2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
地田 徹朗 北海道大学, スラブ研究センター, 学術研究員 (10612012)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アラル海 / ソ連史 / 環境史 / 中央アジア / カザフスタン / 地域研究 / 災害 |
Research Abstract |
平成25年度は、小アラル海を中心とするカザフスタン領アラル海での漁業の実態と、アラル海危機が1970年代後半に最終的に災害化してからの、小アラル海漁業に対するソ連中央および共和国当局による初期対応について主に研究し、その成果を論文の形でまとめた。アラル海漁業の実態については『アジ研 ワールド・トレンド』誌に論考を掲載し、アラル海災害への初期対応についての論文は、平成26年度中に共著として出版予定である。またこれまでの研究代表者が行ってきた研究による知見に、さらに科研費研究で得た新たな知見を加味することで、アラル海の過去・現在・未来に関する論考を『境界研究』誌に執筆した。 また、同じカザフスタンのバルハシ湖流域の環境史について、本研究の主要研究課題の一つである「自然改造」理念との関連からまとめた英語論文をCahiers du monde russe誌に投稿し、掲載許可をすでに受けている。 学会報告は、国内学会で1度、国際学会で3度(うち1回はイギリス)行った。これら学会では、アラル海やバルハシ湖流域のソ連時代の環境史について報告をし、貴重なコメントを得た。 国外調査は11月下旬から12月上旬にかけてカザフスタン共和国アルマトゥ市に赴き、カザフスタン共和国中央国立公文書館、カザフスタン共和国国立図書館にて調査を実施した。公文書館では1970年代のカザフ共和国漁業省の文書を閲覧した。また、数度にわたり、国内出張を行い、関連研究会に出席すると共に、東京海洋大学附属図書館に所蔵のある、1970-80年代を中心とするソ連時代の『漁業(Rybnoe khoziaistvo)』誌や『漁撈と養魚(rybolovstvo i rybovodstvo)』誌の閲覧および複写を行った。 以上から、平成25年度は、アラル海災害の実態と、その漁業への影響、ソ連当局による漁業への初期対応について概ね明らかにすることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度交付申請書に記載した、アラル海漁業の実態およびアラル海生態危機とソ連の対応については概ね明らかにすることができたと考えている。アラル海流域での灌漑の実態については、過去の研究代表者による研究や他の先行研究により概ね明らかになっている。しかし、所属する研究機関の本務の都合上、長期の研究調査に赴くことがかなわず、灌漑・漁業をめぐる制度の問題にまで切り込むことができなかった。ただし、アラル海漁業をめぐる制度については、公文書の所在についてはすでに把握できている。また、アラリスクおよび小アラル海周辺漁村でのフィールドワーク調査の実施もかなわなかった。これらは平成26年度以降の課題となる。以上から、「おおむね順調に進展している」との自己評価である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、フィールドワークによる聞き取り調査と公文書資料の調査を並行して行いたいと考えている。具体的には、秋季に小アラル海およびその周辺地域での聞き取り調査を行い、カザフスタン共和国中央国立公文書館での公文書調査を継続することで、アラル海災害の初期対応について情報をブラッシュアップしたい。 また、冬季にモスクワで公文書調査(ロシア国立経済文書館)を行い、漁業・灌漑をめぐる制度や中央アジア諸国間の水資源配分の問題について文書を収集し、学術論文を執筆する目処を立てたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の本務の都合上、フィールドワークを伴う国外出張を科研費支弁で行うことができなかった。その分、雑誌資料調査や研究会出席を目的とした国内出張を複数回行い、そのために国外出張を行うための資金を一部充当したが、23万円ほどの残金が出た。 今年度のフィールド調査の旅費のために残金を使用することとする。
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Research Products
(7 results)