2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870108
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
守山 拓弥 宇都宮大学, 農学部, 講師 (70640126)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 里地里山 / 江戸期 / 生物古名 / 産物帳 |
Research Abstract |
近年、里地里山や二次的自然という自然環境のとらえ方の重要性が指摘されている。こうしたとらえ方は、国の生物多様性国家戦略にも色濃く反映され、2010年に開催され生物多様性締約国会議(COP10)では議長国である日本が「SATOYAMAイニシアチブ」を提唱するに至っている。 里地里山の水辺環境の代表である水田水域を対象に、主に栃木県をフィールドとして魚類についての生態学的な研究を行ってきた。さらに申請者は研究成果の実地への応用として、地域住民らとともに生物多様性の保全活動を行ってきた。こうした取組で課題となったことは、現在の生物多様性を評価する基準をどうするか、取組の保全目標をどこにおくか、つまり、里地里山の生物多様性の「あるべき姿」はなにかということに行き着いた。「あるべき姿」とは、里地里山の生物多様性が良好に維持される状態と言ってよいが、一般にそれは近世の循環型社会が成立した江戸期以降かつエネルギー革命が起きる1950年代頃までの期間と捉えられ、特に江戸期はバイオマス資源のみで成り立つほぼ完全な循環型社会とされる。そこで、このこれらの時期における生物多様性、特に水生動物相(魚類、水生爬虫類、両生類、甲殻類等)を明らかにするという課題を設定した。 H25年度は、こうした目標に対し、①記載された生物名が当時の名前(古名)であることから、現在の名前(標準和名)との対応関係を明らかにし、生物古名を解明した。さらに、②「産物書上帳」にある村落単位で当時生息していた水生動物相リスト(推定)を作成した。 なお、当初27ケ村分の史料が残存していると考えられたが、新たに3ケ村の資料が残されていることも調査の結果から明らかとなり、生物古名を明らかとしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H25年度は、当初の目標通りに、①記載された生物名が当時の名前(古名)であることから、現在の名前(標準和名)との対応関係を明らかにし、生物古名を解明した。これには、主に文献を用いた。文献を中心とした理由は、1種を除き、複数の文献から種名が特定されたためである。また、②「産物書上帳」にある村落単位で当時生息していた水生動物相リスト(推定)を作成した。当初27ケ村分の史料が残存していると考えられたが、新たに3ケ村の資料が残されていることも調査の結果から明らかとなり、生物古名を明らかとしている。つまり、H25年度の成果として、30ケ村に生息していた生物種を村単位で明らかとした江戸期の生息生物リストを作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の通り、H26年度は土地利用形態の推定を行う予定である。H25年度中に購入した米軍空中写真をオルソ補正し、明治20年代の迅速図等と合わせ高度経済成長以前の土地利用形態を明らかとする。H27年度はこうした土地利用形態と村落単位の生息生物リストを基に江戸期の生物種の分布マップを作成する。したがって、研究の推進方策は計画段階とおおむね同じとなる。 一方、計画の変更点として、対象生物分類群の拡大がある。これは、産物帳に記された生物種が水生生物以外でも種名の特定が可能であったことによる。現在、複数の生物分類群を対象とした解明に着手しつつある。研究として取り組みうる記述精度が認められた種について研究対象とする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H25年度の成果を基とした執筆論文の英文校閲費として予定していたが、論文投稿化が遅れているため経費も繰り越した。 予定通り執筆論文の英文校閲費として使用を計画している。
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