2013 Fiscal Year Research-status Report
サル下部側頭葉の対連合記憶神経回路:細胞間情報伝達のGranger因果性解析
Project/Area Number |
25870142
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平林 敏行 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60376423)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 霊長類 / 下部側頭葉 / 対連合記憶 / 多細胞同時記録 / 局所神経回路 |
Research Abstract |
本年度は、下記の研究成果が得られた。マカクザルの下部側頭葉は、低次側のTE野と高次側の36野から成る。対連合記憶課題を用いたこれまでの研究により、低次側のTE野では多くのニューロンが学習した個々の図形を表象するのに対して、高次側の36野には学習した図形対(図形間対連合)を表象するニューロンが多いことが知られており、図形間対連合の表象は36野で形成されると考えられてきた。本研究において我々は、対連合記憶課題を遂行中のマカクザルのTE野及び36野のそれぞれにおいて多細胞同時記録を行い、図形間対連合の表象が、実際に両領野においてどのような神経回路によって形成されるのかを調べた。その結果、まず低次側のTE野には、学習した個々の図形を表象するニューロンから、その図形を含む図形対を表象するニューロンに向かって情報を送る神経回路が、その逆向きの回路に比べて倍以上多くあることが分かった。このことから、低次側であるTE野の神経回路において、既に図形間対連合の表象(「前駆コード」)が形成されていることを示唆された。一方、高次側の36野では、そのような回路は見られず、代わりに、共通の図形対を表象するニューロン同士が結合し、手がかり図形に対する応答において、情報を送る側のニューロンが先に対連合表象を示し、情報を受け取る側のニューロン集団がやや遅れて相互結合を強める過程と並行して対連合表象を示すようになることが分かった。このことから、高次側の36野では、あるニューロンの対連合表象が、別のニューロンにコピーされ、広まっていくことが示唆された。以上の結果から、視覚特徴の神経表象は、従来の見解とは異なり、低次側の領野においてまず少数の「前駆コード」が生成され、高次側の領野でそれが多くのニューロンに広まることによって、大勢を占める神経表象となることが示唆された。本研究結果は、Science誌に発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究成果の一部を、論文としてScience誌に発表する事ができた。従って、研究は当初の計画以上に進展しているものと評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、対連合記憶課題を遂行中のサル下部側頭葉における記憶ニューロン間の局所相互作用、並びにその領野間の差異について、さらに解析を進めると共に、縦型多点電極を用いて記録されたデータを元に、皮質層間におけるニューロン間相互作用と、皮質層内におけるニューロン間相互作用の関係についても解析を行い、皮質層間相互作用が局所神経回路の作動に及ぼす影響を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究が当初の計画に比べて早く進展し、その成果を論文として発表することができたことにより、物品費、及び消耗品の購入額が予定よりも低く抑えられたため。 現在新たに予定している実験に必要な物品、及び消耗品の購入、並びに学会・論文発表に使用する計画である。
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Research Products
(8 results)