2013 Fiscal Year Research-status Report
ポリコーム遺伝子発現制御に着目した歯周組織構成細胞の多方向制御メカニズムの解明
Project/Area Number |
25862049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩田 倫幸 広島大学, 大学病院, 助教 (30418793)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 歯周組織再生 / 間葉系幹細胞 / ポリコーム遺伝子 / micro RNA / 歯周靭帯細胞 |
Research Abstract |
平成25年度における本研究では、低酸素環境が歯周組織再生に対して重要であり、酸素濃度調整によって低酸素誘導性micro RNA群およびポリコーム遺伝子群が制御されることによる“歯周組織の効果的な歯周組織再生”を最終的な目的として、低酸素環境が分化能を中心とした培養細胞の機能に及ぼす影響を、低酸素誘導因子HIF-1αおよびポリコーム遺伝子群およびmicro RNA群の関与という観点から研究を推進した。 具体的な内容としては、ヒト間葉系幹細胞(MSC)を用いて、①ポリコーム遺伝子発現に対する低酸素およびHIF-1αの影響②micro RNA発現プロファイルに対する低酸素およびHIF-1αの影響 ③低酸素誘導性micro RNAのポリコーム遺伝子発現に対する影響の解析を行なった。 結果として、①HIF-1α誘導条件下において、ポリコーム遺伝子Bmi1とEzh2の発現上昇が24~72時間で認められた。また、HIF-1αの発現抑制を行なうと、両者の発現の促進が抑制された②HIF-1α誘導条件下において、すべての誘導因子刺激において上昇を示したmicro RNAは29種であった。③HIF-1α誘導条件下において誘導されたmicro RNAの中で、miR-628, miR-629およびmiR-210の機能抑制をおこなったところ、HIF-1α誘導条件下におけるポリコーム遺伝子発現の抑制がわずかではあるが認められた。 以上の結果により、MSCのポリコーム遺伝子の発現制御には低酸素で誘導されるHIF-1αおよびmicroRNAが関与していることが明らかとなった。このことにより、MSCにおけるポリコーム遺伝子発現に対して影響を与える因子の同定が可能となり、最終的には、酸素濃度調整を中心としたポリコーム遺伝子群の制御による効果的な歯周組織再生を行なうことにつながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度における研究により、 1.ポリコーム遺伝子発現に対する低酸素およびHIF-1αの影響:MSCを低酸素条件下および低酸素誘導因子HIF-1α誘導因子存在下で培養し、polycomb-repressor complex(PRC)1を構成するBmi1とPRC2を構成するEzh2の2種類のポリコーム遺伝子の発現に対する評価を行なったところ、両者の発現上昇が24~72時間で認められた。さらに、siRNAによってHIF-1αの発現抑制下での低酸素条件下およびHIF-1α誘導因子存在下で培養したところ、両者とも発現の促進が抑制された。 2.Micro RNA発現プロファイルに対する低酸素およびHIF-1αの影響:MSCを低酸素条件下およびHIF-1α誘導因子存在下で24時間培養し、miRNA arrayを用いてmicro RNA発現を網羅的に解析した結果、すべての誘導因子刺激において上昇を示したmicro RNAは29種であった。 3.低酸素誘導性micro RNAのポリコーム遺伝子発現に対する影響:29種のうち、MSC未分化関連マーカー転写因子との関連がみられたmicro RNAと比較し、miR-628, miR-629およびmiR-210に着目した。microRNA inhibitorをMSCにトランスフェクションし、低酸素条件下およびHIF-1A誘導因子存在下で培養すると、negative controlをトランスフェクションしたMSCと比較して、3種類のmicroRNA inhibitorによってポリコーム遺伝子の発現が抑制された。 これらの結果は、交付申請時の平成25年度研究実施計画をほぼ満たしており、また平成26年度研究実施計画の一部に及んでいるため、現在までの達成度はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初はMSCおよびHPL cellsでの検討を行なう予定であったが、研究期間を考慮し、MSCに限定し、以下の推進方策にておこなう。 1.低酸素誘導性micro RNAのポリコーム遺伝子発現に対する影響:低酸素およびHIF-1α誘導因子存在下で発現上昇が認められたmicro RNAのうち、miR-628, miR-629およびmiR-210をトランスフェクションし、ポリコーム遺伝子のmRNA発現を検討する。 2.低酸素誘導性ポリコーム遺伝子の細胞機能に対する影響:低酸素で誘導されるポリコーム遺伝子の発現調整をおこない、MSCの細胞機能に対する影響を検討する。発現調整は強制発現用ウイルスベクターおよびsiRNAにより行ない、MSCの細胞機能について検討する。 3.低酸素誘導性ポリコーム遺伝子により発現が影響されるmicro RNAの同定:MSCにおいて、低酸素で誘導されるポリコーム遺伝子の過剰発現または抑制により変化するmicro RNAを網羅的に解析する。変化が認められたmicro RNAの中から、ポリコーム遺伝子により直接的に発現調整されうるmicro RNAを検討する。 4.ポリコーム遺伝子誘導性micro RNA発現調整による細胞機能に対する影響:ポリコーム遺伝子により影響を受けるmicro RNAの発現を調整し、MSCの細胞機能に関する影響を検討する。Micro RNAの発現調整はmiRNA mimicとinhibitorにより行ない、MSCの細胞機能について検討する。 5.細胞機能に影響を与えるポリコーム遺伝子・micro RNA群の誘導因子の検討:MSCにおいて、上記の結果により得られたポリコーム遺伝子・micro RNA群の発現を制御しうる因子の検討を行なう。低酸素、Nogginの他、トリコスタチンA および種々の成長因子、炎症性サイトカインなどを候補として検討する。
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