2015 Fiscal Year Annual Research Report
放射線被ばくが雄性生殖細胞に及ぼす遺伝的リスクの評価
Project/Area Number |
25870027
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
渡部 浩之 旭川医科大学, 医学部, 助教 (90608621)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 放射線 / 精子 / DNA損傷 / 受精 |
Outline of Annual Research Achievements |
幼若期マウスの雄性生殖細胞における放射線感受性を調べるために、妊娠14.5-19.5日目の胎仔、生後2-7日目および9-14日目の新生仔に400 mGy/22 h/dayの線量率で集積線量が2 Gyとなるまで(計5日間)γ線を緩照射した。その後、これらのマウス(オス)を10週齢になるまで飼養し、精子形成能を評価した。また回収した精子を体外受精のために凍結保存し、受精能・精子染色体正常性を評価した。 胎仔期・新生仔期にγ線を照射したマウスの10週齢時の体重は28.4-30.4 gであり、非照射対照群(30.3 g)と差はなかった。一方で精巣重量は、妊娠14.5-19.5日にガンマ線を照射した群で0.072 gとなり、新生仔期に照射した群(0.180-0.211 g)・非照射対照群(0.211 g)と比較して有意に低くなった。精巣最大径の部分における精細管数を測定したところ、妊娠14.5-19.5日にγ線を照射した群は、新生仔期に照射した群・非照射対照群と比較して有意に低い値を示した。 γ線照射による遺伝的ダメージを解析するために、一次精母細胞の染色体標本を作製した。生後2-7日目の新生仔期にγ線を照射したとき、非照射対照群と比較して一次精母細胞の染色体異常が有意に増加した(0.83% vs. 0%)。一方で、妊娠14.5-19.5日目の胎仔(0.13%)および生後9-14日目の新生仔期(0.42%)への照射では、染色体異常の増加は見られなかった。 また凍結精子を体外受精に用いたところ、妊娠14.5-19.5日目の胎仔にγ線を照射したとき、非照射対照群・新生仔期に照射した群と比較して、受精率が大きく低下した(45.4% vs. 93.5-99.4%)。しかし、どの時期にγ線を照射したとしても精子染色体に異常は見られなかった。 以上の結果から、胎仔期へのγ線照射は400 mGy/22 h/dayという低線量率であっても精巣の発育を大きく損なわせ、受精能力にも影響することが示唆された。一方で、精子には遺伝的ダメージが蓄積していないことが明らかとなった。
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