2014 Fiscal Year Research-status Report
シダ植物小葉類の根の分枝様式と分枝メカニズムの解明
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25870088
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
藤浪 理恵子 日本女子大学, 理学部, 助教 (40580725)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 維管束植物 / シダ植物小葉類 / 根 / 進化 / 形態 |
Outline of Annual Research Achievements |
維管束植物は1本の軸が分枝する能力を獲得したことにより茎、葉、根の3器官が生じたと推定され、分枝は3器官の形態進化を明らかにする上で重要な特徴であると考えられる。本研究では、維管束植物の分子系統関係で最初に分岐し、根が茎と同様に外生分枝するシダ植物小葉類に着目して根の分枝様式を明らかにし、根の進化過程を推定することを目的とした。シダ植物小葉類3科(イワヒバ科、ミズニラ科、ヒカゲノカズラ科)の根頂端分裂組織(RAM)の構造と分枝様式を発生解剖学的および分子遺伝学的解析方法で解析した。方法は、樹脂切片を用いた組織染色法と分裂細胞を標識する標識マーカーを用いたRAMの細胞分裂動態解析を行った。 小葉類3科のRAM構造はイワヒバ科が1つの頂端細胞をもち、ミズニラ科は各始原細胞群が層状をなす。ヒカゲノカズラ科も層状構造であるとされていたが、ヒカゲノカズラ属のヒカゲノカズラはRAM中央部の細胞群が不規則に並び、種子植物のRAM構造である開放型に類似することが明らかとなった。また、細胞分裂動態の解析から静止中心によく似た領域(QC様領域)が存在することが示唆された。一方、層状構造を示すヒカゲノカズラ科トウゲシバ属とミズニラ科は、ヒカゲノカズラのQC様領域に匹敵する構造はもたないことが推測された。したがって、小葉類のRAM構造はシダ植物大葉類と種子植物に匹敵するほど多様であることが推測される。さらに、ヒカゲノカズラの根は二又分枝時にQC様領域が拡大し、小型の細胞群がQC様領域内に生じ、その細胞群の分裂と拡大によって2つにQC様領域が分断され、新たな2つのRAMが形成される、という分枝様式が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究年度において、小葉類3科(イワヒバ科、ミズニラ科、ヒカゲノカズラ科)の根頂端分裂組織(RAM)の構造と分枝様式を発生解剖学的および分子遺伝学的解析方法により、小葉類3科のRAM構造を解明し、ヒカゲノカズラの根の二又分枝の分枝様式を明らかにした。解析方法は、樹脂切片を用いた組織染色法と分裂細胞を標識する標識マーカーを用いたRAMの細胞分裂動態解析を行った。 小葉類3科のRAM構造はイワヒバ科が1つの頂端細胞をもち、ミズニラ科は各始原細胞群が層状をなす。ヒカゲノカズラ科も層状構造であるとされていたが、我々の解析からヒカゲノカズラ属のヒカゲノカズラはRAM中央部の細胞群が不規則に並ぶ種子植物の開放型に類似し、細胞分裂動態解析から静止中心(QC)によく似た領域(QC様領域)が存在することが示唆された。一方、同科のトウゲシバ属は各始原細胞群が層状構造であることが確認された。さらに細胞分裂動態解析から、層状構造のトウゲシバ属とミズニラ科は、ヒカゲノカズラのQC様領域に匹敵する構造はもたないことが示唆された。しかし、両者は表皮と根冠の始原細胞群を共有しているか否かという点で構造が異なっていた。したがって、小葉類内でRAM構造は多様化し、真葉類(シダ植物大葉類、裸子植物、被子植物)に匹敵する形態進化をした可能性が高いと推測される。 小葉類の根の二又分枝の分枝様式については、ヒカゲノカズラRAMの細胞分裂動態の解析から、二又分枝時にQC様領域が拡大し、QC様領域内に小型の細胞群が生じることが明らかとなった。その後、小型細胞群の分裂と拡大によって、QC様領域は2つに分断され、新たな2つのRAMが形成される、という分枝様式をもつことが示唆された。また、ヒカゲノカズラの茎の分枝様式は、分裂細胞に発現する遺伝子をマーカーとして解析を行い、根の二又分枝との比較解析を進めている
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Strategy for Future Research Activity |
小葉類と他の維管束植物のRAM構造を比較するため、EdU染色法による細胞分裂動態の解析とRAMに発現する相同遺伝子を用いた発現解析を進める。EdU取り込み実験は、昨年度と同様に京都府清滝川周辺と静岡県函南原生林、東京都奥多摩、東京都小石川植物園にて4月から7月に実施し、蛍光顕微鏡観察法と組織染色法による光学顕微鏡観察を行う。ヒカゲノカズラ科ヒカゲノカズラは、種子植物と類似したRAMをもつ可能性が考えられることから、QCに発現することが知られているWOX family相同遺伝子の発現解析を詳細に進める。 根の分枝様式については、根が均等に二又分枝し、ヒカゲノカズラと同じ科に属するトウゲシバの解析を新たに行う。トウゲシバのRAMは層状構造を示し、ヒカゲノカズラと異なることから、分枝様式を両者で比較し、小葉類内の根の形態進化について議論を行う予定である。 最終年度であるため、小葉類の根頂端分裂組織の構造と根の二又分枝の分枝様式についてまとめ、国際学術雑誌に論文を発表する予定である。現在投稿準備中である。
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Causes of Carryover |
本年度は国内に生育するヒカゲノカズラを材料に根の分枝様式を明らかにする予定であったが、倍数性の違いから、根のサイズ、細胞数の違いなどを同種間で比較する必要が生じ、マレーシアのキャメロンハイランドを予備的に調査し、現地に生育するヒカゲノカズラを材料とした実験に着手する準備を進めた。また、ヒカゲノカズラと同様の解析をトウゲシバで行う必要性が生じたことから、解析に用いる材料を野外で採集、実験し、試料の準備を積極的に行った。次年度において実験室内における蛍光顕微鏡観察と遺伝子発現解析を行う必要が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はEdU染色法によるRAMの細胞分裂動態と遺伝子発現解析についてヒカゲノカズラとトウゲシバを重点的に行う。さらに、本研究の大きな目標である小葉類の根と茎の器官進化を推定するために、小葉類の茎の分枝の解析も着手する予定である。現在、ヒカゲノカズラとトウゲシバにおいて、根と同様に分枝時における細胞分裂動態を遺伝子発現解析を用いて行っている。
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Research Products
(4 results)