2013 Fiscal Year Research-status Report
カスケード濃縮分離内蔵型ICP-MSによる放射性ストロンチウムの飛散調査
Project/Area Number |
25870083
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
高貝 慶隆 福島大学, 共生システム理工学類, 准教授 (70399773)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 放射性物質 / 東日本大震災 / 福島第一原子力発電所事故 / 放射性ストロンチウム / 環境放射能 |
Research Abstract |
本研究は,放射性ストロンチウム(90Sr)分析に特化した高周波誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)システムを開発し,福島県下のSr-90汚染状態(土壌・海洋・海底土)を解明することである。Sr-90のICP-MS分析において,最も困難な「同重体分離」,「放射平衡」,「検出感度」の問題を,「装置内酸化反応」と「カラム濃縮分離」をカスケード型に配置することで解決する。平成25年度は,カスケード濃縮分離内蔵型ICP-MS法の諸条件最適化と環境要因の検証を行った。装置の主要部4ヵ所の諸条件の検討を行った後,環境試料への適合性を検証した。まず,① 試料処理においては,マイクロウェーブ分解装置(現有)を用いて,様々な条件で土壌・海底土からの溶出・回収率の検討を行った。また,② オンラインカラム濃縮(図6)では,濃縮倍率,他元素除去率を求める。その際に,試料分解液の酸濃度の影響,ならびに,試料含有の大過剰なCa,Fe等の元素,放射化学分析において誤認識の懸念がある放射性PbやBa等の元素の除去を詳細に検討した。また,カラム充填剤の粒径,カラム長,順送またはバックフラッシュの濃縮効果,耐圧条件,繰り返し分析等を検討した。③ 装置内でのスペクトル干渉除去では,これまでの知見を元に,ガスの種類(O2及びN2O)とガス量の検討を行った。安定同位体と放射性同位体のピーク強度比を計測して,安定同位体(Sr-88およびSr-64)からマスバイアス補正した90Srの検量線を作製した。④ 最終的に全体を通して,標準土壌を使用して添加回収実験などで,他元素除去率,濃縮倍率,分析感度,繰り返し再現性などを求めた。⑤ 実試料である土壌,海底土を分析し,環境要因が分析値に与える影響を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すでに主軸である分析手法の開発の部分に関して,学術論文誌に掲載されるなど順調な進展を見せているため。
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Strategy for Future Research Activity |
海底土分析や原発サイトでの実試料にどれだけの耐性を備えるのかを検討しなければならない。そのため,管理区域内での実証実験とさらなる感度向上のための検討が必要である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
別予算の措置(平成24年度国立大学法人 設備整備費補助金(第1号補正予算))により,そちらの予算で計画していたシステム顕微鏡と耐酸性ポンプを購入したことにより,予定よりも設備費が少なくなった。その一方で,当初計画していた実サンプルに東京電力福島第一原子力発電所敷地の地下を流れる地下水がさらに加わり,平成26年度に予定していたサンプル数よりも加増することとなった。さらに管理区域でのRI物質の処理費用,ならびに,サンプリング旅費,RI物質除去フィルター,アルゴンガス,装置等の消耗品ではあるものの高額な物品費が増えたため,研究予算を効率よく使用するため平成26年度に重点的に使用するためである。 サンプリング旅費,測定に使用するフィルター,樹脂,アルゴンガス,装置等の消耗品に使用する。
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