2013 Fiscal Year Research-status Report
顎関節症の病態形成に対するアクチビンの関与と治療への応用
Project/Area Number |
25861970
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
三次 翔 九州歯科大学, 歯学部, 特別研修員 (00636920)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 顎関節症 / 変形性顎関節症 / アクチビン / 前軟骨細胞 / 滑膜細胞 / サイトカイン |
Research Abstract |
アクチビンはTGF-βファミリーに属するサイトカインで、様々な組織で発現が認められ、細胞種に応じた分化を調節している。軟骨にも強い発現を認めるが、その生物学的作用については不明な点が多い。我々は、アクチビンを前軟骨細胞に作用させたところ、JNKならびにAktシグナルを介してSox9の遺伝子発現が低下し、軟骨細胞分化が抑制されることを明らかにした。この結果から、アクチビンは軟骨細胞の分化に抑制的に働き、肥大軟骨細胞への分化の過剰な亢進を制御する可能性が示唆され、顎関節の軟骨細胞の過剰な分化、骨形成によって生じる変形性顎関節症に対して抑制的に作用している可能性が考えらた。そこで、顎関節症の病態で早期から変化が認められる滑膜に着目し、病態形成に関与するといわれているADAMTS、MMPなどのプロテアーゼ発現に及ぼすアクチビンの影響を正常滑膜細胞と比較し、分子生物学的に解析し、顎関節症の病態解明と治療への応用の一助とすることを目的とした。使用する材料としては、顎関節症IV型の変形性顎関節症(OA)で開放手術などを施行する患者のうち、本研究への検体提供に同意を得られた場合の手術で採取した滑膜組織を無菌的に器官培養し、得られた細胞をOA滑膜細胞として用いる。この方法により、変形性顎関節症の病態をin vitroで再現、検証することが可能になる。しかしながら、手術にて採取したOA滑膜の器官培養はコンタミネーションが多く、回収できる細胞は少なかったため、異なる方法で変形性顎関節症の病態を再現することを検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
使用材料である変形性顎関節症患者の滑膜細胞の器官培養は、無菌的操作を求められ一度に回収できる細胞に限りがあるため
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Strategy for Future Research Activity |
前年度の結果を踏まえて、患者由来の滑膜細胞のみの使用では、解析に十分なサンプル量の確保が難しいため、並行して株化細胞であるヒト滑膜種細胞株であるHS-SY-IIを使用予定である。尚、同細胞についてはすでに入手済みである。予備実験では、この細胞は炎症性サイトカイン刺激により、マトリックスメタロプロテアーゼの発現が亢進することが、遺伝子レベルの解析で証明されている。同細胞を炎症性サイトカイン存在下に、アクチビンを添加して培養を行う。培養後の細胞より、サンプルを回収し、マトリックス分解酵素についてreal-time RT-PCR法で遺伝子レベルの発現、Western blotting法およびELISAにて細胞溶解液中および培養上清中のタンパクレベルの発現をそれぞれ確認する。ヒトの顎関節細胞由来の滑膜細胞についても、継続して採取・分離・培養を行い、上記の分子生物学的解析を行い、顎関節症の病態解明および治療法の確立について考察を加える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
変形性顎関節症で顎関節開放手術を施行する症例は少なく、また採取した滑膜の器官培養から回収できる細胞数が少なかったため、十分な解析実験が行えなかったため 顎関節症患者からの滑膜細胞を用いた研究と並行して、株化滑膜細胞に機械的刺激やサイトカインの刺激を与えた炎症モデルを用いた研究を行う。培養から回収した細胞よりmRNAを抽出、逆転を行い、cDNAを合成、リアルタイムPCRシステムにて、PCRを行い、インターカレーター法にてmRNA発現量を定量化、測定する。ターゲットとする遺伝子としては、IL-1, IL-6, IL-23, IL-33, ADAMTS4, ADAMTS5、MMP3, MMP13などを予定している。また、滑膜細胞のcell lysateを抽出し、ELISA, Western blotting分析を行う。ADAMTS4, ADAMTS5, MMP-1,2,3,8,9,13などの抗体を用いる予定である。
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