2014 Fiscal Year Research-status Report
地域在住認知症高齢者への効果的な食事ケア介入の提案
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25862097
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
枝広 あや子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (90433945)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 認知症 / 摂食嚥下障害 / 食事環境 / 食事指導 / 食事支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)食行動支援案のブラッシュアップと調査 前年度作成しブラッシュアップを行った、地域在住高齢者および専門職以外の介護者に向けの「認知症高齢者の自立摂食の維持に向けて」(認知症高齢者の自立摂食支援マニュアル)を用い、摂食・嚥下障害のある歯科訪問診療が必要な認知症高齢者を対象に、複数の介入調査を行った。患者および患者家族、介護支援専門員、訪問看護、訪問介護等の関係職種を対象に、同マニュアルを用いた指導を行い、指導効果および介入効果を検証した。
(2)地域在住認知症高齢者の生活・食事環境調査 環境の影響を強く受ける認知症高齢者の食事に関連したBPSDを把握するために、 環境のアセスメントを含めた生活環境の実態調査を行った。歯科訪問診療が必要な地域在住高齢者および摂食・嚥下障害の認められる認知症高齢者50名を対象として、年齢、性別、基礎疾患、薬剤などの基礎情報、認知症の原因疾患と重症度、認知機能検査、 ADL、介護度、栄養状態、食事に対する関心、身体活動量(IPAQ)、安静時代謝量、食品多様性調査、行動変化、食事関連BPSD、摂食可能な食形態、口腔内の状態、咬合状態等の認知症高齢者本人に関する調査項目のほか、生活環境、家族環境、通所介護や訪問看護、訪問介護等の社会的インフラの活用の程度等についても調査した。統計学的手法を用いて、認知症原因疾患、認知症重症度に加えて環境因子が食事関連BPSDに関与しているかを検討した。実際の食行動支援(食事指導)は上記マニュアルを用い臨床的に必要な指導を行い、効果検証を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
在宅療養中の認知症高齢者で、摂食・嚥下障害に関する指導を必要とする患者に対する歯科訪問診療においては、施設等を対象とした調査と異なり、単位時間に訪問可能な対象者数が限定されているため、小規模な調査となっているが、おおむね順調に進展している。
これまでの我々の研究では、施設や認知症グループホーム、認知症病棟などの専門職種の支援を受けやすい環境で、かつ認知症の神経心理学的症状に比較的理解のある環境下で暮らす認知症高齢者が対象であった。施設やグループホームにおいては食事環境アセスメントや食行動支援等に関する理解もあり、可能な範囲での環境調整等が可能であった。一方、本研究では対象者が在宅療養中の認知症高齢者、および併存疾患の進行と、生活上の環境因子になりうる家族や訪問看護・介護などの関係職種を対象に検討を行う計画であるため、一定の共通認識を得たうえでアセスメントや指導の理解を得て、さらに環境の調整を行う必要があった。 在宅療養中の認知症高齢者を介護する家族に関しては、アンケート調査等を用い、また認知症高齢者の食事環境のアセスメントに関しては、管理栄養士の協力を得て調査した。認知症高齢者の食事に関する検討においては、食行動の他にも代謝性疾患および加齢現象を考慮した代謝量、身体活動量を考慮した消費量も含めた必要栄養量の算出、および食事内容の支援が必要とされていることが明らかとなった。また口腔軟組織疾患や補綴状況、咬合力等の口腔内環境に対する本人及び家族の関心についても、配慮する必要があることが確認された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に引き続き調査を継続し、統計学的手法を用い認知症原因疾患、認知症重症度に加えて家族環境、社会的支援を含む環境因子が食事関連BPSDに関与しているかを検討する。 地域在住認知症高齢者への予備調査の結果、紙面による自立摂食支援マニュアルの提示だけでは理解が不十分であることが懸念された為、自立摂食支援マニュアル改良案では画像を用いた案を検討する。また生活環境によっては同席する介護者の他にも複数の介護職が関与しているケースを考慮し、同席していない介護者に対する情報伝達の手法についても検討を行う。地域在住認知症高齢者に関する生活・食事環境実態調査の結果より、認知症への理解やケア提供者、食事に費やす時間等から介護力について類型化を行う。類型化した介護力に応じた認知症高齢者の食事支援の方法について支援マニュアル案改良案を作成する。 実際に必要とされている、必要栄養量および食事内容、食事の物性に関する工夫や調整等の支援の仕方について、大筋で支援マニュアル案改良案に掲載することを検討する。
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Causes of Carryover |
平成26年度は、平成25年度に行った環境のアセスメントを含めた認知症高齢者の生活環境の実態調査を引き続き行うとともに、環境の影響を強く受ける認知症高齢者の食事に関連したBPSDの検討について、代謝、食事内容や食事形態、栄養必要量の検討、栄養充足状況も含めて検討を行った。対象者は歯科訪問診療が必要な在宅療養中の地域在住高齢者のうち摂食・嚥下障害の認められる認知症高齢者としたが、これまでの高齢者施設等を対象とした調査と異なり、単位時間に訪問可能な対象者数が限定されていること、および対象者は歯科訪問診療を希望されるものに限定したことから、予定より小規模の調査となったため平成26年度の使用額が予定額に到達せず、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
また「認知症高齢者の自立摂食の維持に向けて」(認知症高齢者の自立摂食支援マニュアル)を地域在住高齢者および専門職以外の介護者に向けたブラッシュアップを行い、指導をする過程で、在宅療養中の認知症高齢者に関わる患者家族や、介護支援専門員、訪問看護、訪問介護等の関係職種において、認知症高齢者の食事に関する情報以上に、認知症の疾患知識の情報が必要であることが明らかになった。また一般的な成人の栄養の考え方と認知症高齢者を含む要介護高齢者の栄養の考え方が異なるという点について、わかりやすく解説する必要性があることが明らかになった。 指導効果および介入効果を達成するため、患者家族や関係職種への指導に関しては簡易な紙面マニュアルのほかに、画像などのメディアを用いた情報提供が必要であると考えられ、これらに対し研究費利用を検討している。また同マニュアルに関する意見交換会を検討している。
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[Presentation] 要介護高齢者における精神症状と摂食の関係.2014
Author(s)
枝広あや子, 古賀ゆかり, 山岸春美, 藤田まどか, 宮本敦子, 会沢咲子, 蛯谷明希, 青木一之, 小澤政陽, 小池拓郎, 鈴木章敬, 高草木章, 高田靖, 中島陽州, 松山喜昭, 柳澤達雄, 平野浩彦
Organizer
第25回日本老年歯科医学会学術大会
Place of Presentation
福岡
Year and Date
2014-06-13 – 2014-06-14
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