2013 Fiscal Year Research-status Report
抗癌剤による味神経障害に起因する味覚障害の発生機序の解明と治療法の開発
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25861968
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
青木 久美子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (40448767)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 味覚障害 / 抗がん剤 |
Research Abstract |
抗がん剤による口腔内有害事象の一つに味覚障害がある。この障害はがん治療の生存率に直接影響をあたえるものではないことから軽視されがちであり、その原因は不明である。亜鉛の投与や食事の工夫など対処療法は行われているが、未だ有効な治療法がないのが現状である。本研究では、抗がん剤を投与したラットから有郭乳頭切片を作製し、舌上皮、味蕾、味神経などの障害と回復の過程を組織学的に明らかにすることにより、化学療法中における味覚障害発生機序の解明と有効な治療法の開発を目的とする。抗がん剤としては、臨床的によく使用され、口腔粘膜炎の発現頻度が高いテガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(ティーエスワン○R)(S-1)を用いた。S-1の投与量は、予備的検討から2mg、10mg、20mg/kg/dayとした。5日間連続経口投与後2日間休薬を1クールとし、3クール施行した後に舌を摘出した。3クール施行中に苦味物質である塩酸キニーネを用いた2瓶選択法による行動学的実験を行った。摘出した舌より有郭乳頭を中心にパラフィン切片を作製した。HE染色による舌上皮細胞と味蕾の変化を観察した。PGP9.5を用いた免疫染色を行い、味神経線維および舌内神経節の変化を観察した。S-1による舌上皮細胞や味蕾の明らかな数量および形態変化は認められなかったが、一方で味神経線維の減少と舌内神経節細胞の変性を認めた。行動学的実験では個体におけるばらつきが大きくあったため、1クール目と3クール目の平均キニーネ水摂水率の増加率で評価した。その増加率は味神経線維の減少と舌内神経節細胞の変性のそれぞれと有意な相関関係にあった。キニーネ水の摂水率の増加を、味覚障害と考えると、S-1投与による味覚障害と味神経障害には関連性が高いことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
S-1による味覚障害の原因としては、舌上皮細胞や味蕾の変化ではなく、味神経の障害が関係していると形態的変化にて示唆された。形態的な味神経線維の障害がどのように味覚障害に関与しているか、また味覚伝達経路において舌内神経節はどのような役割を担っているかを解明することが今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
味神経障害が味覚障害にどのように関与しているか、神経解剖学的実験を行い、情報伝達経路を検討する。S-1による味覚障害の過程として、味細胞から味神経への味信号の伝達障害や中枢神経への味信号の伝達障害が起こっていると仮定し、遺伝子発現法の施行を検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
実験計画遂行の遅れにより次年度使用額が生じたと考える。 物品、薬品の購入と研究成果発表における諸経費に使用予定である。
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