2013 Fiscal Year Research-status Report
大規模連立一次方程式に対する反復法を用いた前処理技術の開発と科学技術計算への応用
Project/Area Number |
25870099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今倉 暁 筑波大学, システム情報系, 助教 (60610045)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高性能計算 / 数値解析 / 大規模連立一次方程式 / 反復法 / 前処理技術 |
Research Abstract |
大規模連立一次方程式に対する反復法を用いた高性能前処理技術を開発し、科学技術計算へ応用するという本研究課題を遂行するにあたり、平成25年度は「定常反復法の高性能化及び収束性の理論解析」を中心に研究を進めた。 定常反復法を反復型の前処理技術で用いる場合、使用される定常反復法には高速性・高精度・高並列性が要求される。現在の反復型の前処理技術ではJacobi法やGauss-Seidel法、SOR法などの極めて古典的な定常反復法が用いられており、前処理での使用を想定した定常反復法の高性能化及びそれによる高性能前処理技術の開発は海外においても研究段階であり、科学技術計算への適用は行われていない。 本研究課題では、反復型の前処理技術での使用を想定した定常反復法の高性能化を行った。具体的には重みパラメータを用いた定常反復法の拡張法を提案した。この拡張法は適切な重みパラメータを設定することにより従来の定常反復法の演算量を増加することなく収束性を改善することができる。また、平成26年度より本格的に研究を進める「実用化を目指した利用性向上のための技術開発」の前段階として、提案法の収束性に関する理論解析を通し、重みパラメータの最適化手法を開発した。提案した重み付き定常反復法およびその最適化手法を組み合わせることで、従来の前処理では解くことが出来なかった問題を効率的に解くことができるという結果が得られた。 さらに、古典的な定常反復法に代わり、前処理としての利用を考慮した新たな定常反復法として、近似係数行列および疎行列向け直接法を組み合わせた定常反復法を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の主な研究計画は「定常反復法の高性能化及び収束性の理論的解析」と「実用化を目指した利用性向上のための技術開発」である。重みパラメータや近似逆行列、近似係数行列を用いた改良法の開発、重みパラメータや近似逆行列の最適化、パラメータの自動設定法の開発、収束性の事前判定技術を開発を計画していた。 現在までの達成度としては、当初計画どおり反復型の前処理技術での使用を想定した定常反復法の高性能化として重みパラメータや近似係数行列を利用した改良法を開発し、数値実験から有効性を検証した。また、重みパラメータの最適化手法についても概ね順調に開発が進んでおり、各種の実問題に対しての有効性が検証されている。 また、平成26年度以降に本格的に開始する実アプリケーションへの適用に向けて、超新星爆発計算や格子QCD 計算の研究者との共同研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降も今年度に引き続き「定常反復法の高性能化及び収束性の理論解析」および「実用化を目指した利用性向上のための技術開発」に取り組む。 反復型の前処理技術には、前処理で用いる反復法の停止条件や近似係数行列生成のためのカットオフパラメータなど様々なパラメータが存在する。また、各パラメータの最適値は対象となる連立一次方程式ごとに大きく異なり、パラメータ設定により前処理の有効性が大きく左右される。各種のパラメータ設定の困難さが反復型の前処理技術の利用性の低下に繋がっている。平成26年度は、平成25年度に行った理論解析をもとに、これらのパラメータの自動設定法を開発することで利用性向上を図る。また、連立一次方程式の求解アルゴリズムとしての信頼性の向上を目指し、収束性の事前判定技術についても併せて開発を行う。 また幅広い科学技術計算に対して開発した前処理技術を適用し、その性能評価を行うとともに、フィードバックして方法の改良につなげる。特に平成25年度より共同研究を進めている超新星爆発計算や格子QCD 計算等の研究者との共同研究を本格的に開始し、提案手法の進化とともに実アプリケーションへの貢献を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に購入予定であった開発コードの基礎実験のための計算機について、コードの開発状況に併せて、最新機種を平成26年度に購入することにしたため、その費用である30万円程度次年度使用額が生じた。 平成26年度は、平成25年度に見送った開発コードの基礎実験のために個人専有できる計算機を購入する。
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