Research Abstract |
本研究は,地域で生活する精神障害者に,服薬管理を中心としたセルフマネジメントをサポートする遠隔看護支援システムを構築し,本システムの有効性を検証することを目的とする. 今年度は地域で生活する精神障害者とその家族,訪問看護師における服薬および服薬支援に関する現状を明らかにするため,予備調査を行った. 精神障害者およびその家族は服薬を継続するにあたり,認知機能障害や生活能力の障害に伴い,服薬拒否,服用忘れ,薬の紛失など服薬に関する問題を抱えており,専門職における服薬支援の必要性が明らかとなった.精神障害者への訪問看護支援は再入院の予防や,入院期間の短縮,生活環境の改善など有効性は示されているものの,利用者の訪問間隔は平均2週間に一度,訪問看護ケア時間は平均46.8分と,訪問看護師が毎回の服薬確認を行うことは困難な現状も明らかとなった.一方,訪問看護利用者は,金銭的問題や対人関係を苦手とする傾向から,訪問を歓迎しない利用者や,訪問を突然拒否する利用者も存在していた.また訪問看護師が訪問時,毎回残薬確認を行うことに対し,監視されている,信用されていないといった否定的感情を抱いているケースも存在していた.これらのことより,入院医療から地域生活支援へと精神科医療政策の転換が図られているわが国では,利用者のニーズを反映した遠隔看護支援システムの構築が精神障害者を地域でサポートするうえで非常に効果的な支援となりうることが明らかとなった. また並行して現在訪問看護ステーションなど遠隔で服薬支援を行うためのシステムを検討している.服薬支援ツールを開発する企業への訪問,検討会議を通して,導入,運用のしやすさ,個人情報保護等の利用者の安全性を考慮し,遠隔での支援システムの試行を繰り返し行っている.今後試作したシステムを元にさらに当事者や家族,支援者のニーズを反映したシステムへと発展させていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備調査により,地域で生活する精神障害者,家族,および支援者の現状および遠隔看護支援システムの必要性は明らかとなった.次年度は,本システムを構築するにあたり,精神障害者とその家族,支援者のより詳細なニーズを抽出する必要がある.次年度開始予定であった、遠隔看護支援システムの検討は今年度から着手しており、今後試作したシステムを元に,当事者や家族,支援者のニーズを反映したシステムへと発展させる.よっておおむね順調に進展していると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
試作した遠隔看護支援システムを元に,精神障害者やその家族,支援者のニーズを抽出し,それらを反映したシステムへと発展させる. 本システムを今後暫定的に試行するため,システムの安全性の確認とスタッフとの打ち合わせを行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は,精神障害者とその家族,支援者の現状を把握するための予備調査と並行して,次年度に実施予定の遠隔看護支援システムの構築に着手したため,遠隔看護支援システムの詳細なニーズ調査にまでは至らなかった. 直接経費:212万円【物品費:95万円】タブレット端末(63万円:7万×9台円),服薬支援ツールの開発に要する機材費(17万円),消耗品(10万円),図書・文献資料(5万円)【旅費:37万円】視察旅費(5万円),成果発表旅費(27万円),検討会議旅費(5万円)【人件費・謝金:48万円】システムの設計・開発・保守費等【その他:32万円】ipadの通信費・サーバのレンタル費等
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