2013 Fiscal Year Research-status Report
慢性呼吸不全における在宅酸素療法患者の生活機能の評価に対する尺度開発
Project/Area Number |
25862158
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
由雄 緩子 兵庫県立大学, 看護学部, 助教 (60632461)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 慢性看護 / 慢性呼吸不全 / 在宅酸素療法 / ICF / 生活機能 / 尺度 |
Research Abstract |
平成25年度の研究実施計画では,1)生活機能尺度の構造化2)研究対象者の選出3)データ収集の予定であったが,生活機能尺度の構造化にあたり,患者の療養生活環境を取り巻く課題は複雑であり,より実態に即した効果的な評価のためには,入念に尺度を洗練する必要があると判断し,質問紙の作成を丁寧に行っている段階である. 生活機能尺度の構造化については,WHO(2002)の国際生活機能分類:国際障害分類改定版(International Classification of Functioning, Disability and Health, 以下ICF)を概念的枠組みとしているが質問紙の構成のため,研究者の本研究の前段階にあたる研究より症例数を増やして検討し,さらにICFの活用について専門家の教授を受けることとした. 生活機能に影響する現象について,患者の体験と合わせて生活実態を説明した本研究の前段階の研究では,計5名の検討であったものを10名分のデータの分析を行った.具体的には,患者は,身体の機能について〈息が苦しいから,気を散らすことばかりを考える〉こと,活動や参加について〈昔は車を運転してどこでも行けたが,今は何にもできない〉と感じながらも〈介護保険でリースしている車いすは外食を可能にする〉こと等が語れ,ICFの項目を活用することで生活機能の様相が明らかになることが示された. さらに,呼吸器疾患特有のICF core setsを作成したICF Research BranchのProf. Alarcos Ciezaにスーパーバイズを受け,患者の実体験と既存の指標に裏付けされた尺度の構築がされつつある段階である. このように,本研究の目的である慢性呼吸不全における在宅酸素療法患者の生活機能の評価に対する尺度開発に対し,生活体験を含めた構造の確認を行い尺度を構築した状況である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度は本研究の初年度であり,データ収集までを計画していた.生活機能尺度の構造化にあたり,患者の療養生活環境を取り巻く課題への考慮,より実態に即した効果的な評価のため,予定していた方法に加えて前段階の研究を再分析する必要があった.さらに,ICFをもとに概念的枠組みとしており,質問紙の構成のため活用について専門家の教授を受けることとした.当初の計画より,進行がやや遅れ気味ではあるが,対象者が慢性期で身体の状況,社会的状況,個人的な因子など整理すべき要素が多岐にわたる中で,先行研究をより詳しく検討し,同分野を多方面より検討している専門家の意見を聞くことができたことは,結果的に尺度をより実践的に活かせるものとするためには必要不可欠なステップであった.今後,データ収集を開始するが,研究者は本研究の前段階として慢性呼吸不全の患者30名よりデータを収集した実績があり,対象者の選定についてなど,専門医療機関の紹介をもとに実施する予定であり問題ない.よって,今度,速やかにデータ収集に移行し,分析できるように進める必要があるが,尺度は,患者の体験や語られた思いに焦点を当てて構造化されてきており,患者の期待する看護支援を提供するための方法を見出す示唆が得られるデータを提供できる可能性が高い.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は,1)データ収集(期間:5月~12月)2)データの分析(期間:7月~1月)3)生活機能尺度に対し生活体験の反映について検討する(期間:9月~3月)予定で進める計画である. 1)データ収集の研究対象者は,在宅酸素療法を施行し,閉塞性の病態を伴う呼吸不全患者の中で同意が得られた約110名程度とする.リクルートは,専門医療機関へ研究協力依頼書を用いて説明し,当該医療者の協力を得て研究依頼文書にて行う.研究参加の同意を得た後,返信用封筒と共に生活機能尺度を渡す.回収は,郵送か研究協力施設へ回収BOX設置し投函してもらう.回答は外来等の待ち時間を利用して記入してもらう.インタビューは,呼吸器疾患患者であることを考慮し主治医より許可を得て約30分を限度とする. 2)データの分析は,(1)生活機能判定尺度の信頼性と妥当性を検討する.信頼性の解析にはクロンバックα係数を利用し,折半法による確認をする.妥当性の解析には,因子分析として,ピアゾンの積率相関係数とバリマックス回転とによる分析を行う.(2)生活機能に関する聞き取り調査は,得られたデータより逐語録を作成し生活機能に関連する症状や生活の感情と体験について語られたものを意味のまとまりごとに整理する. 3)量的に得られた測定項目と質的に得られたカテゴリーがテーマごとに系統的に比較ができるようマトリックスを作成する.尺度を開発する過程で滑落したパターンや存在しなかった患者の体験による感覚の存在の可能性を確認する. また,研究の分析は,慢性看護学を専門とする兵庫県立大学看護学部野並葉子教授,呼吸器疾患特有のICF core setsを作成したICF Research Branch,University of SouthamptonのProf. Alarcos Ciezaのスーパーバイズを受けながら進めていく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究実施計画の生活機能尺度の構造化において,より実態に即した効果的な評価のために質問紙の作成を含めて段階を追って進めた.このことにより,データ収集のための費用を残しておく必要があった.また,呼吸器疾患特有のICF core setsを作成したICF Research BranchのProf. Alarcos Ciezaにスーパーバイズを受けることとしたが,海外渡航を要し,準備が必要であったと共に十分な時間を確保するために年度を越えて訪問することとなった.そのため,渡航のための旅費や謝金を確保しておく必要があったために次年度に使用額が生じた.これらは研究を進めていくにためには必須の経費であり,次年度の初めに必要となる予定である. データ収集(期間:5月~12月)において,本研究の対象者は,専門医療機関による管理が中心である.対象者の選定もこれらの専門医療機関からの紹介を中心に実施することから,十分な研究対象者を得るには全国規模で実施する必要があり旅費が必要となる.また,データの分析(期間:7月~1月)で,インタビューで得られた音声データは,文字変換作業が必要となるが,研究を効率的に進めるために作業は外部発注することからこの作業費が必要となる.さらに,生活機能尺度に対する生活体験の反映についての検討(期間:9月~3月)では,ICFの国際機能分類の概念を基にした尺度の分析は,海外の講師との会議のための通信費,謝金等が必要となる.以上のような研究課程を踏むにあたり,研究に関する解析ソフトや資料にかかる経費,書類等の印刷費,データ保管整理用のファイルや分析段階に必要な文具類,郵送費等の消耗品の費用として使用予定である.
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