2014 Fiscal Year Research-status Report
歯周病由来SAAによる動脈硬化発症機序の分子生物学的アプローチ
Project/Area Number |
25862065
|
Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
西田 英作 愛知学院大学, 歯学部, 助教 (10512519)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 歯周病 / 動脈硬化症 / 血管内皮細胞 / 単球遊走因子 / 単球接着因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに、動脈硬化症易形成マウスであるApoEノックアウトマウスの腹腔内に、歯周病罹患時に上昇する炎症性サイトカインであるIL-6を投与することで擬似的な歯周病を惹起させ、肝臓に炎症性サイトカインを与える研究を行った。その結果、ApoEノックアウトマウスの肝臓組織のmRNA、および末梢血タンパクにおいて急性炎症マーカーである血清アミロイドA(以下SAA)が上昇し、動脈硬化症が増大することを見出した(未発表)。さらにはin vitroにおいて、このSAAのリコンビナントタンパクでヒト大動脈血管内皮細胞を刺激したところ、前述した単球接着分子のmRNA発現上昇を確認した(未発表)。現在まで、動脈硬化症発症機序、特に血管内皮細胞(HAEC)は多種多様な経路が報告されているため、本研究は、歯周病由来による肝臓より産生されたSAAが、どのように血管内皮細胞の単球接着分子に作用しているかにフォーカスを当てる、つまり歯周病由来SAAがトリガーとなる動脈硬化症発症機序を詳細に解明する。 平成26年度はSAA刺激における単球接着因子の遺伝子発現と、SAAレセプターのスクリーニング、さらには接着因子のカスケードの遺伝子発現の発現を行った。前年度に指摘したHAECの細胞播種濃度は1.5x10 5個/wellに設定し直し、SAA濃度は15ug/mlとした。SAA刺激無しHAECををコントロール、刺激後6時間のHAECを実験群としatherosclerosis PCR arrayを行ったところ、SELEの発現が顕著に増加していた。またコントロール群と実験群のSAA receptorの発現を確認したところ、TLR2の発現が著名に増加していた。よって、HAECにSAAを添加することによってTLR2を介してSELEの発現が増強し、血管内皮細胞における動脈硬化症の発症に関わることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度に予定していたHAECと単球の共培養実験は、HAECが初代培養細胞のため条件設定が難しく、現在はHAECの培養実験のみ行っている。 前年度に指摘したHAECの細胞播種濃度はRNAがコンスタントに抽出できなくなってきたため,1.5x10 5個/wellに増加、設定し直した。SAA濃度は実験費用の兼ね合いから15ug/mlとした。SAA刺激無しHAECををコントロール、刺激後6時間のHAECを実験群としatherosclerosis PCR arrayを行ったところ、SELEの発現が顕著に増加していた。SELEは内皮細胞表面の単球がローリングを起こす際に非常に重要な役割を担っており、SAA刺激はHAECにおいて単球の接着因子発現増強していることが明らかになった。 またコントロール群と実験群のSAA receptorの発現をリアルタイムPCRにて確認したところ、TLR2の発現がコントロール群と比較して約20倍の発現増強が確認された。 平成26年度に目標としていたHAECにSAAを添加することによってTLRを介した単球接着因子の発現を確認できたことより、概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度はSAA刺激無しHAECををコントロール、刺激後6時間のHAECを実験群とし、リアルタイムPCR法にてTLR2、TRL4(細胞外、SAAレセプター)、MyD88(細胞質内、TLRの下流)、NF-κB(核内TLRの下流)、TNF-α(核内から細胞質、細胞外へ放出、E-selectinの発現増強因子)、E-selectin(細胞外、単球接着受容体)の遺伝子発現を解析する。 TLR2のSiRNAを外注(ライフテクノロジー株式会社)、作製し、トランジェントトランスフェクションによってSAA刺激されたHAECにおいて作用させ、単球接着分子発現経路で確認した遺伝子群の発現が抑制されているか解析する。
|
Causes of Carryover |
生じた次年度使用額は1万円未満のため、計画通りに実験は進んでいると思われる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額は1万円未満のため、今年度使用額とともに計画通りに通りに使用していく予定である。
|