2016 Fiscal Year Research-status Report

高齢者の排尿機能と自律神経応答の解析

Research Project

Project/Area Number	25862225
Research Institution	Kanto Gakuin University
Principal Investigator	留畑寿美江関東学院大学, 看護学部, 准教授 (40360995)
Project Period (FY)	2013-04-01 – 2018-03-31
Keywords	排尿機能 / 加齢 / 自律神経応答 / 温罨法
Outline of Annual Research Achievements	加齢に伴い、頻尿や尿失禁などの蓄尿障害、尿の排出困難や残尿などの尿排出障害が増えることが知られている。本研究の目的は、高齢女性の排尿機能と自律神経、特に副交感神経の機能を明らかにすることであり、さらに温罨法を用いることで排尿トラブルが軽減されるかを検証することである。これまでの研究から、同等量の尿を排出するための膀胱収縮の強さと尿排出時間に若年女性と高齢女性では異なり、高齢女性は、尿を多量に貯留することで膀胱平滑筋が伸展し、その膀胱平滑筋の伸展の大きさが膀胱の収縮力を高めることで排尿量を多くさせていた。一方、若年女性では平均尿流率は膀胱容量に関わらず一定の値をとり、尿排出時間を延長させて尿排出していた。このように詳細の排尿データをみると高齢者と若年者の機能の違いが明らかになった。また、膀胱を収縮させるには副交感神経の関与がある。若年女性は排尿開始直後から排尿終了時までの心拍数は蓄尿時の心拍数が減少し、排尿終了後にすみやかに排尿前の心拍数に戻ることがわかった。高齢女性は若年者に比べ最大尿流率に達するまでの所要時間が遅く、最大尿流率に至ってから排尿終了までに若年者に比べ長時間（秒）を有する傾向がみられた。高齢女性には排尿開始から終了まで心拍変動がほぼみられない者が含まれていた。このことは、最大尿流率に至る時点から排尿完了までの時間が副交感神経との関連がある可能性が考えられる。新たに、数時間の腹部に温熱シートを貼用したあとの排尿機能を調査したところ、最大尿流率に達するまでに要する時間が遷延している高齢女性は温熱シート貼用によって、最大尿流率に達するまでの経過時間が短縮し、さらに尿排出時間が短縮する者がいることがわかった。腹部を温めることで温かいと感じる感覚や間接的に温まった膀胱平滑筋が膀胱収縮性を高める可能性が考えられる。現在、この調査を対象者を増やし継続できるように勧めている。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 4: Progress in research has been delayed. Reason 研究に必須である血流計とパソコンに不具合が生じ、研究の遂行が滞る事態が生じた。機器の修理に時間を要したため、予定時期に調査を行えず、研究計画に大幅な変更を余儀なくされた。また、研究代表者の所属学部は創設4年目のため、初めて全学年が揃い、それに伴い教育時間数の増加および臨地実習の教育強化等に多大な時間を要したため、本年度内での調査の完了は難しく、次年度まで事業期間が延長されることを切望している。
Strategy for Future Research Activity	これまでの調査から、自然排尿時における高齢女性の排尿機能の特徴の探索と、膀胱収縮と自律神経との関連を排尿時に排尿機能と心電図を同時に計測することで関連性を探索してきた。最大尿流率や平均尿流率、膀胱容量、尿排出時間を含む排尿機能を示す各パラメータと心拍数の変動を関連をさらに詳細な分析を行う必要がある。また、腹部を温めることで最大尿流率に達するまでに要する時間が遷延している高齢女性は温熱シート貼用後の排尿において、最大尿流率に達するまでの経過時間が短縮し、さらに尿排出時間が短縮する者がいることが若干名の高齢女性に含まれていたことから、今後、被験者を増やし、排尿機能と心電図の計測と分析を進め、尿排出機能の改善に腹部を温めることが効果があるかどうかを検証していく。
Causes of Carryover	今年度は、事業の最終年としてこれまでの高齢者の排尿機能と同時に計測した心拍数の反応から得られた加齢による排尿機能の変化を非侵襲的かつ簡易的におおよその状態を推察することができる結果を受けて、温罨法が与える排尿トラブルの改善を期待する調査を行う予定であった。しかし、研究に必須である血流計とパソコンに不具合が生じ、研究の遂行が滞る事態が生じた。さらに、研究代表者の所属学部は創設4年目のため、初めて全学年が揃い、それに伴い教育時間数の増加および臨地実習の教育強化等に多大な時間を要したため、研究に取り組む時間が非常に減少したため、本年度内での調査の完了は難しくなった。
Expenditure Plan for Carryover Budget	平成28年度に計画していた高齢女性への温罨法を実施し、排尿機能と排尿時の自律神経応答の変化を自然排尿条件下で調査を行う。同時に、腹部を温めることでの排尿トラブルの軽減（尿失禁、排尿回数の変化、残尿感の減退など）を排尿日誌とインタビューを用いて調査する。被験者となる高齢女性は60歳代とし、意思表示および日常生活を自立して営むことができる者とし、15名を予定している。研究発表は、国際学会を1件、さらにこれまでの研究結果を論文として投稿する予定である。