2013 Fiscal Year Research-status Report
ライフラインLCC低減への地盤工学的アプローチ:「柔な」複合型地盤改良と長期予測
Project/Area Number |
25870007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
西村 聡 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70470127)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 地盤沈下 / パイプライン / 泥炭 |
Research Abstract |
札幌市をはじめとする泥炭地において、地表近くに設けたガスなどの埋設管が長期的に沈下を被り、維持管理に多大なコストが生じている現状を踏まえ、その沈下のメカニズムを検証した。有効単位体積重量が非常に小さい泥炭を掘削し、管の埋設後に砂で埋め戻しを行うことが沈下の大きな要因と疑われたため、泥炭特有の圧密変形特性とこの載荷メカニズムがどのように関連して長期沈下・地盤変形を引き起こすかを、低縮尺長期重力場模型実験を実施して調査した。PIVによる画像解析の結果、埋め戻し直下の泥炭は、非常に限られた側方流動を示し、あたかも一次元圧密であるかのように圧縮されることが確認され、埋め戻し部位の大きさに対し、地盤変形がどの程度の範囲に及ぶかが観察された。観測された圧密沈下は、通常の圧密試験から得られる圧密係数を用いた一次元圧密理論から推定されるよりもはるかに長い時間をかけて進んでいるように見られ、現時点ではまだ明確な二次圧密の領域に至っているようには見えず、圧縮進行の全体過程については今後明らかにしていく予定である。圧密試験からの推定と観察の乖離は、問題の二次元性に加え、圧密係数が圧密進行に伴い大きく変化するという泥炭特有の特性に由来すると推測されるため、今後は大型圧密試験装置を用いて、より正確に泥炭の圧密特性を把握する。一方で、長期低圧クリープ三軸試験装置の整備・試験運転が完了し、安定して二自由度(圧縮-せん断)クリープ試験を行えるようになり、応力比を変えた、より一般的な泥炭の長期変形挙動を測定中である。これらより、泥炭中の管状構造物沈下について定性的な知見は半ば得られたことになり、今後は数値解析を用いて定量的にその長期変化と対策効果の評価に取り組んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書では研究目的として、①地盤物性の面からの長期沈下メカニズムの解明、②幾何学問題としての変形メカニズムの検証、③新しい地盤改良形式の提案、④改良の長期沈下に対する効果の予測、の4点を挙げ、平成25年度はこれらのうち①と②を中心として、変形メカニズム観察のための長期模型試験と、泥炭の低有効応力状態での挙動の把握・数値モデル化を予定した。このうち、模型試験に関しては装置の作製とともにPIV画像解析ソフトウェアの開発などツールの準備が早々に完了し、試験も実施されたが、泥炭挙動の収束が想定以上の長期間に渡っており、予定したケース数を計画通りに完了するのが困難な状況にある。泥炭の変形特性を把握するための長期三軸クリープ試験は、年度半ばより開始したものの、載荷制御精度の問題などから改良が必要とされ、満足のいく実験結果が得られるまでに想定以上の時間がかかった。また模型実験と同様に、泥炭の長期挙動の把握は小規模試料を用いても相当の長期試験が必要であることがわかり、本質的なケースに絞って実施することを検討している。以上から、着実に研究は進展しているものの、数値モデル化などの作業は平成26年度に先送りせざるを得ず、予定よりおよそ4~5カ月ほど進展が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方については、基本的には交付申請書に記した計画に基づいて進めていくが、上記の通り進捗が当初の予定より遅れている現状を踏まえて、着目する問題のうち、より本質的な部分に絞って検討を進めていく。模型実験による管状構造物の沈下メカニズムについては、縦断方向の不均質性による三次元的変形についての検討の優先度を下げ、まず横断面内での二次元的挙動の解明と、その対策工の検討を年度内に完了することを目標とする。これと同時に、現在進めている長期三軸クリープ試験の結果を受けて、数値モデル化を行い、数値解析で問題の再現とその長期挙動予測を行う。モデル化については、最終的にはより一般的な形で泥炭の時間依存変形特性を記述することを目標とするが、限られた時間の中で工学的に有意義なものをまず提示するため、本研究で直接扱っている問題である、死荷重によるクリープ変形を特に念頭においた簡素なものをまず定式化することから進めていく。以上をとりまとめ、2カ年の成果として提示する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
おおむね予定通りの支出であったが、出張費の削減などにより、予定よりわずかながら全体支出を削減することができた。その余剰分は、次年度の活動に充てるのが研究活動上有益であると判断した。 繰越額は非常にわずかであり、消耗品などに支出する。
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Research Products
(2 results)