2015 Fiscal Year Annual Research Report
沈降粒子生成量に対する海洋酸性化の影響-酸性化は生物ポンプを停滞させるのか?-
Project/Area Number |
25870095
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
和田 茂樹 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60512720)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海洋酸性化 / 生物ポンプ / 沈降粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
人間活動に伴って放出された二酸化炭素の約1/4は、海洋に吸収されている。海洋の表層に溶け込んだ二酸化炭素は、炭酸の化学平衡に影響を与え、海水のpHの低下が生じている。我々は、海洋の酸性化が生物ポンプの駆動に与える影響を定量化するため、下方が円錐状の大型培養タンクを作成し、酸性化が沈降粒子生成に及ぼす影響を評価した。 作成したタンクで捕集された沈降粒子に関して、エルトリエーターを用いて沈降速度別に分画を行ったところ、培養タンク内で生じた粒子の沈降速度は、20-40m d-1の画分であり、作成した培養タンクを用いることで、下方へ高速で輸送される粒子を捕集できることが示された。 さらに、作成したタンクを用いて、pHを調整した培養実験を実施した。タンク内に自然海水を導入し、pCO2を400および800ppmに調整して培養を行い、捕集された沈降粒子の量と組成の経時変化を解析した。17日間の培養期間を通じて、沈降粒子の生成量は800ppmのpCO2の培養タンクで低く、期間中の有機炭素の積算沈降量は400ppmのタンクの83%となった。 酸性化に伴って沈降粒子の量が減少した要因として、植物プランクトンのサイズの小型化が挙げられる。培養中の植物プランクトンの種組成をフローサイトメーターで測定したところ、小型の緑藻類に類似したグループが優占していることが示された。粒子の沈降速度はその直径の二乗に比例する。すなわち、表層の有機物粒子の主体となる植物プランクトンが小型化したことで、沈降粒子の量が低下し、下方への炭素輸送が抑制されるものと考えられる。 酸性化は表層のCO2の増加が原因であり、生物ポンプ(沈降粒子による有機炭素輸送)は、その進行を抑制する働きを持つ。しかし、本研究の成果から、生物ポンプが酸性化によって抑制され、結果として酸性化の進行が加速する可能性が示された。
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