2014 Fiscal Year Research-status Report
下垂体ホルモンの産生・分泌制御におけるエリスロポイエチンの役割
Project/Area Number |
25870035
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山田 美鈴(山口美鈴) 岩手大学, 農学部, 准教授 (10414012)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エリスロポイエチン / 神経内分泌 / 体液ホメオスタシス |
Outline of Annual Research Achievements |
高地など低酸素圧環境下では、血中酸素分圧低下のみならず、時に体液ホメオスタシスにも影響を及ぼし、脳浮腫や高浸透圧血症など重篤な障害を引き起こすことがある。腎臓は、中枢神経内分泌系および循環器系と連携して、水分調節や代謝産物の再吸収・排泄の調節および血圧調節を行っている。本研究では、体液調節を行う泌尿器系と酸素を常時多く必要とする中枢神経系がホルモンを介して互いに影響を及ぼす可能性があると考え、低酸素時に中枢神経系と泌尿器系の両方で発現が増加するホルモンとして、造血作用を持つエリスロポイエチン(EPO)に着目している。EPOは、腎臓に加えて中枢神経系での発現も報告されており、虚血時のニューロン保護作用に関与していることが示唆されている。中枢神経系の内分泌神経系で発現するEPOは、持続的低酸素刺激によりEPO-mRNA発現が強まり、特に神経性下垂体では定常時から発現が持続している。EPOは、細胞膜上に発現するEPO受容体に結合することにより、その細胞へのシグナル伝達を開始する。神経性下垂体において、EPO受容体の発現についても検索した結果、定常時からのmRNA発現を確認した。また、組織化学的手法を用いてEPO受容体の発現細胞を同定し、神経性下垂体におけるEPOの作用点を明らかにすることも試みており、現在、毛細血管周囲および毛細血管内皮細胞と考えられる限局的な部位に陽性反応の可能性を認めている。今後、血管内皮細胞など各種細胞マーカーを利用した多重免疫染色法を用いて発現細胞の確定を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養実験対象とする細胞の種類を明確にするためにも、視床下部-下垂体系におけるEPO産生細胞とEPO受容体発現細胞の明確な特定は極めて重要であるため、重点的に進めている。ハウスキーピング遺伝子に比べて発現が少ないEPO遺伝子については、腎臓と同様に産生細胞の同定が難しいことが予測されるので、高感度の検出方法を検討している。EPO受容体発現細胞の同定については、免疫染色によりタンパク質レベルでの発現部位および発現細胞が絞られつつあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
視床下部や下垂体等の標的部位の臓器が小さいため、実験に必要なRNAやタンパク抽出が通常の臓器より困難であり、さらなる抽出・濃縮方法の工夫が必要である。そのため、臓器を破砕せずにより広範囲な視野での解析が可能となる組織化学的解析手法を活用し、視床下部-下垂体系におけるEPO産生細胞とEPO受容体発現細胞の明確な特定を引き続き重点的に進める予定である。また、臓器に合わせた組織固定法および高感度検出法を工夫することも検討している。
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