2014 Fiscal Year Research-status Report
冗長アクチュエータ系の自己最適化によるスケーラビリティ獲得の研究
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25870010
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
星野 洋平 北見工業大学, 工学部, 准教授 (90374579)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 機械力学・制御 / 大規模スケーラブル除振システム / 動的最適出力分配 |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究の目的は、冗長性を有するアクティブ除振装置を連続的に稼動しながら必要に応じてアクチュエータの数を増減する能力つまりスケーラビリティを獲得し、劣化したアクチュエータを交換しながら連続的に運用したり、除振台が支持する負荷に合わせてアクチュエータの数を増減することを可能とし、さらに自動的に各アクチュエータに対して最適に負荷を分散する方法を構築することである。平成25年度に構築した適切な出力分配割合を自動的に導出する基礎的な動的最適出力分配法はスケーラビリティを獲得するための基礎的な手法として高い汎用性と有効性を持つことが分かったため、平成27年度に実施予定であった、スケーラビリティの獲得手法の構築を前倒しし、平成26年度には8個のアクチュエータを有する大規模な除振装置を稼動したままアクチュエータを増減する方法の研究を遂行した。これらを実現するために、アクチュエータの出力分配割合を滑らかに更新し、加えて制御系を稼働したまま振動などの不安定な挙動を生じることなくアクチュエータ数を滑らかに増減する方法を構築した。ここで得られた成果は、この研究の最終目標であるスケーラビリティの獲得のために最も重要であり根幹をなす成果である。加えて、アクチュエータの破損を自己検出し、自動的に他のアクチュエータに負荷を引き継ぐ方法についても本年度に研究を遂行し、制御性能を維持したまま破損したアクチュエータを取り除く方法についての研究成果が得られた。これらの成果は、当該研究分野の国際会議である2014年8月の国際会議Movic 2014、日本機械学会計測制御部門主催のD&D 2014で講演発表を行った。また上述のシステム稼働中のアクチュエータ増減手法に関する論文を投稿して採択され、日本機械学会の英文ジャーナルMechanical Engineering Journalへの掲載が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度には、除振台実験装置を構築して平成25年度で得られた基礎的な動的最適出力分配法の実証実験を行う事を計画していたが、実験装置を構築して設置するための十分なスペースを確保できなかったため、研究代表者の前所属の北海道大学に設置されている除振台実験装置を移設することができなかった。そのため、平成27年度に実験を行う計画に変更し、平成27年度に計画していたアクティブ除振台のスケーラビリティ獲得のためのアルゴリズムの構築を、計算機シミュレーションを用いて平成26年度に前倒して実施した。これらを実現するためにまず、アクチュエータの出力分配割合を滑らかに更新する方法、ならびに、システムを稼働したままアクチュエータ数を滑らかに増減する方法を構築した。得られた成果は、本研究課題の最終目標のスケーラビリティの獲得のための根幹をなす成果である。さらに、アクチュエータの破損を自己検出し、自動的に他のアクチュエータに負荷を引き継ぐ方法の構築についても、計画していた平成27年度から前倒しで平成26年度に遂行し、アクチュエータ破損時に自動的に破損アクチュエータを検出して取り除きアクチュエータ数を動的に減少する方法についても研究成果が得られた。したがって、アルゴリズム構築の観点からは、計画を大きく上回る達成度が得られたと言える。しかしながら、大規模な除振台の実験環境の整備が遅れており、平成27年度には実証実験を行う必要がある。平成26年度末の3月には除振台実験装置の移設の準備ならびに手続きを進行中であり、平成27年度早期には移設作業が完了して実験環境の整備を完了する見込みである。これにより大規模システムの実験が可能となる見込みであり、当初平成26年度に予定していた実験による実証試験、実験が必要な研究が可能となる。以上が「概ね順調に進展している」と評価した理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度前半中に除振台実験装置を研究代表者前所属の北海道大学から移設して改修を行いアクチュエータ数が8脚の大規模除振台実験装置を完成させる。そして、はじめに、平成25年度に構築したアクチュエータ位置の推定法ならびに自己最適化法の妥当性ならびに精度の実験的な検証を行う。そして、アクチュエータ数を減少させる場合、そして、平成26年度に構築したアクチュエータ数を増加させる方法、さらにアクチュエータ数を増減して交換する方法について、得られた手法の実証実験を行い、最終的には、冗長性を有するアクティブ除振装置を稼動しながら、必要に応じてアクチュエータの数を連続的に増減することを可能とするスケーラビリティ獲得法の実証実験を遂行する。すべての研究計画の中で残された課題の研究にも着手する。つまり各アクチュエータ動作の位相差を計測し、各アクチュエータの同期手法の構築を遂行する。位相の遅れは制御系の制御周期に対して、大変小さいことが予想されるため、全チャンネルを同時計測が可能なAD変換器か、加速度アンプを用いた計測を行い、周波数伝達関数を計算することにより、位相差を計算する。そして、平成27年度後半は、本研究課題で構築したアクチュエータ位置の同定手法、自己最適化法を基にしたアクチュエータの増減手法、故障アクチュエータ検出法を基にした故障アクチュエータ補償手法、アクチュエータ間の同期手法をすべて適用して、本研究課題であるスケーラビリティ獲得手法の総合的な実証実験を行う。得られた成果を国際会議で発表するだけでなく主要な学術誌に論文として投稿して研究成果を公表する。最後に研究成果を総括する。
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Causes of Carryover |
平成26年度には、その他項目として印刷費ならびに論文投稿料を計上していたが、投稿した論文の採択が平成27年度となったため次年度使用額の一部が発生した。さらに、研究代表者前所属の北海道大学研究室と話し合いの結果、平成26年度終盤になって現所属の北見工業大学に除振台実験装置を移設することが可能となったため、平成26年度の消耗品等への予算計上分を、平成27年度に除振台実験装置の移設費用ならびに、大規模除振台実験装置として改修を行うための計測器等の設備費ならびに機械・電子部品等の消耗品を購入するための予算として計画を変更したため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度配分額の次年度使用計画について、平成26年度に投稿していた論文が平成27年度に採択となったため、論文掲載料として、平成26年度未使用分の一部を割り当てる計画である。また、北海道大学から北見工業大学へ、除振台実験装置を移設するための輸送費として使用する計画である。運送費用については、搬出・搬入の状況の確認を済ませ、輸送費用の見積額は190千円であった。また除振台実験装置にはおよそ500kgの重量物が含まれるため、移設後の実験装置の構築と、装置の改修・維持・管理のために門型クレーン一式の購入を検討している。その他の当初に計画されていた配分額はそのまま計画を進める予定である。
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Research Products
(5 results)