2014 Fiscal Year Research-status Report
幼児期におけるストレスが口腔顔面領域の疼痛感覚に与える影響
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25862036
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
保田 将史 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (60643715)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 幼児期ストレス / 疼痛感覚 / ATP受容体 / 糖質コルチコイド |
Outline of Annual Research Achievements |
幼児期に強いストレスを経験したものは、侵害刺激に対する感受性が増強すると報告されている。本研究ではSprague Dawley系ラットを使用し、出生2日目より雌親ラットと隔離し飼育するネグレクトモデルラットを用いて、幼児期ストレスが侵害受容器に与える影響の解明を目的として実験を行っている。 ネグレクトモデルラットでは、通常飼育したラットと比較して、口髭部皮膚への機械刺激に対する逃避閾値が低下していた。さらに、三叉神経節内の口髭部皮膚支配神経細胞でのATP受容体発現を免疫組織学的に検討を行ったところ、モデルラットにおいて有意な増加が認められた。このATP受容体の増加は、皮膚への機械刺激に対する疼痛の発現に働くことが報告されており、モデルラットの逃避閾値低下に関与することが示唆される。 ストレス時は副腎皮質より糖質コルチコイドが多量に分泌されることが報告されている。雌親ラットとの隔離を行うモデルラットの血中糖質コルチコイド濃度を測定したところ、通常飼育したラットと比較して、血中濃度の増加が認められた。また、出生直後より糖質コルチコイドの投与を行ったラットでは、成獣時に口髭部皮膚への機械刺激に対する逃避閾値の低下が認められた。これらの実験結果より、幼児期の強いストレスが血中内の糖質コルチコイドの分泌量を増加させ、神経節内の侵害受容器の発現を変化させることにより、口髭部皮膚の感覚異常を引き起こしていることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究活動以外の業務(学生教育など)に時間がとられ、新たに得られたデータの数が不足している為と考えられる。今後は効率的にデータの得られる実験方法を考えていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の結果から、幼児期のストレスが末梢神経節内のATP受容体発現の増加に関与していることが示された。しかし、幼児期のストレスが侵害受容器を増加させるメカニズムの解明にはいまだ至っていない。本研究の結果より、疼痛感覚の異常に糖質コルチコイドが関与することが示唆されているため、今後はホルモンと侵害受容器の関係について更なる検討を行い、論文の発表を通じて新たな知見を広く世間に公開していきたい。
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Causes of Carryover |
研究活動以外の業務のため、研究成果の発表を検討していた学会に参加することが出来なかった。このため、旅費および学会参加費に使用する予定であった研究費を次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は研究成果を積極的に発表していきたいと考えている。このため、論文投稿料や学会旅費に繰り越しを行った研究費を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)