2014 Fiscal Year Research-status Report
海洋付着生物に対する自己組織化表面微細構造を用いた防汚材料の創製
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25870059
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
室崎 喬之 旭川医科大学, 医学部, 助教 (40551693)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海洋工学 / 高分子構造・物性 / 自己組織化 / 付着生物 / 防汚技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題の研究目的は、表面微細構造によって環境負荷の少ない新規の防汚材料を開発する事である。前年度までの研究結果より自己組織化的に形成される表面微細構造を数種類作製し、それぞれに異なった付着特性がある事を見出してきた。特に、ハニカム状多孔質膜は平滑面を含む他の表面構造に比べ、フジツボ付着期幼生(キプリス幼生)の着生を大きく減少させる事がわかった。 今年度は、このハニカム状多孔質膜の防汚のメカニズムについて検討する為、フジツボキプリス幼生の付着前行動に着目した。キプリス幼生は着生の前に二本の感覚器官を用いて付着対象の基板表面で探索行動を行う事が知られており、この行動はその後の着生結果に大きな関係がある事と考えられている。本研究ではビデオカメラでキプリス幼生の探索行動を10-24時間撮影した後、画像解析ソフトを用いて探索行動の解析を行った。その結果、ハニカム構造表面ではキプリス幼生の探索行動の距離が他の基板に比べ短い事が明らかとなった。またキプリス幼生の探索行動中における行動様式を、”Pivoting(片足を軸に回転する行動)”, “Walking(二足歩行のような行動)”に分類した結果、探索初期には全ての個体でPivotingを取る事が分かった。また、キプリス幼生が最初のPivotingからWalkingへ移行する確率を調べたところ、付着しやすい構造上では約6~7割の幼生がWalkingへ移行したのに対して、ハニカム構造上では2割程度しか移行しなかった。この結果からハニカム構造は、キプリス幼生探索行動のWalking行動を阻害する事で防汚効果を示すものと考えられる。本結果は、防汚材料設計において長期の付着実験を行わずとも、初期の探索行動を検討すればフジツボの付着度合いを予想できる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は表面微細構造上でのフジツボ付着期幼生の探索行動の解析と多様な材質への抗付着表面微細構造の導入を本年度の目標としていた。探索行動解析に関しては、上述の通り、ハニカムをはじめとする各種基板表面で解析を行い、探索行動の様式の違いについても検討を行った。結果、付着前行動が原因でその後の着生に大きな違いが出る事を見出した。 本年度は4月に東北大学より千歳科学技術大学へ、11月には千歳科学技術大学から旭川医科大学へと2回の異動があった。その為、異動の度に実験系を立ち上げる必要があり多くの時間を要した。その結果当初の予定に比べ研究の達成度はやや遅れていると感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果より、ハニカム状微細構造には防汚効果があり、またそれがフジツボ付着期幼生の探索行動を阻害することが原因である事が示された。これまで様々な表面微細構造上で着生実験を行った結果、ハニカム構造のみが防汚効果を有している。また防汚効果の傾向として、孔径サイズが大きくなるに従って防汚効果は増大し、延伸した場合には延伸率が増大しハニカムの高さが減少するに従って防汚効果は減少している事が挙げられる。この事からハニカムの幾何的パラメータ(孔径など)が防汚効果の大きさに影響している事が考えられる。本課題ではこの点に着目し、防汚に適したパラメータの解析を行う。また基板の弾性率が付着に大きな影響がある事からハニカム状微細構造をシリコーンなどの多様な材質で作製しそれらの防汚効果を評価する。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも物品に係る支出が少なかった為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな異動先でガラス器具や試薬などを取り揃える必要があるので予定よりも物品費が増える予定である。またこれまでの成果を発表する為に学会参加を予定している。電子顕微鏡などの使用の為に国内他大学への出張予定している。
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