2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25870111
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
槇 靖幸 群馬大学, 理工学研究院, 助教 (50400776)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 多糖類 / 複合ゲル / 食品 / 放射光 |
Research Abstract |
多糖類複合ゲルのモデル系としてκ-カラギーナン(CAR)+ガラクトマンナン(GM)を用い、レオロジー測定により確認された多糖類複合ゲルの相乗効果を解明するため、放射光VUVCD実験を行い、複合ゲル中におけるCARとGMのコンフォメーションを調べた。(CAR+GM)複合ゲルのVUVCDスペクトルは、CARゲル及びGM溶液のスペクトルを用いて、単純な混合則によって説明可能だった。これにより、GMとCARの相互作用によってGMのコンフォメーションが特別な変化を起こさないことを、初めて明確に示した。この結果は、(CAR+GM)複合ゲルは、GM鎖がCAR網目に取り込まれるモデル、又は相分離網目モデルのいずれかで表現されることを意味している。どちらのモデルが妥当であるか検討するためには、散乱実験が有効であると考えられた。そこで、(CAR+GM)複合ゲルの放射光SAXS測定を行った。今後、SLS, SALS測定を行い、ゲルの階層構造を考察することにより、(CAR+GM)複合ゲルの構造を明らかにする予定である。 相分離網目モデルに従う複合ゲルの散乱データ解析法の確立のため、既知の相分離網目ゲルである(寒天+ゼラチン)複合ゲルを用いて、SAXS測定を行った。また、(寒天+ゼラチン)複合ゲルの放射光VUVCD測定を行い、ゾル-ゲル転移過程におけるゼラチン分子のコンフォメーション変化を調べた。ゼラチンに添加する寒天の量の僅かな違いで、ゼラチンのゲル化速度が転移的に変化する新奇な現象を見出した。このような、VUVCDを用いたゼラチンのゲル化過程の測定では、複合ゲル中における微視的なゲル構造が反映されていると考えられる。すなわち、放射光VUVCD測定を用いて、ゲル化過程の微視的レオロジー計測が可能であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、主として多糖類ゲル(単一成分系及び複合ゲル)中の分子コンフォメーションの測定・解析を中心に取り組んだ。自動旋光計の導入による実験設備の整備と、放射光VUVCD実験における測定・解析の方法論の確立を達成した。さらに、これらの測定・解析の方法論を、(CAR+GM)複合ゲルに対して実際に適用し、CARおよびGMのコンフォメーション変化についての新たな知見を得た。これ以外の複合ゲルのモデル系(CAR+コンニャクグルコマンナン(KGM)、キサンタンガム+KGM、アガロース+ジェラン)については、旋光度およびVUVCD実験における試料調製法の予備的検討が進行中である。 これに加えて、ゲル階層構造の解析法構築のため、既知の相分離網目ゲルとして(ゼラチン+寒天)複合ゲルの散乱実験を行うことにし、放射光SAXS実験については既に完了した。これに対し、光散乱測定装置の整備と測定は平成25年度には完了しなかった。 最初の計画では、平成25年度に単一成分ゲル、平成26年度に複合ゲルの実験を行うことになっていたが、実際には、放射光VUVCDと放射光SAXSについては、複合ゲルの実験も平成25年度中に先取りして実施することができた。このため、当初の予定と順番の前後はあったものの、おおむね順調に研究の遂行することができたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度では、(CAR+GM)複合ゲルの放射光VUVCD実験および放射光SAXS実験を完了したので、平成26年度では引き続き、複合ゲルのモデル系として、CAR+コンニャクグルコマンナン(KGM)、キサンタンガム+KGM、アガロース+ジェランの各複合ゲルについて、放射光VUVCD実験による糖鎖コンフォメーションの研究と、放射光SAXSによる架橋構造の構造解析の研究を実施する予定である。 また、ゲルの階層構造の解析法を確立するため、まず光散乱装置(小角光散乱、マルチスペックル動的光散乱)の整備・構築を行う。次に、複合ゲルのモデル系に対する光散乱実験を行い、放射光SAXSの実験結果と合わせて、複合ゲルの階層構造を表現するモデルを検討する。この際、既知の相分離網目ゲルのモデルとして(ゼラチン+寒天)複合ゲルの実験から得られる知見を利用する。さらに、可能であれば、SPring-8のビームラインBL-19B2等において放射光USAXS測定を実施し、光散乱と放射光SAXSから考えられたモデルの妥当性を検討する。 最終的に、放射光VUVCDと光散乱・放射光SAXSの結果を総合して、CAR+GM、CAR+KGM、キサンタンガム+KGM、アガロース+ジェランの各複合ゲルの構造を明らかにする予定である。
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