2013 Fiscal Year Research-status Report
粒子線治療用レンジ補償フィルタ高速補正計算アルゴリズムの開発
Project/Area Number |
25870117
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
齋藤 明登 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20528062)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 粒子線治療 / レンジ補償フィルタ / 最適化計算 |
Research Abstract |
平成25年度は本研究の目的である粒子線治療用レンジ補償フィルタの高速補正計算アルゴリズムの開発に必要なCTデータ (DICOMフォーマット) の取得プログラムおよび、患者体内の任意の点の水等価深さを計算するアルゴリズムの検討および作成を行った。これらの処理は市販のソフトウェアを用いると大量データの一括処理ができない、処理速度が遅い、拡張性がない等の問題があるため、C++をベースとしたプログラムにより高速かつ拡張性をもつ処理環境を構築した。水等価深さの計算はレンジ補償フィルタ補正計算の基本となる部分であるため、ここでの不要な近似計算による誤差は補正計算の精度および速度に影響を与えてしまう。ここでは計算 voxel を任意の3次元的角度で入射粒子が通過する場合に対して、近似を用いず計算速度を高速に保つ方法で計算アルゴリズムを作成した。また、入射粒子の患者体内における散乱を考慮に入れた"実効"水等価深さの導入について検討・作成を行った。計画段階で検討したアルゴリズムは、入射粒子が患者体内で直進することを仮定した水等価深さに基いたレンジ補償フィルタで計算された線量分布に補正を加える方法である。これに対して、予め散乱効果を考慮して患者体内の線量計算点に寄与する患者体内のCT値を重み付きで3次元的に積算する"実効"水等価深さを導入することにより、最適化イタレーションを伴わない高速な計算アルゴリズムが実現できると考えられる。レンジ補償フィルタの高速計算を実現するために最適な方法を開発するために、上記の2種類の深さ計算を検討・作成を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終的な目的は、最適化イタレーションを伴わないレンジ補償フィルタ高速計算アルゴリズムを開発することである。その前段階として、入射粒子の直進を仮定した水等価深さをベースにした線量計算に基くレンジ補償フィルタの補正最適化計算を開始することが平成25年度の計画であった。研究を進める過程において、線量計算点の水等価深さそのものに散乱効果を取り入れた"実効"水等価深さの導入により当初の計画の目標である最適化イタレーションを伴わない高速かつシンプルな計算アルゴリズムを開発できると考えられたため、最適化計算を開始する前に実効水等価深さの計算の検討・作成を行った。そのため、最適化計算そのものは開始していないがその代替手段となる実効水等価深さの計算を作成しているため、研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、前年度に作成した水等価深さおよび実効水等価深さを用いたレンジ補償フィルタの最適化アルゴリズムの作成を行う。当初の計画である通常の水等価深さを用いたレンジ補償フィルタの最適化計算の作成および高速化に加え、実効水等価深さを用いた場合のレンジ補償フィルタの計算アルゴリズムの作成を行う。この実効水等価深さの導入は当初の目的である最適化イタレーションを伴わないアルゴリズムを実現するために有効な手段であると考えている。これらの計算アルゴリズムを総合的に比較することにより最適なレンジ補償フィルタの高速補正計算アルゴリズムを開発する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の過程において、当初の計画になかった実効水等価深さを導入するアイディアが発生したことにより、本研究の目的である最適化イタレーションを伴わないレンジ補償フィルタ計算アルゴリズムを、当初の計画より高速かつシンプルな形で実現できる可能性が出てきた。そのため、この新しいアイディアを研究の一部に取り込み総合的に比較することにより、精度および速度の点において最適なレンジ補償フィルタの計算アルゴリズムを作成してから成果発表を行うことが適切であると判断し平成25年度の成果発表を見合わせた。そのため次年度使用額が生じた。 平成26年度は、当初の計画である通常の水等価深さを用いたレンジ補償フィルタの高速補正計算アルゴリズムに加えて、実効水等価深さを用いた最適化イタレーションを伴わないレンジ補償フィルタ計算アルゴリズムを開発する。これらのアルゴリズムを総合的に比較検討し、最適なアルゴリズムを開発する。それらの成果を平成26年度に公開する予定である。
|