2013 Fiscal Year Research-status Report
インスリン抵抗性が歯周炎の進行へ及ぼす影響とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
25862043
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
水谷 幸嗣 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60451910)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 歯周炎 / 肥満 / 糖尿病 |
Research Abstract |
本研究では、歯周組織におけるインスリンシグナリングと、インスリン抵抗性が歯周炎の進行に及ぼす影響について検索することを目的としている。そのために、以下の3点について明らかにする計画を立てている。 1.肥満および糖尿モデル動物の歯肉における内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現の定量と、血流量の測定を行い、両モデルが歯肉の血管内皮細胞の機能障害を引き起こしうるかを評価。 2.肥満および糖尿モデル動物の歯肉に対してインスリン刺激を行い、歯肉のインスリン経路のどの段階に阻害が生じ、インスリン経路にどの程度の阻害が生じるか評価。 3.歯肉におけるインスリン抵抗性の発現があった場合に、阻害因子としてプロテインキナーゼCや酸化ストレスが想定され、それらの関与の検証。 本研究により、未だ十分な解明がなされていない歯周炎と肥満・糖尿病の関連性を説明するメカニズムの一つになりうる。さらに、糖尿病患者における歯周病の悪化や、治療効果の低さが、易感染性によるだけでなく、糖尿合併症の細小血管障害のとしての側面に起因していることがより明確となれば、今後の増加が予測されている糖尿病患者における歯周病の治療に有効な、新たなアプローチの開発につながると考えられる。具体的な方法として、肥満モデルおよび糖尿病モデルの歯肉におけるインスリンシグナルの解析し、同動物モデルに実験的歯周炎を惹起し、その進行をそれぞれの対照群と比較をin vivo にて行う。さらに、in vitroにおいてインスリン抵抗性が骨吸収の促進におよぼすメカニズムを解明する。この計画により、インスリン抵抗性が歯肉および歯槽骨に及ぼす影響を検索し、肥満および糖尿病での歯周炎の進行機序を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病や肥満によるインスリン抵抗性の発現と、それに伴う血管内皮機能不全が起きている可能性や、炎症時に組織破壊が促される可能性について検討する。そのために、肥満モデル動物、糖尿病モデル動物のそれぞれにおいて、1.eNOSの発現の定量と血流量の測定により歯肉の血管内皮細胞の機能障害を引き起こしうるかを評価、2.歯肉に対してインスリン刺激を行い、歯肉のインスリン経路のどの段階に阻害が生じ、インスリン経路にどの程度の阻害が生じるか評価、3.歯肉におけるインスリン抵抗性の発現があった場合に、想定される阻害因子であるプロテインキナーゼCや酸化ストレスの関与の検証を立案している。 現段階として、肥満モデルにおいてはインスリン抵抗性が発現していることが確認できており、より詳細なメカニズムの探索をおこなっている。上記の1,2,3は概ね遂行されており、原著論文としてまとめることが可能な段階にある。 以上のことから、3年間の研究課題の進捗としては、順調と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階までに行ってきた研究により、肥満モデル動物の歯肉にはインスリン抵抗性が生じていることが示されてきており、今後は糖尿病モデル動物において同様の検証を行う予定である。また、実験動物に歯周炎を惹起することで、インスリン抵抗性が歯周炎による組織破壊にどのように関与していくかを検討してゆく。このメカニズムの探索のためには、動物実験だけでなく、in vitroの実験も実施する。培養骨芽細胞を高血糖および低血糖下にて培養し、アスコルビン酸刺激後の石灰化レベルの評価を行う。これにより、骨芽細胞へのインスリン抵抗性の影響を検索し、インスリン抵抗性モデル動物での歯周炎進行のメカニズムを解明する。歯肉上皮細胞や歯肉線維芽細胞を用いた増殖能や炎症に対する反応性の評価も行うことを検討している。 歯肉組織や歯根膜などの歯周組織は比較的血管が豊富な組織であり、肥満などの前糖尿病段階や、糖尿状態によって血管内皮細胞におけるインスリン抵抗性の発現が起こることは十分考えられる。炎症による歯周組織破壊や、歯周治療後の治癒にインスリン抵抗性由来の血管内皮機能不全が影響を与える可能性は高いと推測されるものの、その解析はほとんどなされていない。本研究では、歯肉や歯根膜から血管内皮細胞の単離を試み、単離できた細胞を用いてインスリン抵抗性の影響を観察することも新たに計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
パイロットで行う研究や歯周炎の惹起モデルの検討に時間を要しており、想定されていた動物を使用する本実験が遂行できず、動物実験を次年度に再計画をした。 本年度に実施できなかった動物実験の遂行の費用とする。糖尿病モデル動物を使用した実験、さらに実験的歯周炎モデルを惹起した動物実験と、その組織サンプルの解析に使用予定である。
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