2014 Fiscal Year Research-status Report
頭蓋顔面形態異常におけるゲノムワイドな遺伝的関連解析
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25861991
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
斉藤 文男 北海道大学, 大学病院, 助教 (00612889)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歯学 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨格性下顎前突症は、下顎の前下方への成長が過大であるため、側貌における下顎の著しい前突感と、反対咬合による咀嚼障害を呈する疾患である。骨格性下顎前突症の原因は、遺伝要因と環境要因が原因であると報告されているが、遺伝的要因が重要であると考えられている。もし、骨格性下顎前突症の原因遺伝子が明らかになれば矯正治療の治療方針を決定する上で重要な情報になると考えられる。 そこで本研究はマイクロサテライトマーカーを用いたゲノムワイドの解析により、骨格性下顎前突症の感受性対立遺伝子領域を同定することを目的とした。 一次スクリーニングはコントロール180人、患者140人、二次スクリーニングではコントロール180人、患者100人のサンプル(血液)を試料とした。 結果として、一次スクリーニングで3859個のマーカーが陽性、二次スクリーニングで明らかに偽陽性と考えられるものを省き36マーカーが陽性となった。その中で第一染色体に存在した5つのマーカーに対し、Individual genotypingを行った。あるアレルの頻度にケースコントロール間で差があり、2つのマーカーで有意な相関が認められた。2つの関連が示唆されたマーカーに近接する遺伝子の候補としてPLXNA2遺伝子とSSX2IP遺伝子が挙げられ、D1S1358iはPLXNA2遺伝子のイントロンに存在し、D1S0411iはSSX2IP遺伝子の約23kb上流に存在していた。PLXNA2遺伝子はセマフォリンの共受容体をコードする遺伝子でセマフォリン3Aは骨代謝への関係が報告されており、SSX2IP遺伝子は骨膜肉腫と関係する遺伝子である。 結論として、第一染色体において2つの遺伝子座(1p32.2、1p22.3)が骨格性下顎前突症の感受性領域として示唆された。1p22.3は過去の連鎖解析の結果と同じ領域であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
時間的、費用的、人的な点を考慮するとモデル動物であるマウスを用いた研究は保留し、ヒトをサンプルとした研究に集中して研究を進める必要があると考える。今まで集めたデータを整理し、今後どのように検索していくのか効率の良い方法を検討しながら進めている。 具体的には二次スクリーニングで陽性となった36マーカー中、第一染色体の検索はほぼ終えた。次の段階として他の染色体での大まかな検索を行い、positiveな結果が見込めかつ骨格性下顎前突症と関連が疑われる遺伝子と考えられるマーカーに絞り、そのマーカーのIndividual Typingを行うところである。 ただし、実験のdiscussionやデータ収集のため東海大学へ訪れることを計画していたが、2014年度は時間的都合により予定していた回数ほどには行くことができなかった。 また、2014年度に参加する予定であった日本矯正歯科学会へ参加することもかなわず、本研究分野における今ある情勢に関して情報収集できなかった点も達成度がやや遅れている理由の一つと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
計画当初はヒトでの検索は困難であることが予想されたため、研究そのものが中途半端なもので頓挫しないようにマウスでも検索することで結果を得ようと考えていたが、ヒトで調べることで有用な結果を得る可能性が見出されてきたので、ヒトのみの検索に絞ることとした。 今後研究の推進方策として限られた時間や研究費を考慮すると二次スクリーニングで陽性となった36マーカーすべてを検索するのは困難と考える。まずは未だ検索していない第一染色体以外の他の染色体で大まかな検索を行い、positiveな結果が見込めかつ骨格性下顎前突症と関連が疑われる遺伝子と考えられるマーカーに絞り、Individual Typingを行うことによって骨格性下顎前突症の新規感受性領域の同定に着手しようと考えている。 また、関連解析ばかりではなく、エクソーム解析(連鎖解析)も並行して行っていく予定である。エクソーム解析であれば、必要な個体数が関連解析と比較して大幅に少ないので研究期間内に必要個体数を収集することが可能かもしれないと考えている。 さらに関係する様々な学会に足を運び世界の動向を見定め、他の研究者との交流を図ることで本研究の内容を充実させようと考えている。もちろん国内外での学会にて研究発表し、本研究の価値を積極的に発信していきたい。
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Causes of Carryover |
実験のdiscussionやデータ収集のため研究協力先である東海大学を訪れる予定だったが、まとまった時間を作ることができず予定していた回数ほどには行くことができなかった。 また2014年度は計画上、幕張で開催された日本矯正歯科学会に参加する予定だったが、勤務している北海道大学病院の都合上、急患対応としてドクターを数名配置せねばならず、今回私が対応することとなったため参加することができなかった。 研究に必要な消耗品として計上していたプライマーをセール期間中に購入することができたため、予想していた消耗品への費用が大きく節約できたことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度は上記にあるような昨年度の反省を顧みて、計画通りに東海大学へ訪れ研究を進めていく予定であるため、物品費と旅費に研究費の大部分が当てられる。 また今年開催される福岡で開催される日本矯正歯科学会はもちろん、可能であればLondonで開催されるInternational orthodontic congressにも参加を検討中であるため旅費は確保しておかなければならない。 さらにpositiveなデータを得ることができたなら、学会発表や論文投稿を考えているので印刷費、成果投稿料、論文別刷等も必要となる可能性がある。
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Remarks |
北海道大学大学院歯学研究科口腔機能学講座歯科矯正学教室のホームページを2014年4月にリニューアルした際に、本研究内容を日本語版と英語版の両方をアップロードした。それによって日本国民はもちろん、全世界に情報を発信している。
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