2013 Fiscal Year Research-status Report
幼児期におけるストレスが口腔顔面領域の疼痛感覚に与える影響
Project/Area Number |
25862036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
保田 将史 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60643715)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 幼児期ストレス / 疼痛感覚 / ATP受容体 |
Research Abstract |
幼児期にネグレクトのような強いストレスを経験した成人は、侵害刺激に対する感受性が増強すると報告されている。本研究では、仔ラットと雌親ラットの接触時間を制限したネグレクトモデルラットを作成し、幼児期ストレスが口腔顔面領域の疼痛感覚に与える影響について解明することを目的とした。 ネグレクトモデルラットの作成にはSprague Dawley系のラットを使用し、仔ラットの出生後2-14日の間毎日180分間、雌親ラットと隔離して単独で放置した。生後22日に離乳を行う時点で雄ラットのみを選び、生後56日まで飼育したものをモデルラットとした。また、離乳を行う生後22日まで雌親ラットと隔離することなく飼育し、生後56日まで成長した雄ラットをコントロールラットとした。 モデルラットおよびコントロールラットそれぞれの口髭部皮膚に機械刺激を加え、逃避行動を示す疼痛閾値の測定を行ったところ、モデルラットでは疼痛閾値の有意な低下がみられた。このことより、幼児期ストレスが口腔顔面領域の侵害刺激に対する感受性を増強することが示された。 皮膚への機械刺激によりケラチノサイトからATPが放出されることが報告されている。そこで、幼児期ストレスが引き起こす疼痛感覚変化の機序を解明することを目的に、疼痛発現への関与が報告されているATP受容体に注目し実験を行った。モデルラットの口髭部皮下にATP受容体アンタゴニストを投与し機械刺激に対する疼痛閾値の変化を測定したところ、投与後30分で疼痛閾値の有意な回復がみられた。また、三叉神経節内の口髭部皮膚支配神経細胞でのATP受容体の発現を免疫組織学的に検討したところ、有意な増加がみられた。これらの結果より、幼児期ストレスが末梢でのATP受容体の発現を増加させ、侵害刺激に対する感受性の増強を引き起こすことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・ネグレクトモデルラットの作成に成功し、幼児期ストレスが疼痛感覚に与える影響についての研究に利用できている。 ・幼児期ストレスが末梢神経に与える影響について新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
・本研究の結果から幼児期ストレスが引き起こす疼痛感覚の変化にATP受容体が関与していることが示唆された。しかし、幼児期ストレスによるATP受容体活性化の機序について十分な検討を行えていない。この疑問点の解決を目的とした実験を行い、得られた結果をすみやかに公開していきたい。 ・平成25年度は幼児期ストレスが口腔顔面領域にあたえる影響について新たな知見を得ることができた。平成26年度は得られた結果を論文などを通じ報告し、多くの研究者と積極的なディスカッションを行っていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
・平成25年度にデータ解析用コンピューターおよびソフトを購入予定であったが、WindowsのOS変更(Windows 8)やWindows XPへのサポート終了の報告を受け、購入を先送りした。 ・研究活動以外の大学での業務のため、学会などへの出張を当初計画していたように行うことができなかった。このため、平成25年度に使用した旅費および学会参加費などの経費が予定した額より少なくなった。 ・データ解析用のコンピューターの老朽化並びにデータ保存増大ため、新たなコンピューターを購入する予定である。また、現在進めている研究活動の継続のために多数の実験動物および専門的な器具を引き続き入手していく予定である。 ・平成26年度は研究成果の発表を積極的に行っていく予定である。このため学会旅費や論文投稿料が必要である。
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