経結紮モデル作製後から14日間、1mg/kgのアルテミンを皮下注射し、疼痛関連行動がどのように変化するのかを観察していく。また、アルテミンはGFRα3に結合した後、受容体型チロシンキナーゼであるRETと複合体を形成してシグナル伝達を行うことから、GFRα3あるいはRET免疫陽性を定量する。さらに、NF200、CGRP、 P2X3それぞれの二重染色を行い、これらのマーカーの発現比率がアルテミン投与により正常化することを観察する。
|
Causes of Carryover |
本年度の研究計画から実験を進めていき必要物品を購入した結果、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度と同様に研究計画に従い実験の必要物品を購入していく。
|