2014 Fiscal Year Research-status Report
産褥早期の自律神経機能評価に基づく抑うつ症状の予防に向けた介入プログラムの効果
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25862178
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
工藤 直子 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00646820)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 褥婦 / 心拍変動バイオフィードバック / エジンバラ産後うつ病調査票 / 産褥早期 / 精神的ストレス / 自律神経機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに得られたデータを見直し、バイオフィードバック群とコントロール群における精神的ストレスに関連している要因について更に分析した。精神的ストレスの評価としてエジンバラ産後うつ病質問票(Edinburgh Postnatal Depression Scale:以下EPDS)を用いた。これは10項目からなる自記式質問票で、合計得点は0点から30点であり、わが国では9点以上を産後うつ病のハイリスク群としてスクリーニングすることに用いられている。 産後1か月におけるEPDSの平均得点は、バイオフィードバック群は2.2±1.6点、コントロール群は5.1±2.0点であり、全体的にもEPDS 得点が9点以上のハイリスク褥婦は2名(3.6%)であった。しかしEPDS得点の経時的な減少はバイオフィードバック群のみに認められた(p<0.001)。その中でもEPDS得点の分布を見てみると、バイオフィードバック群では25名中22名(88.0%)の褥婦はEPDS得点が5点以下であり、コントロール群の30名中25名(83.3%)の褥婦はEPDS得点が4点以上であった。EPDSの項目の中で、不安に関連する3項目(項目3~5)、睡眠困難に関する1項目(項目7)、悲しみや惨めな気持ちに関する1項目(項目8)において両群間で有意な差が認められた。 さらに自律神経機能において、両群間の産後1か月における心拍変動解析値はバイオフィードバック群では有意な心拍数の減少とSDNNの増加が認められた。 したがって、産褥早期より心拍変動バイオフィードバックを励行することは、産褥期の褥婦が抱いている精神的ストレスの中でも特に、不安や睡眠困難を緩和する効果が得られるのではないかと示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点において、産褥期の褥婦の自律神経活動と精神的ストレスについて一般的な経過、ならびに褥婦に対する心拍変動バイオフィードバックの効果がおおむね示唆されつつある。また、英文による投稿もできたため、現在までの達成度はおおむね達成していると考える。今回の分析により、褥婦の精神的ストレスには不安や睡眠状態が大きく影響していることが明らかになったため、今後はその関連因子にも注目し、産褥期における精神的ストレス軽減に向けた看護介入について検証していくこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
当初はマタニティーブルーズ得点の高い褥婦への介入による更なる分析を計画していた。しかし、その対象者の出現頻度は約30%程度であることが明らかとなったため、対象者数を確保するのに時間を要すると考えられる。 一方、近年増加傾向にある高齢初産婦に注目してみると、今回の調査において年齢による自律神経機能の有意差が認められた。高齢初産婦をめぐる身体的・精神的・社会的背景に関する研究が散見されるようになってきているが、それらの背景因子と自律神経機能との関連は未だ明らかとなっていない。中でも高齢初産婦は産後の疲労に影響を受けやすいと言われているため、産後の疲労の程度と精神的ストレスとの関連を中心にデータ収集していくこと計画している。 また、今回、EPDSの項目の中でも、不安や睡眠困難に関する内容が産後の精神的ストレスの増強因子に関連している可能性が示唆されたため、さらにそれらに関連する因子を探索していくこととする。そして、その精神的ストレスの増強因子への看護介入の方向性を検討することを目的にさらにデータの収集を行っていくこととする。
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Causes of Carryover |
次年度は褥婦の精神的ストレス状態のみでなく、自律神経機能や心拍変動バイオフィードバックの影響とともに疲労の程度等も調査していく計画を予定している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
さらなるデータ収集に必要な使用機器の諸経費や対象への謝礼が必要となる。また、学会発表や論文作成に伴う経費として計上した。
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