2013 Fiscal Year Research-status Report
極長鎖脂肪酸合成の多様性の分子基盤および筋分化メカニズムの解明
Project/Area Number |
25870001
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大野 祐介 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (50611498)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 極長鎖脂肪酸 / ミオパチー / 多価不飽和脂肪酸 / 3-ヒドロキシアシルCoA脱水酵素 |
Research Abstract |
極長鎖脂肪酸(炭素数22以上の脂肪酸)は長鎖脂肪酸に比べ生体内での存在量は非常に微量であるにも関わらず,長鎖脂肪酸では代替できない様々な生理機能に関与している。申請者らは長年不明であった極長鎖脂肪酸の合成過程における脱水反応を触媒する酵素としてHACDファミリー(HACD1-4)を同定し,その中でもHACD1は筋分化に重要であること,HACD1遺伝子変異がミオパチー発症に関与していることをこれまでに見出している。しかし,HACD1がどのような極長鎖脂肪酸の合成に関わり,合成された極長鎖脂肪酸がどのようなメカニズムで機能しているかは明らかになっていない。そこで本研究ではHACDファミリーの基質特異性解析による極長鎖脂肪酸合成機構の解明および筋分化,ミオパチー発症に関わる極長鎖脂肪酸の同定とその作用機構の解明を目的に研究を遂行する。当該年度では,まずHacd1ノックアウトマウスの脂肪酸組成の網羅的解析を行なった。その結果,Hacd1ノックアウトマウスでは飽和および一価不飽和脂肪酸量に差は見られなかったが,種々の多価不飽和脂肪酸(C18:3, C20:3, C20:4, C20:5 C22:4, C22:5, C24:5)量が有意に減少していることを明らかにした。また,先天性ミオパチー患者の遺伝子解析によりHACD1遺伝子のナンセンス変異(744番目のシトシンがアデニンに置換)を発見し,転写された変異型 mRNA は分解により野生型に比べ減少していること, 変異型 HACD1 は脱水活性を示さないことを示した。これまでHacd1とミオパチーとの関連性はマウス,イヌを用いた遺伝子解析でのみ証明されていたが,本研究により初めてヒトにおいてもHacd1変異が先天的ミオパチーの原因となることが証明された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Hacd1ノックアウトマウスにおける筋力減少や運動能低下といった表現型を生じる分子メカニズムを解明するためには,Hacd1が合成する極長鎖脂肪酸を同定することが大きな目標であった。Hacd1の基質特異性はこれまで明らかになっていなかったが,Hacd1ノックアウトマウスの骨格筋において極長鎖多価不飽和脂肪酸に違いを見出すことができたことは,本研究で初めて得られた新たな知見であり,筋肉の機能維持およびミオパチー発症の分子メカニズム解明への大きな突破口となると考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度での脂肪酸組成解析手法は,細胞内のグリセロリン脂質や中性脂質などに結合している脂肪酸の総量を解析する手法であったため,細胞内におけるどの分子種の脂質において極長鎖多価不飽和脂肪酸に違いが生じているかについての解明までは至っていない。多価不飽和脂肪酸は,ホスファチジルイノシトールやホスファチジルエタノールアミンなどに比較的多く見られるため,これらのグリセロリン脂質の脂肪酸組成の解析を行なう。また,Hacd1の多価不飽和脂肪酸への活性を放射性同位体を用いたin vitroのアッセイ系により解析する。極長鎖多価不飽和脂肪酸が筋肉の形成,機能維持にどのように関与するかを明らかにするため,様々な週齢のマウスにおける筋肉の脂質組成解析や,マウス筋肉から採取した初代培養細胞を用いて,細胞の分化や融合,増殖への多価不飽和脂肪酸の関与を解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度の解析は,質量分析計を用いたマウス組織の脂質解析が中心となったため,放射性同位体を用いた解析の一部を次年度へ変更した。それに伴い高額な放射性同位体試薬にかかる物品費を次年度への繰り越した。また,初年度に予定していた国際会議への参加も次年度に変更したため,次年度への旅費の繰り越しも一部行なった。 初年度と同様に,物品費,旅費,その他の経費に使用する。研究計画の変更により初年度に予定していた放射性同位体を用いた解析を行なうため,初年度繰り越した物品費で放射性同位体を購入し,次年度に予定していた物品費に関しては計画通り実験試薬,消耗品を購入する。旅費に関しては,国際学会参加を初年度に計画していたが,次年度に繰り越したため,繰り越し分で国際学会参加および当初の次年度計画分は国内学会参加費として使用する。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Congenital myopathy is caused by mutation of HACD1.2013
Author(s)
Muhammad E, Reish O, Ohno Y, Scheetz T, DeLuca A, Searby C, Regev M, Benyamini L, Fellig Y, Kihara A, Sheffield VC, Parvari R
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Journal Title
Human Molecular Genetics
Volume: 22
Pages: 5229-5236
DOI
Peer Reviewed
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