2013 Fiscal Year Research-status Report
シャコガイ殻の微小領域分析による超高時間解像度古環境復元法の確立
Project/Area Number |
25870147
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (70463908)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シャコガイ / 微小領域分析 / 古環境復元 / 台風 / 化石 / 微量元素 / 安定同位体 |
Research Abstract |
石垣島から採取した,完新世の気候温暖期(いわゆる縄文海進)の時代の化石シャコガイの高解像度分析を行った.電動微少切削装置を用いシャコガイ殻を100マイクロメートル間隔で削り出し,水温の指標となる酸素同位体比の分析を連続フロー型質量分析装置を用いて行った.また,ストロンチウム,マグネシウム,硫黄の濃度を電子線プローブマイクロアナライザーで分析した.また,レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法を用いて微量元素組成を分析した.時間軸は成長線を計数することで決定した. 成長線間隔は季節周期を示し,1周期あたり約350本見られたことから,成長線は一日一本形成される日輪である事が示された.日成長量の極小と酸素安定同位体比の極大の位置が一致したことから,冬期の低水温時に成長速度が最も低下する事が示された.日成長量の極小が年間最低水温の二月に対応すると仮定し,180本の成長線ぶんをさかのぼった時期を8月として時間軸を決定し,その時間軸に従って酸素同位体比や微量元素組成の変動を議論した.酸素同位体比は2月から徐々に低下していき,その低下は8月を過ぎてもまだ継続した.最も高水温に相当する時期は9月から10月に相当し,その後2月に向けて急激に酸素同位体比が上昇する事が明らかとなった.このことは縄文海進の頃は現在と比べ,夏の期間がより長く,最高水温になる時期が現在よりも遅かった事を示している.縄文海進期は地球温暖化が進んだ後のアナログ環境であると見なすことができ,従来のサンゴや有孔虫を用いた手法では不可能であった年内変動パターンの復元が,シャコガイの日輪スケールの分析により初めて明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
化石のシャコガイの分析結果は当初想定していたよりも,格段に興味深い結果が得られた.本研究の最終的な目的は地球温暖化により極端現象がどのように推移するかを過去の環境変動復元を基に予測する事であったが,実際に過去の温暖期には季節周期の変動パターンが異なることが示された.そこで,当初の研究計画では研究期間の後半に行う予定であった化石試料の分析を前倒しして進める事とした.自然を対象とした科学であるため,結果が予想外の展開を示したものの,それに対して研究計画を柔軟に対応させる事ができたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
化石のシャコガイの解析から大変興味深い結果が得られたため,当初は現世のサンプルを中心とした手法の確立を中心として研究を進める予定であったが,化石試料の分析により重点をおいて研究を進める.手法や分析内容などは大きく変更せず,研究の実施内容も大きな変更はなく,分析するサンプルのウェイトを変更するのみである.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初想定していたより興味深い結果が得られており,多地点間の比較より化石試料分析に重点を置いて研究を進めた.その分研究補助者には高度な実験を担当してもらうべく,技術習得に時間がかかったため,人件費など当初想定よりも支出が下回った. 平成26年度も継続して化石の分析を中心に研究を進める.実験補助者の技術習得は平成25年度で既に終えており,平成26年度は雇用時間を増やして実験を加速させる予定であり,平成25年度に使用しなかった金額は実験補助者の雇用時間の追加のために使う予定である.
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Research Products
(5 results)