2013 Fiscal Year Research-status Report
共創ビジョンに基づく半導体産業のビジネスモデル進化と、知財・人材の組織的流動化
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25870097
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
有馬 澄佳 筑波大学, システム情報系, 講師 (60400644)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 半導体産業 / 日米欧比較 / ビジネスモデル・イノベーション / 地域活性化 / 環境経営 / リーン生産 |
Research Abstract |
H25年度には、日本半導体産業とその周辺分野に関連して、経営組織を社会運営の重要インフラと捉え、経営組織の「進化の3段階設計法」を構築することを目的とした。その目的を達成するために、1)日本半導体産業に関する現状分析と進化方策の研究、および、2)次世代デバイスのサプライチェーン・マネジメントに関する技術研究を並走させた。 1)については、A)半導体研究開発コンソーシアムの日米欧比較に基づく日本エレクトロニクス産業への提言、および、B)地域活性化事業の思想・方法論の研究を実施した。A)に関しては、欧米と日本の相違点を1)トップダウン・マネジメントの問題として大分類5項目中分類11項目、ボトムアップ・マネジメントの問題として経営組織/文化の影響を大分類2項目中分類3項目にまとめた。前者の分類には、ビジョン(動機、課題認識、成長戦略)、体制(リーダーシップ、パートナー選定、基盤顧客)、制度(評価制度、評価方法)、資金(年度予算、投資、設備経営)を、また、後者の分類として、技術戦略(技術戦略)、運用(組織と人材の関与、競争意識)を設定し、定性分析・定量分析を合わせて日米欧比較結果をまとめた。B)については、地域活性化事業や環境経営のビジョンを踏まえた進化の議論を進めた。以上の成果は、経営工学会年次研究大会に3件の論文発表、国際会議での1件の展示として公開した他、今春の各種講演会等を経て広く共有していく。 2)については、今後の製品設計(3次元デバイス)とサプライチェーン設計・運営に関する技術研究を並走させ、国内企業との協業により、実データを用いた技術応用効果の事前検証を行った。その結果、従来法では達成できなかった優良な結果を得た。これらの成果は、2件の国際学会での発表およびIEEE国際学会誌2件の投稿(PCT特願に関連し2014年7月以降に公開可能となる)他の成果物としてまとめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時に、研究の目的として、以下を記した。 世界の半導体産業は過去30年間に亘って急速なオープンイノベーションの展開・ビジネスモデルの進化等を繰り広げ、毎年10%以上の成長率を維持してきた。一方、日本半導体産業は30年間停滞し続けている。この要因は、日本の各企業が新しいイノベーション・ビジネスモデルの進化などに十分に対応してこなかったためと考えられる。本研究では、日本半導体産業の復権に向けて、個別企業に対する各論と業界全体の特徴・動向を捉え、世界水準で競争できる産業形態を実現するリストラクチャリングの方法論の確立を目指す。申請者はこの産業を過去15年間研究対象としてきたので、研究目標の実現可能性を強く信じる。 この目的に従い、日本半導体産業の停滞の要因を「研究実績の概要」に前述した通り、まとめた。ここで、決定的な日米欧の相違は、産業や技術に留まらず、より大局的な世界観や社会の制度・文化に根付くものが多く、また、悲観的・単眼的ビジョンが、未来創造に負の影響をもたらしていることもわかってきた。それらの認識に基いて、改めて社会起業家精神に基づく地域活性化事業と環境経営をふまえたビジョン策定と産学官協業事業の方法論を検討するとともに国内の首都圏一地域を対象として事例研究を進め、経済財・自然財の生み出す価値とその流れを構想した。当該企画と特区制度との関連から、内閣府・地域活性化統合事務局へ提案するなどの活動も行ってきた。 2)については、国内の最大手半導体企業ほかの2企業および国立台湾大学と技術交流を図り、うち国内一企業とフィージビリティスタディを先行させ、新たな技術的進歩を加えた。2014年度内に産学共同研究プロジェクトを立ち上げ、実証研究フェーズに進むことで企業と合意済みである。こちらについては、研究代表者の過去10年の生産システム工学の研究成果を総合して、社会に技術を実装していく。
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Strategy for Future Research Activity |
1.変更点は、体制面と研究内容の追加にある。まず、当初より、研究室内の実施体制が小さく(10名→7名)、学外の協業者の体制が大きくなるものの、予定通り問題なく進められる見込みがある。また、研究内容として、少子高齢社会の実態調査(幸福度、困難度)と人工社会シミュレーションによる一般化・汎用化を加える予定であるが、先行研究や同所属の関連研究者との協力、また志高い若者達との邁進により、早期の進捗を目指していく。 2.厳しい時間との闘いがあることを十二分に認識して、迅速かつ確実に成果をあげ、社会に還元していく。そのために、自身の研究もまたコンカレント・エンジニアリングの思想に基づいて移管容易かつ迅速な産学連携あるいは産学官連携体制で実施する。また、従来以上に、社会とのオープンな対話を推進していく。 3.今後の最大の課題は、「地域活性化の研究」に関わる幅広い研究者の組織化にあると考えている。既存の地域活性化学会などとも交流を深めつつ、足元の筑波大学の社会工学域(社会経済、経営工学、都市計画)、および、システム情報系(構造エネルギー工学、コンピュータ・サイエンス、知能機能システム、リスク工学、)の研究者の分野横断的な組織化を志し、つくば国際戦略特区のフィールドも活用していく。このような取り組みが社会と大学の両方の発展につながると強く信じる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
納品・清算手続きはH25年度内に終了しているが、支払い(振込等)がH26年度4月にずれこんだため 研究成果公開Webサイト制作費用, 出張旅費
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Research Products
(10 results)