2014 Fiscal Year Research-status Report
口腔がんの発症に係るニコチン性アセチルコリンレセプターに関する分子基盤の解明
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25870047
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
西岡 貴志 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50641875)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ニコチン / 口腔がん / 喫煙 |
Outline of Annual Research Achievements |
タバコには様々な化学物質が含まれ、喫煙は、口腔がんのリスクファクターの一つとして挙げられている。タバコの構成主成分の一つであるニコチンは、以前より、その強い依存性に焦点が当てられる研究が多くなされてきた。その背景もあり、ニコチンとがんとの関連についてはあまり多く研究がなされておらずこれまで直接的に発がんに影響することは証明されていないが、本研究では、口腔がん細胞において、ニコチンによる刺激が細胞増殖の促進、細胞の分裂促進に関連するシグナル(Epidermal Growth Factor Receptor : EGFR)を活性化することを見出した。下流シグナルのさらなる探索は必要であるが、ニコチンの刺激により、EGFRがリン酸化されることを確認しており、増殖促進にニコチンが関与していることがわかった。喫煙による発がんの危険性は、タバコ中の発がん物質を含む有害物質等の化学物質によるものが主と考えられるが、ニコチンは細胞の働きを活性化させ、相乗的に作用していると考察される。また、血清飢餓状態で培養した口腔がん細胞に対し、①ニコチン、②無刺激、③10%FBSに分け、細胞増殖試薬であるWST-1で解析を行ったところ、数時間後にはコントロールとして用いた10%FBSには及ばないものの、ニコチン刺激のグループは、無刺激の細胞に比べ高い細胞増殖傾向を示した。この結果からもニコチンによる細胞増殖能が明らかとなった。
以上より、ニコチンはこれまで広く知られているその強い依存性だけでなく、がんの増殖促進においても相乗的に作用する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニコチンによる細胞増殖を示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回まで得られた結果に加え、EGFRの下流シグナルに対する発現確認を行う。今後はこれまでのデータの解析が主な作業となると思われるが、ニコチンのマウスに対する影響についても考慮する必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
概ね計画通りに研究を遂行していたが、これまで得られた結果に加え、ニコチン刺激グループがコントロールに比べ、細胞増殖能が予期しえなかった刺激後8時間以降の長期に有意な差を生じるという新たな知見が2015年1月に得られた。研究遂行上、この本質を見極めるため当初の計画を変更し、次年度に新たな知見に対するさらなる解析および、成果発表を行う必要性が生じたため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新しく得られた結果の追試用の実験費用と学会発表費用、論文投稿費用に充てることにしたい。
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