2013 Fiscal Year Research-status Report
安定な反芳香族縮環炭素パイ電子系化合物の系統的合成と物性探求
Project/Area Number |
25870112
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
加藤 真一郎 群馬大学, 理工学研究院, 助教 (70586792)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 反芳香族性 / パイ共役 / ペンタレン / 電気化学 / 近赤外吸収 / 共役炭化水素 |
Research Abstract |
反芳香族性縮環炭素パイ電子系として,8パイ電子系の不安定化学種であるペンタレンに着目した。ペンタレン骨格を有する化合物は,反芳香族性に起因する特異な物性を示すことから関心を集め,ジベンゾペンタレン誘導体を代表例として,ペンタレンに芳香環が2つ融着した化合物が相次いで報告されている。一方,ペンタレンに芳香環が1つ融着した化合物の報告例は極めて少ない。本研究では,ベンゼンまたはナフタレンを融着させたペンタレン誘導体を設計・合成し,諸物性を明らかにした。 対応するジケトン体を鍵中間体とし,アリールリチウムまたはリチウムアセチリドの求核付加,続く塩化スズ二水和物を用いた還元反応によって,目的物の合成に成功した。 得られた化合物はペンタレンの反芳香族性を反映して,1200 nm付近にまで及ぶ吸収スペクトルを与えた。ベンゾペンタレンに対して,エチニレンを介してベンゼン環を導入した化合物の極大吸収波長は,直接導入した化合物に比べて大きく長波長シフトし,エチニレンの導入による効果的なパイ共役の拡張が明らかになった。興味深いことにナフトペンタレンは,ベンゾペンタレンに比べて拡張した縮合多環構造を有するにも関わらず,短波長側に吸収波長を与え,HOMO-LUMOギャップが増大していることが分かった。この原因を,X線構造解析と理論計算により,ナフトペンタレンにおいてはペンタレン8パイ電子系としての寄与が小さい,すなわち反芳香族性が低下しているためと結論づけた。電気化学測定の結果,ペンタレン誘導体は2段階の酸化波と2段階の還元波を与え,電気化学的HOMO-LUMOギャップが従来のジベンゾペンタレン誘導体に比べて小さいことが示された。エチニレンの導入は,その電子求引効果により,効果的にLUMOレベルを低下させることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の項目に関して計画通り研究を行い,概ね期待した成果が得られた。 ・8パイ電子系であるペンタレンの縮合多環構造を拡張した化合物の合成経路を確立し,理論計算と結晶構造解析により,反芳香族性と構造との関係を実験的および理論的に調査した。 ・分光学的方法と電気化学測定により,ペンタレン誘導体のHOMO-LUMOギャップ,電子受容性,電子供与性について調査した。 ・パラ位に電子求引性または供与性の置換基を有するフェニルアセチレン誘導体からリチウムアセチリドを調整し,これをジケトン体に作用させ,続く塩化スズ二水和物で処理することによる種々の置換基を有するペンタレン誘導体の予備的な合成を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の内容について検討を行う予定である。 ・ペンタレン誘導体のHOMOレベルが総じて高いことに注目し,化学酸化によりラジカルカチオン,ジカチオン種を調整する。カチオン種について,吸収スペクトル測定,EPR測定,NMR測定を行い,電子的性質を明らかにする。 ・種々の置換基を有するペンタレン誘導体を系統的に合成し,置換基が諸物性に与える効果を明らかにする。 ・ジケトン体に対して逐次的にリチウムアセチリドを作用させる方法を確立し,push-pull型ペンタレン,更にはペンタレンオリゴマーへ導く。 ・エチニレンを有するペンタレン誘導体に対して電子不足なオレフィン類を作用させ,環化付加反応が生じるかを検討する。 これらの内容を進め,一方向で縮合多環構造を拡張させたペンタレンの化学の発展を総括する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究室で現有の試薬(アセチレン類や触媒など)および測定機器を用いることにより,当初の予想以上に円滑に研究を進めることができたことが,26年度に使用額が生じた理由である。 25年度と同様に,研究費は主に消耗品費として用いる予定である。これは,有機合成を土台とする本研究内容の性質上,日々の合成実験に必要な有機化合物試薬,有機溶媒,金属試薬,ガラス器具等を,状況に応じて購入する必要があるためである。また,得られた研究成果の発表のための国内外旅費にも,研究費の一部を割り当てる予定である。
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Research Products
(11 results)
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[Journal Article] From Homoconjugated Push-Pull Chromophores to Donor-Acceptor-Substituted Spiro Systems by Thermal Rearrangement2014
Author(s)
Cagatay Dengiz, Oliver Dumele, Shin-ichiro Kato, Michal Zalibera, Pawel Cias, W. Bernd Schweizer, Corinne Boudon, Jean-Paul Gisselbrecht, Georg Gescheidt, Francois Diederich
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Journal Title
Chemistry-A European Journal
Volume: 20
Pages: 1279, 1286
DOI
Peer Reviewed
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